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最終話 「狂気」
三島さんはそう言うと、壁から生えているミミズを、彼女の父親のようにブチブチと剪定しはじめた。
白い液体はより広範囲に飛散して、うねるミミズは前衛的な美術館にあるオブジェのように跳ね回り、
壁は一瞬にして狂気となった。
湯気に煽られて、動いている鰹節のように、苦しそうにはい回る潰れた虫のように。
「ねえ、アナタも手伝って」
三島さんは、女神のような表情だ。
覚悟を決めて、僕は剪定ばさみを握りしめ、ミミズに手を伸ばした。
壁から生えたミミズは、これからも、ずっと剪定し続けなければならない。
それが彼女と出会ってしまった僕の宿命なのだから。




