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仲直り企画

 このゲームがクソと呼ばれる理由の一つにモンスターの雑な調整がある。


 モンスター。直訳すると怪物であり、NGOでは敵性キャラクターの通称である。


 ゲームにおいて敵性キャラクターの多くはプレイヤーの前に脅威として立ち塞がり、打倒することで経験値やアイテムといったリソースを獲得することが出来る。

 敵を倒して何かを得るという分かりやすい構図は幅広いジャンルのゲームで採用されており、アクションやRPGでは半ば必須の要素である。


 そうして得られる『モノ』はゲーム内に収まらない。

 主人公が大技で雑魚を蹴散らすゲームは分かりやすい爽快感があり、工夫と反復学習を要求するゲームはクリアすると強い達成感を得られる。

 ストーリー性の高いゲームで因縁の相手が物語の山場で立ち塞がれば盛り上がること請け合いだろう。


 ゲームの開発者はどんなキャラクターを作ってプレイヤーを楽しませるかの研究に余念が無い。

 ヴィジュアル、モーション、コンセプト、バックグラウンド。あらゆる全てが絶妙なバランスで成り立っており、匙加減一つで失敗の烙印を捺されるため微に入り細を穿つ調整が必要となる。


 プレイヤーのニーズを読み取るのは簡単なことではない。

 プレイヤーを百人集め、全員に同じ敵と戦わせて感想を聞いたら百通りの答えが返ってくると思っていい。


 歴史に学び、経験に学び、あるいは世間情勢すら考慮する必要があるだろう。

 そうして針の穴を通すが如き繊細さでプレイヤーの琴線を刺激し、心地よい成功体験を齎したゲームが世に名を残すのだ。


 NGOの開発はこれらのセオリーをまるっと放棄し、プレイヤーに媚びることなく自分達が作りたいと思ったものを作るという強硬策に踏み切った。


 それは一つの正解であったのかもしれない。型を破り、奇を衒った作品になったとしても潜在需要を掘り起こせれば名作にもなろう。


 だが悲しいことに、NGOの開発はお世辞にもセンスがいいとはいえなかった。


 NGOに登場するモンスターは軒並み殺意に振り切れたデザインをしており、搭載されたAIはプレイヤーに楽しんでもらおうという遊びを限界まで削ぎ落とした殺戮マシーンもかくやといった悪辣さであった。


 開発の恩寵を受けた恵体から繰り出される攻撃は確定二発でプレイヤーを沈め、鋼鉄のように強靭なボディは生半な攻撃ではこゆるぎもしない。

 無尽蔵のスタミナは長時間に渡る高水準のパフォーマンス維持を可能にし、特殊な加護が卑劣な罠や遠方の攻撃から身を護る。

 魔法の発動を感知する天性のセンスは小賢しい策を弄することを許さず、優れた頭脳は数的不利を鋭敏に察知し仲間を呼ぶことで戦況を覆す。


 控えめに言ってクソである。

 だが、NGOの開発のセンスが無いと言われる最大の理由は他にあった。


 モンスターの体力が75%、50%、25%を切った時に放ってくる『必中攻撃』。それこそが、VRゲームと致命的に相性が悪く蛇蠍のごとく嫌われている要因である。


『必中攻撃』は発動時点で最もヘイトを稼いでいるプレイヤーに放たれ、文字通り避けることが出来ず、どんなに距離が離れていても被弾する。


 この厄介な攻撃のせいで『超絶技巧によるノーダメージクリア』が事実上不可能になっている。技術介入の余地がないお仕置き行動はコアゲーマーやプロゲーマーにアクション性に難ありと判断され、彼らを引退へと追いやった。


「必中攻撃を見切ることはできないが、NGOに見切りをつけることは容易である」とは、とあるプロゲーマーが残した偉大なる格言である。


 そして何よりも問題だったのが、最弱モンスターの『必中攻撃』でも職業レベル3以下のプレイヤーは問答無用で即死する威力であるという点である。


 NGOでは五人以上でモンスターに挑むとモンスターが仲間を呼ぶので、四人でパーティーを組むことが強く推奨される。レベル3以下の者同士でパーティーを組むとどうなるか……。


