その9
今回は切りが悪くなってしまったので、短いです。
リサはざっとあたりを、首を動かさずに見た。正面には、青の甲冑――彼女にも支給されたのにもかかわらず、着る機会のなかった王立騎士団の甲冑――を纏った騎士団がいる。恐らくは大隊3つ分くらいか。そして、左手には黄色い鷲が描かれている赤い旗を掲げている軍と、黒の蛇が描かれている灰色の旗を掲げている軍が見えた。そして、右手には、遠くであったが茶色の熊が描かれている赤と緑の旗が見えた。リサはなんとなくだが、ここは敵陣に囲まれている場所ではないか、と思った。
ちょうどその時、何者だ、と声が上がった。どうやら、霧が晴れてきたので、敵陣からも見えるようになってきたらしい。
カインが少し前に出て、
「我らはグース北部、シシカーヌとの国境を守る民間出身の警備隊『黒羽』である」
と言った。ちょうど目の前には、『青と銀』の甲冑を纏った騎士がいた。確か、一度だけその姿を見たことがある、とリサは思った。あの時と寸分たがわない。昇進試験後に行われた近衛騎士団と合同での御前試合だったか。あの姿はいまだに覚えている。周りには、各軍が警戒して出してきたらしい、兵士や騎士がいたものの、カインは迷う事もなく、その青と銀の騎士に手紙を渡した。
「一番貴様が渡しやすいから、これを渡しておく。明後日だ。それまでに決めろ」
本当は違う理由であったものの、それらしい言葉を添えて、彼に渡したカインは、彼らに背を向け、こちらに戻ってきた。可能であるならば、彼のもとに駆け寄りたい、と思ったが、今この瞬間に自分たちは敵同士になっている。もうこれ以上は近くによることは許されない。リサは自軍に戻る間際、彼の方を向いてその姿を見納めた。先ほど手紙の中に書かれた提案は、自分が中心となって考えたものだが、できればその案に乗ってほしくない、とも思っていた。
「どうでしたか、姫?」
自軍に戻って、開口一番にカインに言われたのはそんな言葉だった。しかし、何について聞きたいのか、分からなかったリサは尋ねた。
「何について『どう?』と聞いている?」
「そりゃ、もちろん私の活躍ですよ――――と言いたいところですが、そんなものではなくて、私たちが対峙した皆さんですよ。皆さんは乗ってくれるでしょうか」
カインは珍しくふざけていなかった。リサは自分が一番答えにくいことを聞く男だな、と思いつつ、
「さあね、どうでしょう」
と答えた。それは本心でもあったので、あながち間違いでもなかった。
そして、二日後の朝――
リサたちは王立騎士団の陣に近衛騎士団の軍が吸収されたのを確認して、自軍の九割以上を後方へと下がらせた。一部の兵士を関係のなくなった州軍のもとに向けて派遣し、撤退をしてもらった。
そして、迎えた決戦の時―――
リサとカインは並んで騎乗していた。そして二人の後ろには400人程度の兵士がいる。おそらく、彼らは二つの騎士団相手にも力で劣ることはないだろう、と考えている。
「構え」
両軍同時に合図があった。『黒羽』側はカインが合図を行い、騎士団側は赤と金の甲冑を纏っているマックスが合図をしているみたいだ。
両軍ともに緊張が走る。カイン、マックスの剣は共に高く掲げられていた。
「進め」
これもまた、両軍同時だった。2人の剣は振り下ろされ、リサは一般兵士たちに交じって、馬を走らせた。カインも追いかけてくるのが見えた。





