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010 はじめての野営の準備とはじめての鑑定とコカトリスの肉

 



「ところで、主様はどこを目指しているのですか?」


 ケルクとクレアが牽くハイスピードな馬車に揺られてしばらくした頃、ジーントーレスに声を掛けられた。

 街を出る前より慣れた感じに声を掛けてもらえて嬉しいと思う。


 けど…


 考えてなかった。

 そもそもここどこよ。


「決めてない。そう言えば俺、何にもわからないで次の街を目指していたんだ。ジーントーレスは前も冒険者をしていたんならこのあたりの地理わかる?」


「はい。多少は。ここからこのままこの街道を進めば、二週間前後でブロンジーク領の領主の街、アイゼンに着くでしょう。その手前にも脇道にそれれば小さな村や町がありますが、どうしますか?」


「うーん。何もなければこのままそのアイゼンとかいう街を目指したいかな。それからどこか落ち着けるところを探してひっそりと暮らしたいんだ。冒険者ギルドに入ったのは日銭を稼げるって聞いたから入ったんだけど、結構大金はたいちゃったし…あ、でもやっぱり薬草採取とかの依頼をこまめに受けてそれで生活していく方が良いかな。あまり大金があるってバレたら危なそうだし、大金にかこつけて自堕落な生活をするのも良くない気がするし」


 宝くじが当たったら誰にも言うなとか言うじゃん。

 会ったことも聞いたこともない親戚や友達や先輩、果ては腹違いの兄弟姉妹が急に増えるらしいし。


「そうですか。では休憩の時や野営の時にでも出来るだけ薬草探しをします。でも魔法使いと言うのは大抵大金を持っていると聞きますし、それに魔法使いから金を奪うような命知らずはそういないでしょう」


 そうなんだ。

 知らなかった。

 いや、でも間接的に奪われる可能性だってある。

 現に俺はジーントーレスが病気と知らずに買わされてしまったわけだし、そういうことだってあると思うし。

 なるべくなら魔法使いってことと、金を持っていることは隠したい。

 金を奪われるだけならまだマシだけど、金を奪う過程として暴行を受けたり命を奪われかねないと言う強制オプションも付いてくるからな。

 それとも利用されてボロ雑巾のように使い古されてから恐ろしい魔物がいる荒野にポイ捨てされる未来があるかもしれない。


 ……考え過ぎか?


 なんにしてももし安住の地を見つけられたら、タルタ達を奴隷から解放しよう。

 これだけお金があるんだから皆に多めに退職(奴隷契約解除)金渡してもしばらく過ごせるだろうし。



 あ、そういえばジーントーレスの病気の事調べないとな。


「ステータス」


 俺はステータス魔法を使って、奴隷の項目の中の、ジーントーレスの情報を確認した。


 ―――――


 名前    ジーントーレス

 種族    森猫族

 レベル   64

 体力    421/842

 魔力    103/206

 攻撃力   450

 魔法攻撃力 160

 防御力   222

 魔法防御力 176

 回避力   912


 魔法    森 身体強化 生活 


 スキル   解体 暗殺 隠密 疾風神速


 状態    レイスの呪い


 ―――――


 見てはいけなかったのかもしれない。

 暗殺、ですか。


 だ、大丈夫だよな。

 きっと。

 奴隷のチェックが外せないようになっているグレー項目の”主人に危害を加えない”ってのがあるし!

 スキルがあるだけで、使ったかどうかなんてわからないし!

 それより、アレだな。呪いだな!

 あるね、あるある。


「レイスの呪い?」


「え?……あぁ。ステータスを確認されたんですね。はい。俺が受けた呪いはレイスの呪いです。教会で高い聖水を買って飲んでいたのですが、命を繋ぎとめるのがやっとでして」


「そうなの?パッと見あまり呪われている感じしないんだけど」


 呪われている感じがどんな感じかわからないけど、俺が見た感じでは、ジーントーレスが苦しんだりしてるようには見えない。

 ステータス的には呪いと、あとは体力と魔力が半分減っていると言うところだろうか。


「ははは。夜になると…ですね。現れるんですよ。俺に呪いを掛けたレイスが、俺の命を吸い取りに。レイスに聖水をぶっかけたりして攻撃したりしたこともあったんですが、あと一歩のところでダメでした。金が追いつかなかった。レイスは俺の命を吸い終わったら他の命を狙うでしょう。こんな俺なのに、買ってもらえたこと、心苦しくもあるんですが、嬉しかったです」


 眩しそうな笑顔を向けるジーントーレスなのだが…。


 俺、知らなかったんです。

 君が呪われていて、君の呪いが完了したら他の命が……っての。

 知ってたら……買ったかな?