 椅子取りゲームの開幕である。


 都合三発放たれる必中攻撃から生き延びる術は味方を盾にする以外に無く、要所要所でいかに適度に攻撃の手を緩めてヘイトを他人に押し付けるかが腕の見せ所として注目された。


 慣れてきたプレイヤー同士がパーティーを組むと、モンスターの体力をある程度削ったところで示し合わせたかのように攻撃の手が止むという息の合った連携を拝むこともできた。


 定石を理解したプレイヤー同士だと膠着状態に陥って埒が明かなかったため、新たな策としてプレイヤーは無知を装い新規を騙すことに熱を上げた。肉盾戦法の起こりである。


 言葉巧みに新規プレイヤーを誘導し、沈むと分かっている泥船に詰め込むさまは『ハーメルン』と呼ばれ、NGOの遊び方が上手いと称賛された。


 当然そのような回りくどいやり口を嫌ったプレイヤーも数多く存在した。

 モンスターが狩れないなら、プレイヤーを狩ってレベルを上げればいい。過酷な環境に晒され続けたプレイヤー達は極めて理性的な結論のもと、昨日の友を手に掛けた。


 怪物と戦う者は、肩を並べている者が怪物である事を疑わなければならない。深淵を覗くとき、深淵に突き落とされるのだ。


 サービス開始日の惨劇は形を変え、より凶悪になって舞い戻ってきた。

 後に善無くお彼岸事件と呼ばれる、ゲームバランスの劣悪さとプレイヤーモラルの低下が比例することを証明した出来事であった。


 ▷


 自宅を出たところ『ケーサツ』連中に淀みない手際で身柄を拘束された。


 即席裁判の結果、ドブロク氏監視のもとで被害者の初心者二人の狩りを手伝うよう言い渡された。

 控訴は認められなかった。逮捕権と司法権を一つの組織が握ってるとか怖すぎない?


 けどまあ。

 初心者の面倒を見るのも正義の務めか。カメラの裏で心付けを渡されながら、僕は迷える子羊を導くことに決めた。


 ▷


 街を出ればそこは始まりの草原だ。

 雲ひとつない青空と見渡すばかりの緑のコントラストが目に優しい。吹き抜けるそよ風に揺れる草葉をよく見れば、彩り豊かな花が点在している。小鳥が歌い、小動物が駆け回り、二メートル超の鬼がのっしのっしと闊歩する。いつもの光景だ。


「今回のターゲットはあいつだ。通称鬼。正式名称があるらしいが、鬼とだけ覚えておけば問題ねぇ」


「いやいやいやターゲットおかしくねっすか!? ボスでしょあんなの!」


「無理ゲーで笑うわ」


 今回のパーティーメンバーはこちらの三人。


『食物連鎖』所属のドブロクさん。壮年の冒険者風カスタムだ。

 直接斬られた経験から推測するにまあまあ腕が立つ人だ。昨日僕のことをキルしたためプレイヤーネームが赤く染まっているが素行はいいらしい。あと数時間はレッドネームだろう。

