映画みたいな恋がしたくて
『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
指定キーワードは『映画』。
どうぞお楽しみください。
「あー、映画みたいな恋がしてぇ……」
「は? タケル、君は何を言っているんだ?」
俺の呟きにミコトが呆れたような声を上げた。
「だって休みだってのに男二人でカフェだべり。クリスマスも近いのにこれじゃ、ぼやきの一つも出るってもんよ」
「僕と休日を過ごすのは嫌かい?」
「嫌ならここにはいねぇよ。お前といる時は誰より落ち着くしな。ただ刺激がねぇなって話」
「……そうか。ならもし僕が女だったらどうだ?」
「は?」
何言い出すんだこいつ。
「何、暇潰しの仮の話さ。僕はとある名家に生まれたが、僕を産んだ際、母は子を望めなくなった。跡取りは男と決められているため、両親は僕を男として育てた」
「はー、確かに映画でありそうな設定だな」
「そして大学で君と出会い、友人として付き合ううちに、君に恋をした。そんな筋書きがあったらどうする?」
確かにミコトは顔立ちは綺麗だし、身体も細くて小柄。
声も綺麗だし女に見えなくも……。
って俺は何を考えてんだ!
下手な事言うとからかわれるだろうから、ここは……。
「どうもしねぇ」
「……それは僕が女だったら嫌いになるって事か?」
何だ急に。
真面目に答えないから怒ってんのか?
「違ぇよ。お前が今更女だって言われたって、何も変わらねぇって事だよ。大学でも休みの日でもこんだけつるんでんだ。恋人とだってこんなに一緒にいねぇだろ?」
「ふむ確かに」
「だからどうもしねぇし何も変わらねぇ。これまで通り、一緒にいるだけさ」
「ふむふむ成程」
ミコトは俺の言葉に何度も頷く。
何だか嬉しそうなのは気のせいか?
「……お前、ホモじゃないよな」
「馬鹿か君は」
「お前の質問がおかしいのが悪い。で? この話のオチは?」
「結論。君は映画みたいな恋には向かないね」
「何だそりゃ」
「映画のような恋をするには、まず君が主人公らしくならないと。現状維持じゃ映画にならない」
「はは、そりゃそうか」
笑い合いながら、俺はミコトの言った世界を想像してみる。
ミコトが実は女で、俺の事が好き、か……。
色々面倒そうだし、今更ときめきもなさそうだけど、こいつから離れる選択だけはなかった。
「じゃあ恋愛映画でも観に行こうか」
「男二人で恋愛映画とか罰ゲームだろ」
「いいじゃないか。参考になるし」
「さてはいじる気だなオメー」
ひとしきり笑った後、会計を済ませて俺とミコトは映画館へ向かった。
……そういえばこいつと風呂入った事なかったな……。
ふとそんな馬鹿な考えが頭をよぎった。
読了ありがとうございます。
ミコトの真実はどうぞお好みで。
なおこのタイトルで最初に思い付いたのは、女友達同士で冒頭のセリフを言ったら、相手が「私が相手ならどう?」と言うガールズラブ展開でした。
しかしガールズラブって難しいですね……。
オチにたどり着けず断念。
こちらの披露と相成りました。
でも下野さんの女の子役というのもそれはそれで……(取らぬ狸)?
次回キーワードは『鏡』。
どうぞお楽しみに。