 でも知っていて買ったならきっと聖水も買ってるよ!


 あ、ダメだ、俺あの時教会の人っぽい人たちから逃げてたんだった。


「聖水をもっと飲んだら治るものなの?」


「それが、どうやらそうじゃないみたいなんです。夜に俺の元へやってくるレイスを倒してから聖水を飲まないと完全には治らないみたいなんです。買った聖水でレイスを倒せたとしても、そのあとに飲む分の聖水がないと、呪いの効力は残ったままで、今度は自然にじわじわと生命力が抜けていくようなんですよね。俺に取りついているレイスが特殊なようで、金貨5枚もする上級の聖水5本使っても倒せなかったんです」


『夜に現れたレイスを聖魔法ホーリーで倒した後、その森猫にヒールを掛ければ呪いは解けます』


 あ、女神様。

 なるほど。ありがとうございます。

 早速今晩やります!


「そうなんだ。あのさ、そのレイスで今晩試してみたいことがあるんだけど、いいかな?今晩試してみて、やっぱり聖水が必要だったらどこかの村か町に寄ろう。たまたまだけど、お金が入ったし、こういうときに使わないとさ」


「……主様…」


 この後少ししてから休憩を挟んで、また双子は元気に走りだす。


 夕暮れが近付いてきた辺りに、タルタから声が掛った。


「ァ…ご主人様、あの辺りに野営出来そうな場所があるのですがいかがでしょう。ちょうど行商人らしき馬車が止まっているので、ご一緒できれば少しは安心かと思います」


「わかった。そうしよう」





 野営地には何組か先客がいた。

 そこに俺達が近付くと、少しギョッとされた。


「すみません。俺達もご一緒してもよろしいでしょうか」


「あ、あぁ、えぇ。それはもちろん。野営の人数は多い方がよいですからねぇ。それにしても、ケンタウロス族が牽く馬車ですか。これはとても心強いですねぇ」


「ははは、ありがとうございます」


 俺はなんとも言えず、笑ってごまかし、礼を言ってそそくさと馬車へ戻った。


 やっぱり馬の代わりにケンタウロス族って目立つよなぁ…。


 広い野営地には草などは生えてなく、踏みかためられた土場だった。そこかしこに焚火の後があって、俺達は端っこの方に陣取らせてもらった。

 ケルクとクレアをタルタが馬車から離して、水を渡し、少し休んでもらう。


「では俺は日が暮れるまで薬草を探してきます」


「じゃぁ、私は野営の準備をしますね」


 ジーントーレスは街道を挟んで向かい側の森へ入って行った。タルタは馬車から荷物を出して準備を始める。


「野営の準備ってなにするの?」


「そうですね。馬車があるので、寝るときは良いとしまして、石と薪を集めて火を起こし、夕食の準備でしょうか。幸い前に使っていた人が組んでいた石があるのでそれを利用させてもらえるとして…私は少し薪を拾ってきますね。ケルク、クレア、ァ…ご主人様をお願いしますね」


 タルタも森の方へ行ってしまった。


「夕食の準備かー」


 チラリと隣の組をみると、数段石を積み重ね、円状に並べて置いてある中に、薪を入れて火をつけ、その上に鍋を置き、その鍋の中に水を入れ、干し肉や芋を入れていた。


 必死に噛んで食べる以外の干し肉の消費の仕方がわかった。


 俺も早速あーやって干し肉を使ってみよう。

 馬車からガサゴソと、調理器具や雑貨の入った袋や保存食の袋を漁る。

 その中から鍋を取り出し、鍋の中にジャガイモと干し肉を入れ、思い出す。


 そう言えば昼間、肉、手に入ったな、と。

 干し肉は取りやめて、コカトリスが落とした?肉を使うことにした。

 カバンから肉を1つ取り出して…


「お、おもっ!」


 ひと抱えある肉は重かった。

 鍋に入りきらないので、はじめに鍋を馬車の外に出して、それから肉を抱えて外に出し、鍋の上に置いた。また馬車の中に戻って、カバンを漁る。包丁代わりのナイフと、まな板と、フライパンとお玉と、何故かあった菜箸と、調理に使えそうなフォークを持って、鍋の元に戻って気付く。


 まな板に対して肉、でかくないか?