 職業は剣士。


 初心者一号ショーゴ。量産型チャラ男カスタムだ。

 ペラペラ喋りよく動くさまは不慣れなプレイヤーにありがちな挙動だ。今回の狩りを通して肉体を制御下に置く必要性を学んでもらいたい。

 職業は剣士。


 初心者二号タクミー。アンニュイかつクール系カスタムだ。

 黒とか好きそう。物静かな佇まいはVR適正の高さを匂わせる。お手並み拝見といったところか。

 職業は剣士。


 討伐目標は鬼。二番目に弱いとされているモンスターだ。

 緑色の肌に凶悪なツラ。纏った襤褸(ボロ)切れと荒削りな木の棍棒など、一般的なゲームに出てくるゴブリンとの類似点が多い。


 しかしながら、ぱっくり割れたシックスパックと苛め抜かれた逆三角の肉体が醸し出す威圧感が、有象無象の雑魚とは一線を画す存在であることを暑苦しく主張している。


 初心者二人は完全にビビっているらしく、仲直り企画というよくわからないコンセプトのもと結成されたパーティーに早くも暗雲が立ち込めていた。


『ケーサツ』のカメラ担当が遠くからついてきて一部始終を配信しているため、無様なところは見せられない。ドブロクさんが嘘くさい笑みを浮かべて言う。


「あいつぁ攻撃モーションは素直な方だから慣れりゃどうとでもなるさ。必中攻撃は俺が受け持つ。回復アイテムも豊富に持ってるから心配すんな。体力75%ラインまでは俺が一人で戦うからヤツの動きは見て覚えろ。【踏み込み】と【空間跳躍】は取ってあるな?」


「うーっす!」


「うす」


 沈みかけた勢いを察してすかさずフォローを入れるベテランの技が光る。

 多少気が楽になったのか初心者二人の顔も晴れた。戦闘に向けた必須スキルの獲得も済ませているようだ。


【踏み込み】。獣戦士という職業に就くことで得られる脚力強化のスキルだ。

 発動することで弾丸のような初速と驚異的な跳躍力を得る。発動後即時再使用可能という便利さから、取り敢えず連発しとけばそれなりの動きができる。

 満場一致の壊れスキルである。


【空間跳躍】。軽業師という職業に就くことで得られる二段ジャンプのスキルだ。

 一見地味だが【踏み込み】の速度と組み合わせることで高機動空中戦を展開出来るのが強みだ。再使用するには一度地に足を付けなければならないという条件こそあるものの、空中で移動方向を変えられるという特性は戦術の幅を大きく広げられる。

 満場一致の壊れスキルである。


 前衛三枚、後衛一枚。ちょっと後衛の数が一人多いかもしれないけど、剣士が三人いるし問題ないだろう。頭の中で作戦を組み立てているとドブロクさんに水を向けられた。


「おいライカン。お前が剣で戦ってるところは見たことねぇが、どのくらいやれるんだ?」


「え? 僕も剣で戦うの?」


「当たり前だろうが! 爆弾なんぞ使ったら俺らが消し飛ぶわ!」


 そういうことは先に言って欲しい。構築しかけた作戦が台無しになってしまった。


「僕は構わないけど、剣士のレベル1だし【踏み込み】も【空間跳躍】も大して使い熟せないけどそれでもいい?」


「…………ちょっと跳んでみろ」


 カツアゲのようなセリフで促されたので、メニューから転職を選び剣士に変更。インベントリでホコリをかぶっていた粗末な剣を取り出して構える。しばらくぶりに戦闘用のスキルを発動するな。


 NGOでは取得したスキルの使用方法が二通り存在する。


 一つが選択発動。メニューを開いてスキルを選択することで発動できる。

 長所は誰にでも発動出来ること。短所は必要な手間が多すぎることである。戦闘に関するスキルは連続で使用することが前提となっているため選択発動は絶望的に相性が悪い。

 もう一つの発動方法に慣れると生産職でもめったに使わなくなる。デメリットが勝ちすぎているため封印安定とされている。


 もう一つが任意発動。『○○スキルを使う』と念じることで発動できる謎の技術だ。

 この直感的なスキルの発動を使い熟すことで超人的な動きが体験できるというアドバンテージこそ、今日までNGOが見捨てられていない理由の一つだ。

 長所は速効性と変態になれること。短所はセンスが問われることと脳に危ない影響が出ていないか心配になることだ。


 一呼吸して精神を落ち着かせ、任意発動の準備を整える。


【踏み込み】! そして【空間跳躍】! からの剣ブンッ!


