91話
さて、1か月か・・・・・・。
暇だな。
竜鉱を取りだし、各々の武器防具を仕立ててもらうため、俺達は久しぶりの休暇を取ることになった。
勿論、俺は鎧を造るので、後で採寸に行くんだけど。
それでも、2週間は優に掛かる。 そんな時間を俺は有意義に過ごせるだろうか?
・・・・・・無理だな。
と言う訳で、やっぱり魔法開発に勤しまないとな。
「えっと、3属性ってあとは・・・・・・」
「待て、アドルフ。お前は何しに行くつもりだ?」
「ん? 何って、開発に決まってるじゃん?」
「どこで?」
「そんなに遠くには行かないよ?」
はぁ~、とラインハルトは大きくため息をつく。
「逆だ、逆! 人に見られないように遠くに行ってこい」
「? 止めないんだ? 珍しいね」
「止めても無駄なのは、もう悟ったよ。だから思う存分やってこい
ただし、セロフィー国内で危ない魔法を使うなよ? 今だけだからな」
「嫌だな~、危なくない魔法なんて魔法じゃないじゃない」
「じゃぁ、帰国後は使用禁止だ」
「嘘! 全部安全!! じゃなきゃ普及とか言ってないよ」
「~~!! もう行け!!」
「ハーイ、行ってきます!!」
「アドルフ! カチヤも連れて行けよ、念のためにな」
「分かった~」
と言う、協議の下晴れて堂々と、魔法開発をすることが認められた。
首都から離れ、さらに街道沿いからも離れ見晴らしのいい草原に来た。
「アディ、ほどほどね?」
「分かってるよ、無茶はしないよ?」
「そうじゃない、被害がほどほど」
「大丈夫、見つからないだろうし」
お、カチヤもため息つてる。
俺ってそんなに無茶しないよな?
無茶苦茶はするかもだけど。
よし! 残りは得意の火が、入っている組み合わせしかないし、気楽にやろう。
火と土と木だな。
うーん。やはり、単体同士だと安定しないな。
劣勢属性の木は二重にしないと。
これで・・・・・・どうでしょね? っと。
創った瞬間、背筋がゾッとした。
発動していないが、俺に対する反発が凄まじい。
絶対制御下に入らない。
そう意志を持っているかのようだ。
まずいな・・・・・・。
俺一人なら多少の無茶もするけど、カチヤに何か有っては、流石の俺も開発意欲が無くなるだろう。
一旦魔力を霧散させて、よく考える。
3属性って何があったっけ?
えっと、斥力と引力と・・・・・・ああ、探索!
共通点は・・・・・・多分無いよな。
あったら推測も楽なのに。
ぶっつけ本番で行くしかないかな?
「カチヤ、取りあえず離れていて? んで、何か有ったらよろしく」
「任せておいて」
そう言うとカチヤは、自分の胸板を叩いた。 残念ながら胸ではない。
気を取り直して、反抗的な魔法を試してみますか?
先ほどと同様に、魔法を合成していく。
何がどうなるのか、未だに分からないがやるしかない。
出来上がった、魔力の塊は変わらず俺に対して敵意を向けている気がする。
・・・・・・考えすぎだ、魔法が意志を持っている訳はないんだ。
そう、被害妄想さ。
使えば、きっと何も起こらず、頭を悩ませるんだ。きっと。
そう自分に言い聞かせ、魔力の塊を自分の足元に落とす。
そこで、俺の意識は唐突に途切れた。
◇ ◇ ◇ ◇
アディが魔法を自分に使った。
すると、大声で叫びだした。
魔物の雄たけびのような、野太い声で。
様子がおかしい。
何が起きたのか、分からないけど。
それだけは分かる。
「アディ? 大丈夫?」
アディが私の方を向き、姿勢を低く構える。
何で?
私を攻撃しようとしている?
何か、怒らせるようなことしたかな?
さっきのアディの言葉が、頭をよぎる。
『何か有ったらよろしく』
何かが起きる予感があったんだ。
だから、私に託した。 そう、託されたんだ。
なら、アディを元に戻せるのは、私以外にいない。
アディに斬りつけるわけには、行かない。
なら、気絶させるのが、正解。
アディの技も癖も、良く知ってる。
きっと、敵を捉えるべく、周回行動をとるはず。
なら、周回させずに一気に距離を詰めて、気絶させる。
アディがゆっくりと、横に動き出す。
今!!
地面を強く蹴って、アディに詰め寄る。
!!
居ない!
直前まで確かに、ここにいた。
今は、どこ?
草の鳴る音が、辺り一帯に響いている。
けど・・・・・・アディの姿が・・・・・・見えない。
多分、周回行動に入ってるよね?
何が起きたの?
明らかに私の知っている、アディの動き。
だけど、その姿は影さえも見えない。
・・・・・・あの魔神を名乗った魔族の様に。
あの速度で、人が動けるの?
ううん、現にアディはその速度で動いてる。
もうすぐ、礫が飛んでくる。
きっと、アディの攻撃の段取りを丁寧に踏んでくるはず。
なら、礫を撃つ瞬間。アディの癖が出るはず。
狙いを付けるために、速度が落ちるあの癖が。
そこが、狙い目。
それ以降は、技に入ってしまうから、きっと止められない。
アディのことだから、私が怪我をしたら魔法も剣も捨ててしまう。
・・・・・・そんな事はさせない。
私はアディの剣が好き。
魔法を開発している時のアディが好き。
だから、自分を守りながらアディを、止める。
・・・・・・何時になっても、礫は来ない。
?
どうしたの?
周囲を見まわすと、アディがうつぶせに倒れている。
腕だけで動こうと、もがいている。
アディの両足は、曲がらない方向へと曲がっている。
私を見て、低く唸り声を上げている。
まだ、戦う気でいるの?
改めて、アディに起こった異常さを感じる。
あの動き、そして、この闘争本能。
何が起きてるの?
ちゃんと説明して欲しいけど、アディは言ってくれないだろう。
子供の頃、はっきりと言われたっけ。
『魔法に関しては、言えないこともある』だけど『一緒にいて欲しい』
その言葉だけで、私は今ここにいる。
幼い私を救ってくれた、英雄が望んだ事。
私と一緒にいたい。
そう願ってくれた秘密主義の英雄、私の大切な人。
今はおやすみなさい。




