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88話

 村に戻り、宿として村長と名乗る男性の家に厄介になる。

雪山の下山する事自体が、無謀なのに、町まで強行するほど命知らずではない。

今は、村の雑用を請け負いながら、雪が少なくなる時を待っている。


「で、業火の砦ってどこなの?」

一抹の不安を抱えながらも、一先ず原初の足跡を追う。

業火の砦・・・・・・これは、恐らく原初が火を放った砦のことだろう。

子供の頃読み聞かされた、幼い俺が魔法の存在を知ることになった、魔法への憧れを抱いた、原初の魔法使いの功績。

「何せ1000年も前だ、残っているかも分からないな」

ラインハルトも、首を振る。

まぁ、そうだよな。

そんなに、ホイホイ見つかって、たまるかってことだよな。


「何だ? お前さんら、魔導の勇者さんの砦にもいくのか?」

「ええ、御存じなんですか?」

「ご存じも何もほれ、あそこだぁ」

指を刺された方角を見る。

木々で覆われて、何を指しているのかは、見当がつかない。

「どこですか?」

「ああ、一寸来い」

そう言われて、物見櫓の上に上がっていく。

視界から、木々が無くなり雪化粧がこの山の周囲だけなのが、よくわかる。

「ほれ、あれだ」

そう言って、村長が指を刺す方を見る。

山から少し離れた所に、放置されているであろう、瓦礫が見える。


 いやいや、勇者の所縁の地だよ?

幾ら、1000年前とは言え、あれはないよな?

さて、どれだ?

「ほれあそこの、潰れた砦、あれが魔導の勇者さんが潰した砦だぁ」


・・・・・・。

やりすぎ。

煤けた砦を想像していたのに、潰した?

何故? そこまでやらなくてもいいだろ?

「流石魔法使い、原初も大概変な人だったのかもな?」

「魔法使いで、一括りにしないでもらえる?」

「ああ、原初に失礼だよな?」

ラインハルト、コイツは、殴りたい。

いや、違う。

「近すぎるだろう! これ」

砦の残骸は、目と鼻の先にあった。

一日で、十分に往復できる距離。

近いのはありがたいんだけど、勇者と神殿で出会った原初が、この距離で何があったら、あんな惨事を引き起こせるのか?

・・・・・・きっと、治安が悪かったんだな、うん、そうに違いない。

「じゃぁ、行ってみようか」

「そうだな」


 昼頃になり、砦の跡についた。

帰りは、夜中になりそうなので、ここで一泊してから朝帰る予定になった。

「それにしても、それなりにデカいな」

「そうだな」

見上げた瓦礫の多さに、これが城の跡と言われても信じ込んでしまいそうになる。

これのどこかに、手掛かりが・・・・・・・。


恐らく、また隠し部屋なんだろう。

それなら、馬鹿正直に探し回る必要もない。

3属性合成の魔法を使用する。

前回は、気が付かなかったけど、生物の探知は難しいみたいだな。

近くにいるラインハルト達が、認識できない。

さらに、知覚が広がるせいか、視力も一瞬機能を停止するみたいだ。

それだけ、膨大な情報を処理しているってことか。

・・・・・・あった!


 あったけど、そこにはどう除去すれば、安全なのか分からないほどの瓦礫の山がある。

爆裂魔法が有効か?

いや、経験則では無理だと思う。

炎で瓦礫が溶ける位、燃やすか?

出来なくはないけど、燃やす時間と冷えるまでの時間が、どれ位になるかな?

早く、確実に安全に取れる手段は、今はない。

なら、手段を創るしかないじゃないか。

そう、3属性を合成できるなら、もっと破壊力のある掛け合わせがあるはず。

炎系から行くか?


「アディ、これどうするの?」

瓦礫を指して、尋ねてくるカチヤ。

「待ってて、今方法を創るから」

火と風と水。

単独でも、それぞれの合成でも攻撃力はかなり高い属性たちだ。

掛け合わせれば、それなりの破壊力になるだろう。

合成段階でも、凄まじい力を内包している。

これは、とんでもない魔法が出来そうだ。


 合成し終わった魔力の塊が、今俺の手の中にある。

この魔力の塊に込められている、攻撃性。

今までの魔法とは、比べようもないほど高い。

これは、またしても禁断の魔法を開発してしまったのかもしれない。

危険を感じるが、魔力の塊を瓦礫に向かって射出する。

どうだ?


