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魔力無しですが溺愛されて聖女の力に目覚めました  作者: しろまり


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28.ぬいぐるみの思い出

歩きながらドレスやアクセサリーがショーウィンドウを華やかに飾るお店の前を何軒も通った。その度に、シリウス様は「入ろうか?」と声を掛けてくる。


いやいや、こんな高級なお店に入るのは、ちょっと気が引ける。買う物もないし。

私は、ただ見ているだけで満足。あ! これがウィンドウショッピングというやつ?


ハッと閃いていると、シリウス様が


「あ、このお店に興味が?」


と嬉しそうに言うので、二人して目の前のお店を見たら……


「え……ここは、杖を扱う店だけど……入る?」


シリウス様は“杖に興味が?”と不可解そうな顔しながらも、入るか確認してくる。


「いえいえいえ、違うんです! 私はただ、こうして色々なお店のショーウィンドウを見ているのが楽しいなと……それで、これが憧れていたウィンドウショッピングなのだと思っただけで」

「そうなんだ……」


何かを期待していた様子のシリウス様は残念そうな表情を浮かべていたけど、小さな声で「憧れか」と呟くと


「ふふふっ、ウィンドウショッピングは楽しい?」


そう言って優しく微笑むので、私は元気に「はい!」と答えた。



それから少し歩いたところで、私の目は釘付けになってしまう。

それは、ぬいぐるみを扱うお店だった。


幼稚だと思われるかもしれないけど、ぬいぐるみに並々ならぬ思いがある。

幼い頃、おもちゃもぬいぐるみも与えてもらえなかった私は、キャロラインの持つ“それら“を羨ましく思っていた。


そこで一肌脱いでくれたのはライラだった。


彼女は処分するはずのエプロンでぬいぐるみを作ってくれた。

それは、ぬいぐるみ特有の毛並みはなく、エプロンの布地だから少しザラついて汚れていたけど、私はとても嬉しくて大喜びしたことを今でも覚えている。


初めて手にした小さな友達を、私は父達に知られないようにしながら、いつも枕元に置いて一緒に眠った。


あまりにも大好き過ぎて、ある日その子にお花を見せたくなってしまった。

それが間違いだった。


“誰にも見つからなければ大丈夫!”と、庭に持ち出したけど……所詮は子ども、すぐに見つかってしまう。


それは、よりによってキャロラインだった。

キャロラインは私の手の中を見て


「何よ、あれ。あんな小汚い物が我が家にあるなんて気持ち悪いわ! すぐ捨てて!」


傍に控えていたメイドに言った。


私は、この子を手放したくなくてギュッと胸に抱く。

それを見たメイドは、どうしたものかとオロオロしている。

いつまでも動こうとしないメイドに、キャロラインは癇癪を起すように言い放つ。


「私の言うことが聞けないの?! お父様に言いつけてやる!!」


私は咄嗟に思った。

このままでは彼女もニーナのように辞めさせられてしまうと。


大事なこの子を渡したくなかったけど……私は弱々しく差し出した。


メイドは私から受け取ると、キャロラインに聞こえないように小さな声で言った「申し訳ありません」と。


別に彼女が悪いわけではない。

悪いのは、そう……大切な物なのに、誰かの目に付くところに出した私だ。


メイドが手にしたのを見たキャロラインは周りを見回して


「早く捨てて! あそこで燃やして!」


そう言った。これまた、よりにもよって庭の隅で焚火をしていたのだ。

メイドは申し訳なさそうな顔を私に向けながら、あの子を火に投げ入れた。


(あぁ、燃えてしまう……私の大切な友達が、ライラの形見が灰になってしまった)


悲しかったけれど、その時ライラの言葉を思い出した。


「物だけが重要なのではありません。時には、目に見えないものが大事なのですよ」


そうか、あの子はいなくなってしまったけど、ライラがあの子を作ってくれた気持ちも、あの子を貰って嬉しかった気持ちも、私があの子を大事にした時間も……記憶がなくなるわけではないんだ。


ちゃんと覚えていること、それがきっと大切なことなのだろう。


それ以来、あまり物を欲しいと思わなくなった。

それはキャロラインに見つかったら、また捨てられてしまうからでもあったけど。


そして気づいた。

私は、ぬいぐるみやおもちゃが欲しかったわけではなくて、それを贈られることに“愛している“という意味が籠められているように思えて、キャロラインが羨ましかったんだ。



気づけば、私は立ち止まってショーウィンドウをジッと見つめていた。


「入ろう」


シリウス様は微笑みながら、そう言って扉を開けてくれた。


中に入ると、外から見ていたよりも沢山の種類のぬいぐるみが並べられていた。

クマ、ネコ、イヌ、ウサギ……リスやハリネズミなんて珍しい物もある。

色合いも様々で、思わず「わぁ!」と感嘆の声が漏れた。


(どれも毛並みがフワフワでフサフサで可愛い!)


店内の至るところに鎮座するぬいぐるみ達を興味津々で見ていると、シリウス様が「どれが欲しい?」と聞いてきた。


「え?」

「あ、もしかして決められない? それなら全部もらおうか」


シリウス様はニッコリと微笑んでいる。


えっ、ぜ、全部?!

シリウス様は何を言っているの? 冗談?


でもシリウス様は本気のようで、店主に声を掛けようとしている。


えっ、え、ダメダメ、全部なんて!!!

