エピローグ
時は流れ―――
翌春―――――
時は流れ、『黒羽』は正式なグース州軍として利用されることとなった。現『黒羽』の頭領は元王立騎士団の団長であった。
もともと外の出身であり、社会的な地位もあった彼は、本来ならば『黒羽』に所属することはできない。しかし、あの戦の直後に10年ほど所属した王立騎士団をやめて、『ただのグース州ウィラント地方の領主』となっており、さらに、前の副頭領だった男には頭領であった少女と何らかのかかわりがあるとばれており、あの戦にてその強さは互いに認めていたこともあって、率先して賛成こそしないが、周りの反対を抑えるのには一役買っていたようだった。
そして、少女はというと。彼女はあの戦で決闘を行ったときに、元近衛騎士団長を害すために剣を振り上げたのではなかった。
彼女は自殺しようと思ったのだ。だが、すんでのところで、ヴィルヘルムとマックスに助けられた。ただ、出血は酷く、一時期は危ないとさえ言われたが、なんとか持ちこたえて、今ではほぼ日常生活が送れるようになっている。現在は『黒羽』の頭領も引退しており、実家のアスフレッド領で生活を送っており、あまり外にも出てきていない。
しかし、そんな違う場所で暮らしている二人だが、次の夏に結婚する。
リサが倒れた後、爵位はく奪をも覚悟して彼女を実家に送り届けたヴィルヘルムは、数日王都に戻った後は、彼女が歩けるようになるまで、看病し続け、彼女の両親(特に母親)や兄に認められていたのだ。そのため、今度はお見合いとかではなく、自分の口から娘が欲しい、と言ったところ、快諾してもらったのだ。
もう少ししたら、ヴィルヘルムがいる州都まで行く予定であり、さんざん止められたが、剣の練習も再開する予定だった。
一方、王都およびその近辺では―――
ロシュール王国全ての州軍を巻き込んだ戦は、あれから一週間程度で終息した。
一度、王立騎士団長が離脱する、というハプニングには見舞われたものの、近衛騎士団長がまとめ上げたので問題はなかった。
王都戻った翌日、王立騎士団長は罷免された。正確に言うと内部からの告発により、新国王に即位したルナールの一存で決められた。しかし、内部からの告発、新団長の就任は全てヴィルヘルムとマックス、そして騎士団の大隊長による筋書き通りだったのだ。
王太子はそれに気づくことのないまま、次々と様々な政策を発表したものの、すでに王立騎士団と合体した近衛騎士団の尽力により、北部州だけではなく南部州からの反発、果ては諸外国(特に北方国家シシカーヌ)の反発も高まり、王家の崩壊も秒読み、とされていた。そんな中、新たに大隊長に就任していたバジリオによって、グース州に、今こそ挙兵すべしとの手紙がもたらされた。
そして、再び『黒羽』をはじめとするグース州軍を先頭に、北部州が立ち上がり、南部州も重い腰であったが、立ち上がった。そして、王都を包囲する情報が国王の元にもたらされると、ルナールは騎士団に討伐の命令を下したが、その騎士団もすでに反乱側にくみしており、ルナールは単身捕らえられた。
ルナールはすぐに処刑され、新国王には現サロン侯爵の息子であり、最も王族の血筋に近いもの、元近衛騎士団団長であり、現ロシュール王国騎士団団長その人であった。
彼はかなりためらったものの、国の重鎮たちから脅されたため、仕方なくそれを引き受けることにしたのだった。しかし、条件としてあることを付け加えた。
『一つ目は、ロザリンド・ミリアスラを唯一の妃にする。そして、騎士団は一つだけにし、そのトップに自分の気に入るものを据えさせること』
この条件には、流石の重鎮たちもマックスを国王にすることをどうしようか、考えるそぶりを示したが、最終的にはマックスを即位させるならば致し方がない、という事でそれを了承した。了承されたマックスは、いやいやながらもその騎士団の新たな人事案を、貴族議会に提出したところ大荒れしたが、即位する条件を改めて強調して言うと、彼らも黙ってその人事案を通した。
その夏――――
ロシュール騎士団には新たな騎士団長が誕生した。その騎士団長は、初代にして前の二騎士団時代からしても、前例を見ない女性騎士団長だった。そして、その夫は副団長に収まった。
「あの時、僕が邪魔していなければ、本気の殺し合いの場において、彼女の方が勝っていたからね」
なぜ、そのような配置にしたか、人々に尋ねられる度、マックスはそうやって笑いながら言ったため、彼らからしてみれば真偽は不明だった。しかし、それを本当のことだと知る人もいる。だが、彼らはそれを口にすることはできなかった。
そして、さらに数年後――
二人は一線を今度こそ引退した。なぜなら、二人の間に待望の子供ができ、これ以上仕事を続けるのはと判断されたためだ。
そうして、国王の赦しを得て、二人は故郷へ戻り悠々自適とした生活を送ったとされる。
故郷の人々は皆、こう言う。
『彼女はまさに、第二のミフィア・ステフィアだ』
と。
Fin.