 シュタッと着地を決めるつもりが背中から落ちて勢いそのままにゴロゴロと転がってしまった。

 初速が早すぎるんだよね。景色がぐわっと流れていくから感覚と体の制御が追いつかない。新幹線の鼻先に括り付けられてる気分だ。そのうえジャンプまで織り交ぜろってんだからいよいよままならない。


 すっくと立ち上がり、服に付着した土と草をパッパと払って問いかける。


「どうかな?」


「お前わざとやってんのか?」


「真面目にやってるつもりだよ」


 先人曰く、NGOで高精度のアクションを行うために必要なのは俯瞰視点と自己暗示らしい。

 自分を操作キャラクターに、脳をコントローラーに見立てた後、自分は元からこういう動きができる人間なのだと思い込めば自ずと動けるようになるとか。


 徹頭徹尾なに言ってるか分からないんだよなぁ。人が空中ジャンプとか出来るわけないじゃんね。


 このゲームのプレイヤーはどうにも頭がおかしいため、人としての感覚を捨てることになんの躊躇いも無いらしい。直立姿勢のまま跳ね回るプレイヤーの動画を見た時は心胆寒からしむる思いだったよ。あそこまで人間性を捨てたら冒涜的な何かにしか映らない。


 半年以上プレイしている僕でこの様だ。こりゃ初心者二人も苦労するだろう。


「おっ、と! こんなっ! 感じ! っすか!?」


「へぇ、意外と動けるもんだなっと!」


「おーおーやるな二人共。俺なんかよりよっぽど筋がいいんじゃねぇか?」


 ……。どうやらあの二人も人外の素質があるらしい。まともなのは僕だけのようだ。僕はひっそりとこのゲームの行く末を案じた。


「よーしそんだけ動けりゃ充分だ! あとは見て覚えろ! 初陣行くぞ!」


「おー!」


「おー」


「……」


 ▷


「棍棒の溜め横薙ぎはフェイクだ! 返しが来る! 振り下ろしはッ! 飛んでくる土塊(つちくれ)躱せばあとは隙! 二発はいける! 首! 無理なら背中! 即離脱! 中距離維持!」


 ドブロクさんが簡潔な攻略法を大声で伝えながら跳び回る。


 ボディビルダーもかくやの恵体をした鬼から繰り出される薙ぎ払いは、離れた場所にいるこちらまで風切り音が届くほど力強く、余波だけで草が寝て花びらが散る。


 嵐のような一撃を見舞い、しかし姿勢に一切の乱れ無し。体幹の出来が違いすぎる。

 大樹のような両脚は確りと大地を踏み締め、次の攻撃へ備えている。ざっと大股を開いて腰を落とし、賢しく逃げ回る敵を睨めつけカアッと呼気を漏らした。


「すっげーリアリティ……っべーわ」


「グラフィック周りは悪評無かったしな。しかしこれはすげーな」


 初心者二人は完全に見入っていた。肌で感じる迫力に圧倒されているのだろう。五感を刺激するフルダイブVRゲームならではの感覚だ。


 攻撃の構えを取った鬼に対してドブロクさんが取った行動は懐への突貫だ。


【踏み込み】の連続発動で鬱陶しいゴキブリのように地を駆けずり回り、攻撃を誘発したら【空間跳躍】を組み合わせて鬱陶しいハエのように舞う。プレイヤーの基本にして奥義の戦術だ。