 と。


「おまたせしましたー!って、えぇ?!肉ぅ?!」


 薪を拾って戻ってきたタルタが肉に驚いている。


「おかえり。うん。肉。食べてみようかと思って。…食べられるんだよねぇ、これ」


 そういえばあまり確認しないまま食べる前提で用意してしまったけど、どうなんだ?


「はい、もちろん!かなりの高級肉ですけど」


 目を輝かせながら、肉を見つめるタルタ。

 双子も興味津々なようで、集まってくる。


「だったら、せっかくだし夕食にみんなで食べよう。焼いて食べてみたいから切り分けようと思ったんだけど、肉に対してまな板小さいかなって」


「え、あ、そういうことなら私がします!ァ、ご主人様は休んでいてください」


「やる事ないと暇だから、俺もやるよ」


 タルタに肉を任せて、俺は鍋に水を入れて、ジャガイモを洗い、皮を剥いていく。


「あの、芋の皮剥き、僕も出来ます。やらせてください」


「私も…」


 ケルクとクレアが手伝いを申し出てくれたので、素直に受け入れた。二人それぞれのカバンに入っていたナイフを取り出して、三人でせっせと芋の皮むき。

 タルタは肉を使いやすい大きさに切り分け終えて、火を起こしていた。


「んー、やっぱり干し肉もどんなものか食べてみようかな。お隣みたいに鍋に入れるやつ」


 焼いた肉と茹でジャガイモとパンとチーズでも、と思ったんだけど、汁物も欲しいなと思い至り、ちょっと変更。


 黙々と芋の皮むきをしていて今気付いたけど、芋、剥きすぎたな。でも明日の朝の分としてスープに多めに突っ込んで作っておけば良いか。


「わかりました。昼間食べた食事もですけど、夕飯も豪華ですね!ふふふふふー」


 なにやらタルタが嬉しそうである。双子も喜んでいる風だからよかったかな。

 タルタが馬車から干し肉と、木の器を持ってきて、俺達が剥きおわったジャガイモを手際よく食べやすい大きさにカットしていく。それから鍋を一度少量の水ですすいで、改めて水を入れて火にかけ、カットしたジャガイモと、こちらも食べやすい大きさにカットした干し肉を鍋に入れた。


「へー。慣れたもんだねー」


「はい!私はジーントーレスのような冒険者ではなかったのですが、旅は結構していましたので、これくらいなら出来ます」


「そっか。良かった。俺はこういうの初めてだから、慣れた人がいると安心だね」


 ケルクとクレアも同意なように頷いた。


 しばらくみんなで他愛のない話をしていると、ジーントーレスが帰ってきた。


「お待たせしました」


「おかえりなさい。どうだった?」


「はい。このあたりではあまり採取が行われていなかったのか、かなりの薬草を採取する事が出来ました。珍しいものもいくつか採れましたので、ご確認ください」


「うん。ありがとう」


 ジーントーレスがカバンから出したのはかなりの数の草だった。


「すごいね!……でもあの……ごめん。なにがなんだか…」


 森猫族と言うだけあって森の知識があるからこれだけたくさんの種類を採取する事が出来たのだろうか。

 それともちょっとスルーしてたけど、ジーントーレスのあの魔法の項目の『森』とかいう森魔法に何か関係が…?


「す、すみません。説明不足でしたね!えーと、これがギルドの掲示板に必ず依頼が出ているキララ草とヒルル草です。いつも大体10枚単位で出ているので、20枚ずつ採取してきました。それからこっちがモメラ草、これがコズの根、グード草、キユ草、ベヘ草を五枚ずつ。根は大きいモノが取れたので1つにしました。これらも依頼で良く見る薬草です」


