携帯電話
俺が小学生の時だったと思う。ちょっとした塾みたいなのに通ってて、それでも携帯電話が親しか持ってない無い時代だったから、ある日不審者が出たとか居なくなった子供がいたとかで母親に携帯電話を貸してもらって、母親に迎えに来てもらうことになった。
まあ、その日は特になーんにも無くて、俺はふつうに母親の携帯に電話をかけたわけだ。
しばらく発信中、という画面が出て、それからトゥルルルル、という音がした。ぶつ、という音がして、通話中に変わる。
「もしもしかーさん?迎えに来てくんない?」
「…………」
無言だった。
「もしもーし!」
俺は何度か声をかけてみたけど、一向に返事がない。
ふざけてんなよ、って思って、俺はぶつりと携帯を切った後、もう一度リダイヤルをした。
「なあ、迎えに来てくんない」
「…………」
もしかしたら受話器を取ってそのまま放置してあるのかとも思ったけど、違う。息のかすかな音とか、ザッ、とかいう人の気配が確実にしてる。
嫌なことしやがると思って、それから大声で叫んだ。
「迎えにこいっつってんだろ、返事ぐらいしろよ!」
ザッ、ざぁ、って感じの音がして、ぼそぼそと何か言ってる声がした。
「……が、かんないと、むかえ、いけないよ」
それでもボソボソ言ってて、カチンと来て言い返す。
「あ?なんつったんだよ、聞こえねーよ。電波悪いんじゃねーの?」
すると、向こうから母さんのものではない声が今度ははっきりくっきりと聞こえた。
「名前がわかんないと迎えにいけないんだよ」
俺は母親の携帯電話を切って座り込んだ。
ちなみに作者は電話かけてもかけても繋がらない、って感じでした。あれなかなか気づかないです。みんなもへんなとこにつながらないように気をつけてくださいな。