93話
新しい魔法の使い方・・・・・・。
そんなのがホイホイ出来ていたら、俺の魔法開発はこれからも、順調だろう。
神様からの伝言。 俺にとってこれは、かなりの衝撃を与えていた。
魔法の副作用。 ・・・・・・これがあるのは、理解もしていたし、気を付けていた。 ・・・・・・つもりだった。
実際に、副作用の兆候を示されると、尻込みしてしまうのは、俺だからだろうか?
ここに来ての、開発差し止め。 それも神様直々だ。
諦めるのか? 魔神の件を考えると、正直中級魔法だけでは心許ない。
未だに確認が取れない、神殺しの法。
これが手のうちに有ったとしても、速さに劣る俺達が実行できるのか? ・・・・・・出来ないだろう。
更に上の魔法。 記憶には無いが、火・土・木の合成は、速さの上では魔神と互角らしい。
なら、何としても3属性を使えるように、改良する必要がある。
しかし、手立てがない。
何かヒントがあればいいのだけど。
「アドルフ、攻撃しちゃうぞ?」
バルドゥル様は、心配そうな声で確認してきた。
「ああ、すいません。 考え事してました」
「全く、折角連れてきたのに、これじゃ意味がないな」
呆れたように槍を掲げる、バルドゥル様。
あの伝言から、3日。 旅立つ前に、俺達の腕前を確認したいと言いだした。
今後、大規模な狩りを行う際に、手伝いを頼めるかを見極めたいらしい。
確かにバルドゥル様には、死蔵していた翼竜の解体の手筈を立ててもらった。
だけれど、獅子の情報の件。 俺は忘れてもいない。
それに、翼竜に関しても手数料やらなんやらで、かなりの小銭を稼いだらしい。
そこに来て、手伝いが出来るか実力を見せろ?
全然乗り気にならない。 俺達にメリットが無い。
・・・・・・のだけど。
「こら!!アドルフ、兄上直々に腕前を見てもらえるんだ。 しっかりしろ!」
一応リーダーのラインハルトは、兄に利用させるのが嬉しいらしい。
兄弟ってこんな関係なのか? 前世・現世を通して兄の居ない俺には、理解できない。
魔法のことを考える時間が、必要なのに・・・・・・。
あ、一寸頭に来たな。 イライラをぶつける相手が欲しくなったな。
よし、モチベーションが上がってきたな。
「失礼しました、バルドゥル様。 改めてよろしくお願いいたします。」
右の真半身になり、剣を構える。 勿論、矢玉は見えないように、左手で握り込む。
俺の殺る気を見て、槍を構えるバルドゥル様。
身長よりやや長い、投擲や盾を併用するタイプではない槍だ。
鉤や又はない。 この手の槍は、突き・払い・石突による打撃だけだ。
ジリジリと俺に近づいてくる。 俺は反対に後退する。
風切り音がして、穂先が突如目の前に出現する。
定石通り、突きから入ってきた。 剣で払いながら、右に動く。
槍が戻るのを確認すると、俺は縮地を始める。
ルフトシュピーゲルング。 相手に的を絞らせず、尚且つ相手の攻撃範囲外から攻撃できる技。
これ程、使い勝手の良い技は無いだろう。
これに耐えられるようなら、ベシュッスに移行もできる。
技さえ発動してしまえば、ずっと俺のターンだ。
緩急を入れつつ、矢玉を撃ちだしていく。
弾速調整も十分だ。 着弾はほぼ同時、終わりだな。
しかし、バルドゥル様は槍を素早く体の周りで回し、矢玉を迎撃していく。
くそっ! なら、間合いの中ならどうだ!!
ベシュッスに移行する。
超近接戦なら、槍の取り回しは厳しいはず!
矢玉で牽制しながら、剣を水平に突き出し、バルドゥル様の間合いに飛び込む。
目論見どり、間合いへの侵入を果たす。
しかし、矢玉と剣の波状攻撃を、器用に捌かれる。
それでもまだ、攻撃ターンは俺の物だ。
攻撃を散らし、隙を伺う。
くっ!! 攻撃の始まりを潰されている?
次第に防御が、攻撃に変っていく。この間合いは俺の物じゃないのか?
なら、一旦引いて・・・・・・。
重心を後ろにしたところで、石突が近づいてくる。
っ駄目だ! ここは引いたら駄目だ!!
