断絶
ついに建国式典まで決まりました。
次の日には、建国式典、なんて話が持ち上がっていた。あかりは頭を抱えていた。父は母の言葉にもめげず大喜びだった。
打ち合わせを終え、父帰宅。母はハムスターを見つめていた。
「愉快だ、全く愉快だ」
父は上機嫌だった。元々お祭り好きな人間だ、こういう事態が楽しくて仕方ないのだ。そして楽しい事には常に全力以上の力を発揮する人間なのだ。
そして式典の話を持ち上げたのも父だ。何せスイッチを握っているのは父。故に主導権も父にある。まぁそんなもの握るまでもなくやんややんやと騒ぎ立てて止める人間などいないのだが。
「さぁこれからもっと楽しくなるぞぉ!っと」
今日も酒を呷り、陽気に飲んでいる。今日は一段とペースが早い。手元がおぼつかず猪口から零しそうになりつつ一滴たりとも零さずに干している。
酔いも進んだ頃、電話が鳴った。電話機の画面に、でかでかと「あかり」と表示してある。
「おう、俺が取るぅ……っとどっこいしょ」
フラフラと立ち上がり、受話器を取る。
「もしもし?」
「馬鹿じゃないのあんた!!?」
大声が酔った頭の中を猛スピードで通過する。体の芯を揺さぶられるような感覚に襲われ、思わず全身が萎縮してしまう。
「何建国式典って!! 何考えてんのよ!! 何で面倒な騒ぎばっかり起こすのよ!!」
捲し立てるあかり。キャラが違う気もするけど、それほどの事態なのだ。どんどん取り返しのつかない方向へと向かっていく実家を抱える娘は辛い。
「お、落ち着けって。あかりん……取りあえず話を聞きなさい」
「無茶いうな~!」
この態度だけで今日一日あかりがどんな一日を過ごしたのかがよく分かる。
「大体あんたは……!! ……!!」
以下、十分ほど説教という名の絶叫が続きますが、割愛させて頂きます。
「……あんた父親としてさぁ……」
まだ終わってなかったので後二十分ほど割愛します。
「と言う訳!ぜぇぜぇ……」
流石に息が切れてきたようだ。三十分経過した時点でようやく父が口を挟める状態となった。
「分かった、分かったから取りあえず話を聞いてくれ。……はいっ深呼吸~吸って~吐いて~……」
電話の向こうで律儀に呼吸を整えるあかり。それを聞いて、整いきる前に父は静かに話し出す。
「俺もこんなに話がでっかくなるとは思ってなくてなぁ。あかりんには済まないと思っているよ。何の相談もなく話も進んで。とんとんと上手く行きすぎてな」
「……」
「でもな、あかりん。俺はただあかりんに核があるってのを証明できれば良かったんだ。俺はこれで十分だったんだよ。でもなぁ、これでいいったって状況が戻れない所まで来てるんだ」
「……だからって何でこんな事になるのよ。普通の父親はこんな事しないでしょ」
「それはそうなんだけどな……」
口籠もってしまう。確かに普通はしないだろう。酔っぱらっていた、なんて事を言ったらいよいよ呆れられるので言わない事にした。
「……ごめん、もうこれ以上何も言いたくない。おやすみ」
プツリと、電話が切れた。父には何か決定的な物まで切れてしまったような気がした。
一体どうなってしまうのか。