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魔力無しですが溺愛されて聖女の力に目覚めました  作者: しろまり


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52.卒業パーティーに向けて

シリウス様にありのままの私でいいと言われて、気持ちが落ち着いてきたのか、今まで通りシリウス様と過ごせるようになったある晩。


私はバルコニーから外を眺めていた。

月明かりに照らされる庭は、とても綺麗で感傷的な気分になる。


そこに、シリウス様が訪ねてきた。私が部屋の中に戻ろうとすると、シリウス様はバルコニーまで来て夜空を見上げる。


「月が綺麗だね。明日は満月かな」

「そうですね」

「アリシア。ついに明日、卒業だね」

「そうですね……」

「卒業までと期限を決めたことは覚えている?」

「はい」


そう、ついに明日で卒業。


卒業したら私は平民になる。

このシリウス様との生活も、まもなく終わりを告げる。


図々しいけれど、私はクロフォード家のメイドとして雇ってもらえないか、シリウス様にお願いするつもり。シリウス様の一存では決められないかもしれないけど。


もし断られたら、教会のお世話になろうと思っている。


「アリシア、君の心は決まったかな? 僕はやれるだけのことは、やったつもりだ。あとはアリシア、君次第だよ」


私の心?

私次第というのは、どういうことだろう? もしかして……


口を開こうとしたら、遮るようにシリウス様はそっと私の頬に触れた。


「あの時、僕は『君が望むなら』と言ったよね。アリシアは、これからどうしたい? このまま僕と一緒にいてくれる?」


シリウス様は何か切なる願いを込めたように、ジッと私の瞳を見つめてくる。


「決めるのは君だよ。明日、大事な話がある……その時に返事を聞かせてね」


そう言って私の髪を一房手に取り、スッと目を閉じてキスすると、シリウス様は「おやすみ」と一言残して部屋を去っていった。


私が決めていいの?

それって、つまり……シリウス様の傍にいるためにメイドになれるということ?


結局、マリーから教えてもらったメイドの仕事は“お茶を淹れる”だけだった。

これでは、ちゃんとしたメイドになれるのか心配だし、このままだと即戦力になれない。


マリーは『メイド以外でもシリウス様の傍にいる方法はある』と言っていたけど……あ、もしかして私、致命的にメイドの仕事が向いていないのかも?! だとしたら……ハッ、メイドではなく庭師ね! 庭師の仕事なら自信あるわ! だって花が好きだし、バートからも“植物の声を聞けるようになった”と褒められたもの!


私は閃いたと顔を上げたけど、またすぐ俯いた。

いや、多分きっと違う。

マリーが言っていたことも、先程のシリウス様の言葉の意味も。


それが何か明確には分からないけど、心当たりがないわけでもない。


(もしかして、シリウス様と結婚したままでもいいのかしら?)


でも、それはダメ。


自分には、そんな価値ないから。

忌み嫌われた無能な“魔力無し“の私ではシリウス様の足枷になってしまう。


優しいシリウス様の言葉に、これ以上甘えるわけにはいかない。

シリウス様には幸せになって欲しいから。だからメイドでいいの。


シリウス様から頂いたものは“全て”お返しするつもり。

私はシリウス様の傍にいられるだけで十分だもの。


そう思っていたのに、このネックレスもシリーもアリーも手放したくない。


(あぁ、私はいつの間に、こんなにも貪欲になってしまったのかしら)


このままシリウス様と一緒に過ごすことが許されるなら、どんなに幸せなことだろう。


******



ついに迎えた卒業パーティー当日。

朝から、マリー達は忙しなく動いている。今も、こうして私の身体を磨くのに余念がない。


(まさか昼間から、お風呂に入る日が来るとは)


お風呂は夜というイメージの所為か、昼間お風呂に入るのは新鮮に感じる。クロフォード家に来てから、新しい体験ばかりだわ。

ここに来たばかりの頃を思い出し、懐かしい気持ちになった。


(そう言えば最初の頃は、この“お風呂で磨かれる”のも疲れてしまっていたわね)


今はもう慣れたもので何の抵抗もない……いや、嘘です。

こんなに念入りなのは初めてで、ちょっと疲労を感じています!


いつもより丁寧に洗われる髪と肌。髪にいたっては二度洗われて、二度何かを付けられて流されて……え、何? トリートメント? 二回もするの?


しかも髪を乾かしつつ、ヘアオイルも塗られた。ここまですると流石というか当たり前と言うか、髪が光を反射するぐらいツヤツヤになる。そしてとても良い香りがする。私の好きなホワイトローズの香り。


クロフォード家に来て色々な香りの石鹸やヘアオイルを使ったけれど、その中で一番気に入ったのがホワイトローズだった。それを目敏く察したマリーが手配してくれているみたいで、もっぱらヘアオイルの香りはこれに固定されている。


「お嬢様、こちらを」


マリーがドレスを手にしている。全身を磨かれた後はドレスアップの時間よ。

このドレスは、青を基調として差し色の白がアクセントになっている。そして目を引くのは銀糸の刺繍だ。それに上質な布がふんだんに使われていて、落ち着いたデザインの中に気品を感じる。


シリウス様に、揃いのドレスを用意すると言われたのが2ヵ月前。

驚いたのは、その2週間後に仮縫いの状態で屋敷に届けられたことだった。


どんなに凄い職人に頼んだとしても、2週間でドレスが出来上がるわけがないことぐらい、ドレスを仕立てたことのない私でも流石に分かる。


では、どうしてこんなに早くドレスが?