咄嗟に踏み込み、石突を躱す。
躱す瞬間、地面に光るものを見つけて、それに向かって矢玉を撃ちだす。
跳弾した矢玉は、バルドゥル様の顔目掛けて飛んでいく。
事もなげに跳弾を躱す、バルドゥル様。
無理な体勢で避けた俺に、槍の柄が振るわれる。
負けか? だったらせめて、一泡吹かせたい!
防御を捨て、剣をバルドゥル様に投げる。 あっさりと避けられる。
が、俺の目的は投剣自体じゃない。 投げた剣に先ほど跳弾した矢玉が当たり、更に跳弾する。
打ち付けられながら、最後の矢玉を撃ちだす。
3回跳弾した矢玉は、勢いを無くしバルドゥル様の頭で跳ねる。
負けた・・・・・・けど、一矢報いたぞ。
それからカチヤ・ラインハルト、クラウディアも俺同様に地面に叩きつけられた。
勿論俺以外は、かなり優しくされていたけど・・・・・・。
あれ? 嫌われてる・・・・・・のか? 俺。
「なるほど・・・・・・ね。よし、お前らには今は、何も手伝わせられないな」
揚げ句、それかい!
不満な顔を見られたのだろう。 バルドゥル様は必死にフォローをしてくれた。
「ああ、違うんだ。 お前らは年の割には強いんだけど、打たれ弱いって言うかな?攻撃は皆、立派なんだけど、攻撃を受けたその後がな・・・・・・」
いやいや、攻撃を受けた後って。 真剣勝負なら、死んでますけど?
「防御が出来ていないってことですか? 兄上」
「いや、防御は出来ているけど、どうしても避けられない攻撃に対して、どう対処するかって、ことなんだけど。 勿論、アドルフの様に捨て身になるのも、一つの手だ」
そう捨て身、前世で言うところの死中に活を求める。
しかし、成功しなければ意味がないし、その後を捨てる覚悟がいる。
「それでもいい時もあるけど、冒険者は生き残るのが最低条件だ。 だから、捨て身になるその前に、死なない努力と言うかな、上手く言えないんだが・・・・・・」
「防具の下の防具が必要・・・・・・?」
「そう! そう言うことなんだ。 何だ、知っていたのか。 カチヤ嬢」
防具の下・・・・・・? なんのこっちゃ?
「父様が、そんな事を弟子の人に言っていたから」
「流石の剣鬼様だな。 俺も教えられるほど、詳しくはないんだが・・・・・・」
バルドゥル様の説明はこうだ。
この世には、身体強化魔法ではない強化方法が存在するらしい。
魔力の消費はするのだけど、物理的に筋力を増やしたり、皮膚を硬化させたりする技術が存在するらしい。
その技術は、トムーギ王国発祥で、セロインが得意としていた技術らしい。
勿論、セロフィー国内にも現存している。 しかし、限られた流派だけが受け継いでいるらしく。
「俺自身も又聞きだからな。 上手く伝えられなくてすまん」
そんな技術があるなら、今後のためにも知りたい。
魔法が行き詰ってしまったのなら、体術で魔神に対処するしかない。
方法は多いにこしたことは無いんだ。
バルドゥル様は、ある程度使えるようだけど、それ以上は知らないらしい。
それでも知っていることを、教えてもらったが、感覚的な説明で要領を得ない。
「仕方がない、義父上に教えを請うしかないか」
「剣鬼の教えか・・・・・・ゾッとしないな」
流石のラインハルトも、剣鬼リーズベルト男爵は恐ろしいらしいな。
まぁ、俺はことある度に稽古を付けてもらっているけど・・・・・・。
クラウディアは、ガタガタと痙攣しているように震えている。
可哀想によっぽど、以前の稽古が怖かったんだね。
カチヤが、俺の服の裾を引っ張る。
嬉しいそうな、悲しそうな微妙な表情だ。
「アディ、あのことも話す?」
「あのこと・・・・・・っ!!」
あーー! ヤバイ!!
「何だ? あのことって?」
ラインハルトが不思議そうに、聞いてくる。
「ライニー、無粋ですわよ?」
復活したクラウディアが、ラインハルトを制止する。
ナイス! クラウディア。
ああ~。 けど、結婚前に手を出したのは、言わないといけないよな・・・・・・。
俺、無事に謎の技法を知ることが出来るんだろうか?
不安しかないな。




