98話
闘気法、これを使えば制御不能だった魔法のいくつかが、制御できるのではないだろうか?
「アドルフ、また危険なことを考えているな?」
「危険だったら、使わないのか? ラインハルト」
「なに?」
「例えば、神殺しの法が危険だったら、使わないのかってこと」
「・・・・・・そ、それは」
「魔法も同じさ、使えるものを使って最善を尽くす。それが一戦闘に全力を尽くすってことですよね? 先生!」
「あ、ああ」
「なら、試せる時に試さないと」
これから試そうとしている魔法。
一人の時には試すことが出来ない魔法だ。
「失敗したら暴走するらしいんで、その時は・・・・・・」
「ったく! 分かった、安心しろ。骨は拾ってやる!!」
「馬鹿! 気絶させろってことだよ! 何斬る気満々になってんの? ねぇラインハルト?」
「それぐらいの意気込みで、付き合ってやるってことだろ! 早くやれ」
ホントかよ~。まぁ、先生もいるし、大丈夫だろ。
全力の闘気法を全身に掛ける。
0.5の頃の様に魔力の膜をイメージして、それを体の芯まで浸透するように。
よし! いくぞ。
火・土・木を合成していく。
相変わらずの攻撃性だ。
そして、俺に対する反発も強い。
よくよく考えてみれば、俺の魔力が俺に反発する?
ふざけた話だ。
俺の言うことを聞け! 俺に従え!
高々魔力如きに、・・・・・・舐められてたまるか!!
俺は自分に喝を入れながら、合成した魔力を自分の体に戻す。
痛い! 体が悲鳴を上げているかのようだ。
耳から入るうるさい音。
これは? 俺の声か?
自分の感覚と意志が、自分の体から離れるような不思議な、不快な感覚。
これが暴走・・・・・・か?
痛みが徐々に強くなる。
ふざけるな! また仲間を襲う気か?
させない!! 言うことを聞け! 俺に従うんだ!
魔法との反発、どれぐらい続いたんだろうか?
自身の感覚が、体に戻る。
勝った! 魔法を、暴走を抑え込んだ!
皆が心配そうに、俺に視線を投げかける。
大丈夫、俺が勝った!
皆の所に戻ろうと、一歩踏み出す。
視界が暗くなり、何かにぶつかる感覚が襲う。
なに? 何があった? どうなった?
視界が戻ると、数歩先にいたはずの先生が目の前にいる。
「だ、大丈夫か? アドルフ、今何したんだ?」
先生が俺に疑問をぶつけてくる。
「何があったんでしょう?」
自分に起きた現象が、今一飲み込めない。
歩き出そうとしたら、視界が効かなくなり、目の前に先生が移動していた。
起きたことをそのまま話すと、
「い、いや、私たちにはお前が消えて、いきなり目の前に出てきたんだけど・・・・・・」
皆も頷き、先生に同意する。
自分に起きた現象、皆が見た現象。恐らく、客観的観測が正しいのだろう。
つまりは、あれか。 早く動きすぎて、知覚が追いつかない。
そう言うあれか?
なら、6段階の身体魔法を使いながらでは、どうだろうか?
先ほどより、抵抗は少ないが魔法の反発は起きる。
だけど、慣れればラグも少なく使用できるだろう。
よし! 条件は整った。 いくぞ!
先ほどと同様に、視界が効かなくなる。
今度はカチヤにぶつかったようだ。
「大丈夫、アディ?」
「ああ、大丈夫。カチヤは」
カチヤは首を振る。大丈夫なようだ。
しかし、参ったな。これほどまで速いなんて。
自分の動きが、自分の知覚を超えるなんて。
どうやれば、対処できる?
・・・・・・知覚した情報が、処理できないならあらかじめ処理しておけばどうだ?
周囲を知る方法。
俺には、いくつか手段があるな。
探索魔法の3種類。 これをあらかじめ掛けて置いたら、周りの状況も動く先も分かるんじゃないか?
・・・・・・。 自分で言って置いてなんだが、無茶苦茶だな。
でも、やらないことには、何も始まらない。
皆には事前に説明をしておく。
いきなりやったら、霧に驚かれるかもしれない。
特に、初見の先生は話して置いても驚くに違いが無い。
探索魔法を順に掛けていく。
魔石の反応。周囲の動くものへの反応、そして地形への反応。
それらが、俺の脳へ送られてくる。
情報過多かな? いや、これぐらいしないと安心できない。
軽い頭痛に襲われながら、問題の魔法を自身に掛ける。
皆の位置ではない所に、足を踏み出す。
視界が戻ると、目の前には誰もいない。
離れた場所に、皆が立っている。
いけるな。次いで連続して動く。
一歩また一歩と。 速さの代償なのか、ひどく足が痛む。
その代わり、頭痛は感じなくなってきた。
魔法を解きその場に膝を付く。
思わず肩で息をしてしまう。
出来たけど、中々にしんどい。
足が痛いし、疲労感も凄い。 なにより、無酸素運動以上に酸欠になるのが早い。
でも、これがあれば魔神の速さに対抗できるんじゃないか?
思わず、口角が上がる。
相手の絶対的優位が、一つ崩れた。
これを笑わずにいられるだろうか?
後は神殺しの法。相手に触れることが出来れば、あの幼顔に一発お見舞いできる。
気分が高揚してくる。
ふは! 今からアイツの顔が歪むのが、楽しみでしょうがない。
顔を綻ばしている俺に、皆が駆け寄る。
「アドルフ! 無事か?」
「ああ、大丈夫。それより見たか? これならあの魔神も驚くだろう!!」
「アドルフ、残念ながらこれは使えないと思いますよ?」
「え? な、何でですか? 先生!」
「周りを見てみなさい」
そう言われて、周囲を見渡す。
霧に覆われているが、何も変わらない・・・・・・いや、所々地面が抉れている。
あれは・・・・・・俺が踏み込んだ場所・・・・・・か?
縮地を覚えた当初、地面を凹ますことがあった。
これは、それの比ではない。
一歩を中心に、30センチほど掘り返されている。
「私なら、見えなくてもこの跡で位置が予測できます。魔神とやらはそんなに未熟なのですか?」
どうだろうか? いや、最悪を想定すれば先生と同等、いやそれ以上を考えないと。
折角見つけた対抗手段、実戦で日の目を見ることは無いのか?
いや! 何か方法はあるはずだ。
使用頻度が落ちる魔法はあっても、全く使えない魔法はなかった。
なら、絶対にあるはずだ。
3属性なら、3属性の中に必ずあるはずだ。
残りの組み合わせの中に!
えっと、これまで三つの組み合わせを試したから。
残るは・・・・・・5種類の中の3種を使うと・・・・・・!!
え!! 10種類?!
ってことは、あと7種類?
確認した組み合わせの多さに、思わず眩暈が生じた。