 ネチネチと攻撃を当て続けていると、鬼が天を仰いで咆哮した。体力75%を割ったときに繰り出す必中攻撃だ。


 距離を無視した高威力且つ不可避の一撃は、褒めている人を見たことがないクソ要素である。

 作り込まれていた今までのモーションとは打って変わって雑な攻撃なため、後から継ぎ足されたソロプレイヤー排除の為のシステムではないかと予想されている。


 不可視の攻撃にふっ飛ばされたドブロクさんが【空間跳躍】を使い体制を立て直した。【踏み込み】を発動したバックステップ連発で僕達三人の元へと舞い戻る。


【踏み込み】なんて名前をしているが、本質は脚力強化なのでバックステップにも使うことができるのだ。


 ドブロクさんの呼吸は荒く、肩は大きく上下している。スキルの連発は疲れるのだ。加えて必中攻撃の被弾もある。

 プレイヤーはダメージが蓄積すると肉体のパフォーマンスが下がるのだ。モンスターは死の寸前まで元気いっぱいなのにおかしいね。


 ドブロクさんがインベントリから取り出した回復ポーションを握り潰して使用しながら言った。


「ポーションは飲む必要はねぇ。砕いて使ったほうが早い。被弾したらバクステ連発で距離とってから回復が基本だ。大体の動きは分かったな? 行け!」


「っしゃあ!」


「行くか」


「やれるだけやってみるよ」


【踏み込み】で勢いよく飛び出した初心者二人を駆け足で追う。スキルを使うとまともに動けないから仕方ない。


 鬼はヘイトを買っているドブロクさん目指して突進してきている。スプリンターのように美しいフォームだ。洗練されすぎている。


 スキルのおかげで僕の五倍は速く動いている初心者二人が鬼に迫る。接敵寸前。二人は膝から崩れ落ち五体投地した後ポリゴンと化した。餓死だな。なぜ草をモシャっておかなかったのか。


 鬼が立ち昇るポリゴンを吹き散らして駆ける。ヘイトの関係で僕を無視してドブロクさんに一直線だ。


 まだ息が整ってないのか、かなり辛そうに応戦している。初心者二人が生きていたらこうはならなかっただろうに。僕はドブロクさんの不手際を非難した。


「ドブロクさーん! なんで草食わせなかったのー?」


「色々と調べたって! 言ってたからッ! フッ……っく! 知ってると思ってたんだよォ! 見てないで手伝え!」


 プレイヤーは空腹度が一定に達すると唐突に餓死する。猶予は三時間だ。


 薬草を一つモシャることで一時間は保つため、プレイヤーは定期的に草をモシャることが推奨されている。料理でもいいのだが、回復値が大して変わらないうえに手間も金もかかるのでみな草をモシャるのだ。


 情報共有を疎かにしたのはドブロクさんの失態だが、パーティーメンバーの尻を拭うのもまた役目か。

 助太刀に入るため、僕は【踏み込み】と【空間跳躍】を駆使してゴロゴロと草原を駆けた。


「遊んでんじゃねェ! もうッ……いい! 爆弾を使え!」


 戦う前と言ってることが違うが、指示の錯綜は戦場の常。僕は臨機応変に対応した。

 筒状の小型爆弾を取り出し指を鳴らして着火する。爆発までの猶予は十秒。……この位かな?


 適当なタイミングで投げつけた爆弾はクワッと目を見開いて振り返った鬼の五指に収まった。振り返った勢いそのままに体を捻り一回転。左脚を軸にした流れるようなサイドスローだ。完璧なキャッチ・アンド・リリース。世が世なら頂点を獲れる一球。巻き起こった爆発が最高峰のプレイに沸く客の歓声のようで晴れ晴れしい。ドブロクさんは死んだ。


 機に臨み変に応ずる。敵の策さえ利用するお手本のような戦い方だった。僕は轢かれて死んだ。カメラ役の人も巻き添えを食らって漏れなく轢かれて死んだ。


 後に残った鬼さんはしばらく構えていたが、フッと息を吐いて残心を解くとのっしのっしと去っていった。


 カメラ役の人がラストワード【突風】を使い演出を盛り上げる。土煙が舞う中を去っていく後ろ姿がダークファンタジーの主人公さながらだ。死後の十秒を有効活用する根性は眼を見張るものがある。彼は伸びそうだ。そんなことを考えていたら十秒経過したらしく僕は自宅にリスポーンした。

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最低な展開だ。特に私のような電車の中で読む人にとっては深淵のようなモノだ。 腹筋に力を入れることも虚しく、マスクがなければ注目を浴び致命傷になる所だった。何とか声を出さず口角が歪むだけで済ましたオレを…
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