私は慌てて……お店に入った時、一番最初に目についたぬいぐるみを手にして


「こ、これが欲しいです!」


とシリウス様に差し出した。


どれか一つでも選べば、シリウス様も全部買おうだなんて暴挙には出ないだろう。

そう思って、シリウス様の様子を伺うと


「え、これ?」


と少し驚いている。


あれ、何かダメだった? あ、もしかしてお高い?

いやいや、お店のぬいぐるみ全部よりは安いよね?


「ダ、ダメでしたか?」


戸惑いながら聞くとシリウス様は


「全然ダメではないよ。これだけでいいの?」


なんて聞いてくる。

それだけで十分です! 私はコクコクと頷いた。

それを見て、シリウス様は少し物足りなさそうな顔をしつつも、店主の元へと行った。


何とか全部買い占めることは阻止できたみたい。良かった。

ホッと息を吐いたところで、ふと目に入ったシリウス様とぬいぐるみに何だか既視感が。


(あれ? よく見ると……ぬいぐるみの毛色とシリウス様の髪色が同じ?)


私が選んだのは、銀色がかった白っぽいウサギのぬいぐるみで、目の色は青…………あぁぁぁ! まるでシリウス様では?!


あっ、あ、もしかしてシリウス様は、それで驚いていた?

いやいやいや、たまたま! たまたま手にしたと言うか、目に付いたと言うか!

ん、もしかして無意識? 私、無意識にシリウス様と同じ特徴のぬいぐるみを?


(いや、まさか、そんなことは……!!)


自分で自分が分からなくて混乱してしまう。とにかく顔が熱い。

パタパタと手で顔を扇いでいると、シリウス様が戻ってきた。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます!」


シリウス様から、ぬいぐるみを受け取る。

その首には、先程はなかった茶色のリボンが結ばれていた。


(ラッピングしてくれたんだ?)


それにしてもフワフワだ。とても毛並みがいい。ずっと触っていたい。

それに柔らかくて、抱き心地も最高。


お店を出てからも、ずっと手の中のぬいぐるみを堪能していたら、シリウス様は幼子を愛でるような優しい微笑を私に向けていた。


あれ?

この表情、前にも見た気が……何でだろう、ドキっとして胸がざわつく。


******



「そろそろ休憩に、お茶でもしようか」


少し歩いたところで、シリウス様が角のカフェを指差している。

そこは小洒落た店構えで、店内だけでなく店に沿って外にも席があった。


「あの店は、チーズスフレが人気らしいよ」

「チーズスフレ! 美味しい予感がしますね」

「何でも出来立てを1分以内に食べないといけないとか」

「1分以内?」


何でなんだろ? と思いながらも、私達は大通りと小道が両方見える角のテラス席に着いて、噂のチーズスフレを注文した。

正直、お腹は空いていないけど、甘いものは別腹だよ!!


ふとシリウス様を見ると、何か気になる様子で小道の方を見ている。


「シリウス様?」

「あぁ、ごめん。ちょっと席を外すね」


シリウス様は席を立って、お店の外に行ってしまった。

どうしたんだろう? と思って目で追っていると、シリウス様は誰かと話し始める。


(あれは……フェリシア?)


そういえば、さっき「護衛がついて来ている」と言っていたから、フェリシアも来ていたのかな。


そんなことを思いながら、私が手元のぬいぐるみに視線を移した時、声を掛けられた。


「お、可愛いねぇ」

「お嬢さん、一人?」


見知らぬ二人の男性が、気さくな感じで聞いてくる。


「一人ではありません。連れがいます」

「そうなの?」

「もしかして連れって、それ?」


笑うように言いながら男性の一人が私の手から、ぬいぐるみを取り上げた。


「あ、何するんですか」

「こんなのより俺達と遊ばない?」

「そうそう、俺達と良いことしよう?」


“良いこと”って何だろう? と思いつつ、勝手に人の物を取るような人達が言う“良いこと”なんて、本当に“良いこと“とは思えない。全く信憑性がない。


それより大事なシリウス様(仮)を返して欲しい。

私はとりあえず、ぬいぐるみに名前を付けた。


「遊びません」

「そんなこと言わずにさ~」


何度断る言葉を告げても、相手は諦めない。

どうしよう、困った。


「遊びませんから、それ返してください」

「返して欲しかったら、俺達と一緒に行こう」


とにかくシリウス様(仮)を返して欲しくて手を伸ばしたけど、当然届くわけもなく。


むしろ逆に私の手を掴もうと、もう一人の手が伸びてきた。

その無骨な大きな手に、何だか急に怖くなって“シリウス様!”と心の中で叫んだ時


「僕の連れに、何の用だ!」


いつもより低いシリウス様の声が、私の耳に届いた。

ぬいぐるみ良いですよね!

大好きなんですけど、アレルギー的にあまり仲良く出来ないんですよねぇ(´・ω・`)

ちなみにアリシアが買ってもらったぬいぐるみは、そこそこ大きくて胸に抱いたらちょうど良いサイズのやつです!羨ましいです(笑


あと、ここで補足するのズルイかもしれないですけど…シリウスはアリシアに何か買ってあげたくてドレスと宝飾店を回っているのにアリシアが一向に強請らなくて「何故だ?」とガックリしていたら、アリシアがハッとするものだから「やっと!」と期待したら全然違ったというね。

シリウスの思惑とは全く違ったけれど、アリシアが楽しいならいいかって思う辺りがシリウスらしいかなーと。


あ、お察しですけど次回、シリウスがナンパ野郎を撃退します(*0ω0)b

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