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黒き甲冑をまとった花嫁  作者: 鶯埜 餡
番外編

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40/47

ifの話1

もし、ルナールがリサを見初めていたら、の話。

って言っても、本編と結末自体は変わらないですね。

 社交会の直前、ある昼下がり―――

 その知らせにヴィルヘルムもリサも驚いていた。王立騎士団長の執務室に呼ばれたリサは、まず初めに困惑している団長と、その目の前に座っていて苦笑いをしているマックスに驚いた。

「ようやく来てくれたね」

 マックスはリサのことを『子猫ちゃん』とここでは呼ばなかった。彼はさあ、座ってと言って、リサをヴィルの隣のところに座わらせた。リサは、ここの部屋の主であるヴィルヘルムの方を見たが、ヴィルヘルムは何も言わずに頷いた。それを見たリサは、では申し訳ありません、と言いつつ、彼の隣に座った。

 座ったときに少しヴィルヘルムが身じろぎをしたが、リサは何も気にも留めずにいた。


「ねえ、さっそく本題に入らせてもらうんだけれど、子猫ちゃんって故郷とかに許嫁とかいる?」

 マックスは単刀直入に言った。リサは一瞬、ヴィルヘルムとの婚約などを含めた本当のことを言おうか、どうしようかと思ったが、隣にいたヴィルヘルムが彼女よりも先にマックスに答えた。

「それを聞いてどうする?」

 マックスは少しニヤリと笑ったが、すぐに笑みを消して、


「この前ルナールが視察に来ただろう?その際に子猫ちゃんのことが気に入ったんだって。で、子猫ちゃんさえ良ければぜひ妃に欲しいって言っていたよ」


 と言った。その発言には、リサだけでなくヴィルヘルムも驚いていた。リサは確かに、王太子が来た演習では好印象を持ってくれたんだなーという勝手な想像をもってはいたものの、その一方で婚約者(ヴィルヘルム)とは違って、冷たい印象を受ける人だからあまり近寄りたくないな、とも思っていた。なので、この話には、納得いくものもあったが、あまり許容できる話ではなかった。

「あの王太子殿下が―――」

 その呟きは、リサのものだったかヴィルヘルムのものだったのか分からないが、どちらも同じような気分でいることでは間違いなさそうだった。

「うん。そうなんだよね。で、僕は君たちに警戒されないだろう、という事で、探って来いって言われたんだよね」

 マックスが続けた発言は、二人ともをさらに驚かせた。何故、それをリークする?二人共の頭の上に疑問符と警戒心を見つけたマックスは、笑った。

「やめてよ。僕だってこんな役回りは嫌だよ。でも、子猫ちゃんが望むのならば、王宮に連れて行ってあげるよ」

 ひとしきり笑った後に言われた言葉は真剣なものそのものだった。




「でも、やーめた」

 しばらく間を置いた後に、マックスは言った。しかし、言葉そのものは呆れ口調で言われたが、表情やこもっている感情は別のものだった。

「大丈夫。子猫ちゃんには立派な保護者がいるんだし、それにしっかりと守ってくれる人がいるんだから、ルナールにはもったいないや」

 といって、マックスは嵐のようにヴィルヘルムの執務室を出て行った。


「結局何だったのでしょうか」

 (マックス)の去った後の執務室で、リサは呟いた。しかし、ヴィルヘルムにもこたえることはできなかったものの、彼の中では安堵感でいっぱいだった。

(よかった。もう少しであの王太子にとられるところだった)

 そう思ったヴィルヘルムは、リサの右手を思わず握ってしまった。

(王太子殿下はあまり近くでお会いしたことない方なので、よくわからないですが、マックスさんは良かったのでしょうか)

 リサは一応この国のナンバー2である王太子に、いけないことをしたのではないか、と思ったが、そんな彼女を見透かしたのか、ヴィルヘルムの手がそっと握られた。


(いや、これはまずいだろう)

 帰り道、マックスは馬の上で考えていた。王太子は一応従弟であり、気軽に話せる相手であるため、さまざまな用事を押し付けられやすく、時々王太子の名代としてここへもやってくる。

 しかし、今回の用件であった『自分(王太子)の代わりに、王命によってリサ・アシュレイを連れてくること』という、ミッションをこなすことはできなかった。()が一目ぼれした少女にそのことを話した途端、ただの上司であるヴィルヘルムの放つオーラが変わったことに気づいた。どうやら、彼は王太子よりも前に彼女に懸想しているらしい。しかも、おそらくあれは婚約しているんじゃないのか、とも思えた。

 帰ったらルナールにどう話そうか迷っていたマックスは、王宮へ戻る途中、一歩一歩行くのがつらかったが、詰め所と王宮までは彼の馬を捌く技術では、ほんのわずかな時間しかかからない。

「貴様でも無理だったのか。しかし、女性をかばっているところを見ると、王立騎士団は弱くてもよいのだろう、ね」

 王国の祖に近いとされる王太子は、その美しい(かんばせ)をゆがませた。

「申し訳ない」

 マックスは頭を下げた。しかし、ルナールはまあ、よい。ご苦労だったと言って、すぐに自分の書類仕事に戻った。

(何かある)

 そう思い、悪寒が背中を走ったが、当然何も言えない。


 果たしてその予感は、的中する。

 王太子は王立騎士団長に宣戦布告して、決闘を行った。


 その結果――

(いや、やっぱり、おかしくないか―――)

 なんとヴィルヘルムの代わりにリサが出てきて、戦い、彼女が勝った。



 しかし、王立騎士団を認めていない王太子は、イカサマだと言って、彼女を召し上げようとしたが、流石の文官の重臣たちも、騒ぎに気づき、決闘を見に来てしまい、事の詳細を聞いた瞬間、王太子は半分近くの貴族から総スカンを食らった。

 そして、多くの貴族たちはすぐさま兵を率いて、都へやってきた。手数の足りない王太子は戦に負け続け、ついには捕らえられた。

(なんか哀れだな)

 マックスはそう思ったが、自業自得でもあったため、それ以降、ルナールのことは特に気にすることはなかった。

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