 うん。魔法とかじゃなくてしっかりした冒険者としての経験から来るものか。


 紹介されるまま眺めていると、目の前に文字が浮かんだ。


【キララ草】

 薬草。小回復薬、ポーションの素材


【ヒルル草】

 薬草。下級毒消しポーションの素材


【モメラ草】

 薬草。中級麻痺回復薬の素材


【コズの根】

 毒草。全身を痺れさせるコズの毒薬の素材


【グード草】

 薬草。不眠を改善させる薬の素材


【キユ草】

 薬草。魔力小回復薬、魔力回復ポーションの素材


【ベヘ草】

 薬草。胃薬の素材



 鑑定スキルが仕事をしたようだ。

 毒薬が混じっているんだけど、これも依頼に良くあるものなんだろうか。

 ……ジーントーレスを信じよう。


「ありがとう。今度は俺も一緒に行くよ。せっかく冒険者になったんだから採取覚えたいし」


「わかりました」


「よろしくね。それでさ、皆と話してたんだけど、夕飯はさっきの肉を食べてみることにしたんだ」


 そういうと、ジーントーレスもまた嬉しそうな顔をした。


「いいのですか?売ればかなりの金額になりますが」


 と言いつつも既にニヤケ顔で涎を垂らしそうになっているジーントーレス。昼も思ったけど、ジーントーレスは肉が好きなようだ。他の皆はまだわからないけど、食べるときはみんな美味しそうに食べているから、こっちも嬉しくなるよな。


「大量にあるし、ちょっとくらい食べてもいいんじゃないかな。食べてみて美味しかったら、売らずに僕らで食べよう。でもお金に困ったら売るかもなー」


「ははは、うれしいですね。旅なのに贅沢な食事ができるなんて」





 周囲が薄暗くなり、鍋が煮えた頃、塩で味を調えて、火から鍋を下ろし、その火の上に今度はフライパンを乗せて、大きめに切った肉を焼いていく。タルタの荷物に、道具屋のオヤジがもう一つフライパンを入れてくれていたようで、タルタはもう一つのフライパンが使えるように、また石を並べて火を起こし、フライパンを置いて肉を焼いた。

 コカトリスの肉は、鳥モモ肉のような見た目だった。両面に軽く塩を振って、フライパンで焼いていく。焦げ目がついたら裏返して、今度は蓋をして蒸し焼きに。焦げないようにフライパンを上げ下げしながら火加減を調整しつつ、中までしっかり火が通ったら完成。あとは人数分同じように焼いていく。

 全部焼き上がりそうな頃合いで、ジーントーレスが食器を用意して干し肉とジャガイモのスープをみんなの分よそっていく。双子もパンを用意したり、チーズを切り分けたりして手伝っている。


 みんなの分肉が焼けて、皆で主に使っていた火を囲むようにして座り、食事となった。


「いただきます」


 俺が言うと、みんなもうかがうように同じように、いただきますと言った。

 まずは……肉。

 魔物の肉だ。高級肉と言われるくらいなのだからきっとおいしんだろうな。珍味の部類だったら嫌だなー。と思いつつ、かじりつく。


「うまっ。うん、立派な鳥肉だ」


 俺が食べるのを見てからみんなも食べ始めた。


「う…っ!うまい!まったく臭みがなく、柔らかくて脂が乗っていて……噛むたびに肉汁といううまみが溢れだし、口の中いっぱいに広がり幸福で満たしてくれる…!」


 え、なにそれ。


 誰に対しての食レポなのか、謎説明をしながら食べるジーントーレス。今朝、俺に買われた直後とだいぶキャラが違うんですけど。

 肉なのか?肉の影響なのか?肉が君を変えてしまったのか?


「柔らかくて、味もおいしいですね!パサパサしてなくて、ずっと食べていたい味です!」


 タルタからの安心コメント。


「僕、こんな肉、初めて食べました!とても美味しいです!」


 そうかそうか。

 たくさんお食べ。


「うぅぅっ、お肉おいひい、お芋おいひぃ!………これがチーズ…チーズおいひぃ!」


 うんうん。

 肉も芋もチーズもたくさんお食べ。


 干し肉とジャガイモのスープは、結構おいしかった。干し肉からいい出汁がでて、優しい味がした。欲を言えば、肉にもスープにもコショウが欲しいところだけど、買ってない。そう言えば、調味料は塩しか買ってなかった…。失敗したなー。あー、なんで買う時思いつかなかったんだろ。しょうがない。次の街で買いそろえよ。


 みんなが幸せそうに食べるのを見ながら、俺も自分のペースで食べ進めていった。



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