その疑問に答えてくれたのはフェリシアだった。

なんでも、このドレスは1年近く前にシリウス様が手配していたらしい。


私は仮縫いのドレスが届いた時のことを思い出した―――


「え、1年も前に?!」

「はい、その時からシリウス様はアリシア様にドレスを贈り、卒業パーティーのパートナーとして誘うつもりだったのです」


それを聞いた時には色々な意味で驚いた。

すでにドレスを用意していたのにも関わらず、しれっと『揃いのドレスを用意してもいいかな』と聞いてきたこともだけど、私が除籍されようがされまいが関係なく誘うつもりだったということにもだ。


そしてフェリシアはこうも言った。


「アリシア様にお会いして、シリウス様がご用意されたドレスは些か派手過ぎると思っておりましたが、このデザインに変更されて安心致しました」

「派手だったの?」

「はい、刺繍の上から小さな宝石を(ちりば)めており、フリルも豪華なものでした。アリシア様のようにスタイルの良い細身の体型の場合は、もっとシンプルなデザインの方が美しさを引き立てますので、こちらのドレスは完璧かと」


つまり私が『豪華すぎたり、派手すぎなければ』と言わなかったら、当初のデザインのドレスが用意されていたということだ。


あの時のシリウス様の()は、このことだったのね。

ハッとして指摘が出来た私、えらいわ!


―――というわけで宝石は外され、フリルも減らされたおかげで、私に相応なデザインになったドレスに袖を通す。


ドレスを着た次は、ヘアメイクよ。


両サイドの髪が複雑に編み込まれ、そこに可愛い花のアクセサリーが飾り付けられていく。そして後ろの髪は下ろしたまま、毛先の方だけクルクルとカールがかけられた。


シリウス様と街へ出掛けて以来、ずっと髪型はあのシニヨン風にしてもらっていたので、後ろ髪を纏めていないのは久々で新鮮な気持ちになる。


髪型が整った後は、メイクの時間。


私は目を閉じて、マリーに委ねる。

思えば、初めて口紅を使った時は憧れを経験出来たと興奮してしまっていたわね。


クスリと笑いそうになるのを、なんとか押し止めた。メイクの邪魔をしてはいけないもの。


「お手入れの甲斐あって、肌のコンディションは万全ですから化粧のりも良いですね」


メイクを仕上げたマリーは満足そうにしている。


クロフォード家に来て数日経った頃に肌も髪もツヤツヤになったと言ったけど、今はその時以上に肌プルプル、髪ツヤツヤ。それは日々の手入れと食事の栄養、そしてクロフォード家の7時間寝るというルールのおかげ。


(睡眠不足は美肌の敵と聞いていたけど、本当だったのね)


メイクが終わったら、最後はアクセサリーよ。

フェリシアがアクセサリーの入った箱を目の前で開けてくれる。


仮縫いのドレスが届けられた時『ドレスに合わせてアクセサリーを』とフェリシアに言われた。


新しいアクセサリーなんて私には過ぎた物だから、あの願いが込められたネックレスだけで十分だと思ったのだけど『ドレスに見劣りする』『シリウス様のパートナーですから相応の物を』と説得されてしまった。


マリーもフェリシアも言葉巧みだわ。


でも私は、どうしてもあのネックレスをつけたかった。

初めて貰ったネックレスだったから。


そう私が言うと、フェリシアが一つ提案してくれた。このトップを合わせる形で他のトップを重ね付けしたらどうかと。私は是非にと、お願いした―――


「ではドレスにも合うように致しますので、デザインはお任せいただけますでしょうか」

「もちろん。あ、でも今から作るとなると、卒業パーティーまでに間に合うかな?」

「それもお任せください」


―――そうして出来上がった、このネックレスとイヤリングが昨日ギリギリで届けられた。


(本当、フェリシアは頼りになるわね)


あのスターサファイアのトップを真ん中に、左右にも青い石……多分サファイアが配置され、それを囲み繋ぐように月桂樹の葉がデザインされている。そして、その葉一枚一枚に透明の宝石が……まさか、これ全部ダイヤモンドではないわよね?


それからイヤリングもネックレスと揃いの青い石(多分サファイア)と透明の石(多分ダイヤモンド)が使われている。こちらも月桂樹の葉の形をした透明の石が青い石を囲んで、雫を模すようなデザインになっていた。


(こ、これ……相当高価なのでは?!)


身に着けたネックレスとイヤリングが、やけに重く感じた。


「アリシア様、こちらへ」


フェリシアに促されて、姿見の前へ移動する。

鏡に映った自分を見て、驚いてしまった。


(これが、私?)


まさか、どこかで読んだ物語の主人公の台詞を自分が言う日が来るとは。

でも仕方ないわよね。まるで魔法にかけられたみたいに綺麗なのだもの。


「お嬢様、お綺麗です」


目を潤ませるマリーに、私は微笑んだ。

鏡の中の私は、クロフォード家に来た時とは別人のように輝いて見える。


「シリウス様の独占欲丸出しですが、大変お似合いです。アリシア様」


んんん? フェリシア?? 何て???

つまり、そういうことです。ドレスもアクセサリーもシリウスの色です(笑

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