その7
すみません。ヒーロー出てきません。
一週間後、昇進試験の受験者は全員合格だと知らされた。リサはルミナールやバジリオなどの仲間やコンスタンティンなどから手荒い歓迎を受けた。
「お前、本当に受かっちまうとはな」
ルミナールはしみじみと呟いた。今は新入騎士たち総出で合格祝い、と称して、新入騎士全員で酒盛りを行っていたのだ。
ちなみに、昇進試験合格の最年少記録としては、現騎士団長の持つ『13歳』で破られることはなかったが、騎士団入団からの最短記録としては彼の『6か月』を大幅に上回り、『2か月半』という記録を打ち立てたのだった。さすがのコンスタンティンも、合格発表の日、結果を彼女以上に気になったらしく、使者から書状をひったくってまで読もうとしていた(ちなみに、使者はかなり逃げ足の速い人物で、結局コンスタンティンから逃げ回り、何とか書状を直接リサに手渡すことに成功した)。
また、そのような、いわくつきの昇進試験であったため、かなり外部からも注目されてしまった事に気づかなかったが、副騎士団長が中心となって火消しした、という後日談もあった、と後々騎士団には伝わっている。
「うん、私も信じられないよ」
リサ自身も、どのような実力が必要なのか、力試しのつもりで受けただけであったために、この結果には驚いていた。
「で、あと少ししたら、昇進式なんだっけ」
同期たちに絡まれていたバジリオがいつの間にか戻ってきて、リサとルミナールの会話にもぐりこんでいた。
「うん」
リサはおつまみ(海鮮物の塩漬けや夏野菜の粕漬)をバジリオにも渡した。
「じゃあ、今度こそ騎士団長には会えるのかな」
バジリオの一言にリサの心はざわめいた。できることならば、永遠にすれ違っていたい。それが、彼女の本心だった。
「どうかしら、ね」
そんな感情をおくびにも出さずに、リサは困ったような仕草をしてごまかした。もちろん、2人にはごまかしたことはばれてはいたのだが、2人ともあえてそれには、見て見ぬふりをした。
その後は、翌日が一斉休養日であったという事を含め、明け方まで飲み続けた。
「ねえ、リサさん」
バジリオと共に酒盛りの片づけを(主役なのに)片づけていたリサは、バジリオに声をかけられた。
「何?」
リサは少し眠く、うとうとしながら片付けていたが、
「もしかして、騎士団長はリサさんの婚約者、とか?」
というバジリオの発言に、リサは飛び上がるほど驚いた。
「やっぱり『当たり』だったんだ、ね」
彼はにっこりと微笑んだ。その微笑みを見て、彼に制裁を加えるべきかどうか一瞬迷ったが、彼に制裁を加えるよりも、いい加減直接、本人に『アレ』を実行してもよいころ合いだと思った。
「そうよ」
しかし、そんな思いとは裏腹に、リサは冷静に答えた。
「でも、解消する気は満々よ」
リサには領内に残してきた人たちの命がかかっているのだ。この婚約だけは阻止しなければならない。
「なるほど、ね」
バジリオは少し暗い笑みがよぎったが、すぐにいつもの笑みに戻った。
今度こそ次回、ヒーロー出てきます





