第1話 どうも召喚されたようだ
いきなり困った状態になっている。状況は理解しているのだが・・・さて・・・
頭上の灯りが消えると同時に、後ろの大扉が大きな音をたてて閉まっていく。俺は、その音に隠れる様に匍匐前進を開始する。向かうのは、扉の反対、ボス椅子の後ろにあるマスタークリスタル。このクリスタルを触るとダンジョン攻略完了となり、このダンジョンマスターとなれる。
このゲームは基本ソロでプレーする、PTメンバーは攻略した魔物と組み使役することになる。
最初のダンジョンに入りボス部屋を開けた時に不幸が舞い降りた。扉を開けた時、運が悪く?食事の最中に扉を開けたようだ。食堂?にいたゴブリン達は、一斉に襲い掛かってきた。通常、ボス達は、門の正面奥にいる。こちらに来るまでに心の準備をする暇があるのだが・・・瞬殺である。
ゴブリン達は、中断された食事を再開しようと撲殺した俺を放置して食堂?に移動を始めていた。
死んだ俺?は、食堂の反対を目指す。田舎の小学校の校庭ほどの大きさの丸いボス部屋。門の正面奥にボスの椅子があり、その奥にたんこぶのように突き出た場所にマスタークリスタルが立っている。門の近くの左側が食堂?らしく大量の死体が積みあがっている。
食事を再開したゴブリン達に気づかれないように・・・そーっと・・・
移動しながら状況の説明をしましょう。俺は、神取優。建築会社に勤めるサラリーマンで現場主任をしている。後輩と一緒に建材メーカーの工場見学に招待され、バス移動中に後輩が薦めるゲームをインストしていた。その間に後輩のスマホで操作方法を習い、インストが終わる頃にはほぼ理解できていた。
後輩の説明によると、毎年の大戦が終了したばかりでダンジョンがかなり荒れているとの事。つまり魔物が大量に死に、ダンジョン内はスカスカになっていて 今なら簡単にダンジョンをクリアできると言っていた。それならとはじめたのだが・・・最初のアバターは作り直すつもりのなでステ振りをLUK(幸運
)全振りにしていた。後で気づくのだが、初期ステ振りを準拠して自動にてレベルアップ時のステ振りがされる。どうもこれが不幸の始まりだったようで・・・。
アバターが出来上がると最初の村近くに転送される。後輩からレクチャーを受けているので無視して、ダンジョンリストから近くの最弱のダンジョンを選ぶと侵入・・確かにダンジョンに魔物はいない。10階層まで一気に下がるが途中に魔物が全然いないのですが・・・
大きな扉の前まできてしまった。さて・・・まっいいか・・・作り直すのだし・・・と開けた時。
こちらは、リアル。午前の工場見学が終わり昼食が配られた。後輩と一緒に会議室(説明会場)隣の中庭に移動して弁当を食べ、空箱を足元に置き、スマホを取り出してゲームを再開した。
3m程のフェンスに囲まれた中庭では、工場の従業員達がバレーボールで遊んでいる。夢中になって操作している俺には、そんな周りの状況など見ることもなく・・・
突然、後輩の声に驚く。「主任、危ない!」
死ぬ時には、ゆっくりと時間が流れスローモーションに見えるとか・・・
後輩の声に気づき、顔を上げるとボールが顔面をめがけて飛んで来る。焦った俺は、組んだ足のままジャンプしようと踏ん張るとそこにさっきの弁当が。
体制を崩した俺の手からスマホが空中に飛んでいく。・・割れる・・そう思った俺は、右手でスマホを捕まえようと伸ばすが・・・指が画面にぶつかっただけ・・・あっ・・・
スマホは、指にはじかれて飛んでいくはずだった・・・後輩の驚く声「主任!」・・
スマホに触れた指は、そのまま画面に吸い来れていく。・・・えっ??・・・
手から離れたスマホは、緩やかな放物線を描いて落下する。俺を吸い込みながら・・・後輩の驚く声と・・スマホが落下してガラスの割れる様な音だけが残っていた。