 射出された魔力は、瓦礫に溶け込み消失してしまった。

・・・・・・? あれ?

「何だ? アドルフ、何も起きないじゃないか?」

ラインハルトが、瓦礫の様子を確認しに行くようだ。

いや、そんな訳はない。

あの攻撃性が、何も起こさないだと?

その方が不自然だ。

「ラインハルト、一寸下がろうか?」

「はぁ?」

そう言って、ラインハルトが俺の方を振り返る。

勿論足元待っている。


 嫌な予感がする。

何故って、未だあの魔力は、何かに作用している。

そう感じるんだ。

未だに、俺の魔力は俺の魔力として、存在している。

そう、足跡(シュプール)を発現させたような、魔力と自分が繫がっている感覚。

だけれども、こちらの制御を受け付けないような、俺自身と魔力が反発しているような魔力に対する不信感を、感じている。


 ヤバイな、久々にヤバイ魔法を創ってしまったぞ。

「ラインハルト、今すぐ全力で、土の盾を展開できるだけ展開しろ俺もその中に壁を創るから・・・・・・」

「何言って・・・・・・」

「早く!!!!」

今使えるだけの魔素を使い、土のドームを創る。

視界にさえぎられているが、ラインハルトもドームの外に、巨大な盾を創っているだろう。

ドームが完成すると同時に、外から途轍もない大きな音と、揺れが襲う。


 一瞬の揺れを体感し、土のドームの大半が押し潰される。

天井が、均等に凹むのが見えた。

その後、飛来した物で、完全にドームの前方が崩れる。

勿論、揺れも飛来物のせいだ。

半壊したドームを崩し、目の前を伺う。

地面に数十センチの土が、盛り上がった場所がある。

恐らく、ラインハルトの盾の跡か?

そこより先、そこには今まであったはずの、瓦礫は一切ない。

辛うじて、基礎見えることで、ここに建物があったと言うことが分かる。


 地面には抉れてはいないが、大きな物を引きずった跡が見える。

ある一点を中心に、放射状に弾き飛ばされたようだ。

爆発? いや、それにしては、爆心地に損傷が少ない。

何が起きた?

呆然と見ていた、仲間たちを置き去りにして、吹き飛んだ瓦礫を確認に行く。

瓦礫の量が少ないけど、そんなに遠くに飛ばすほどの威力なのか?

やはり、燃焼した後は、見受けられない。

ならば、爆発以外の力で、弾き飛ばされたのか?


 中心地も確認すると、やはり地面に燃焼したような痕跡はない。

代わりに、2メートル四方の円状に、窪みが出来ている。

瓦礫と一緒に弾き飛ばされたのか?

それにしては、そこ以外の土地と比べて、固いし、雪で濡れているがぬかるんではいない。

何が起きたのだろう?

使ったのは火と、風、水だ。

水蒸気爆発か? 可能性としてはあり得るかもしれない。

だけれど、ドームに掛かって衝撃を考えると、爆破とは違うような気がする。

盾があったにも関わらず、均等に衝撃が伝わるだろうか?


 ラインハルトに確認すると、盾はかなり大きなものにしたらしい。

俺の創ったドームよりも背は高くできたようだ。

周囲に生えている草木を確認しても、爆発で曲がったようにも見えるが、より強い力で押しつぶされた、そう表現したほうがしっくりくる形で曲がっている。

漫画や物語であれば、重力と考えたい。

しかし、物が飛散することは無いはずだ。


やはり、もう一度使うか・・・・・・。

使った魔法が分からない、これほど魔法使いに恥ずかしいことが他にあろうか? いや、無い。

ならば、仕方がないじゃないか。

ラインハルトにもう一度、今度は風の盾を創ってもらい、自分でも風を降下させておく。

その向こう側に、問題の魔法を撃ちだす。


 ゆっくりと射出される魔法。

球状を保ちながら、指定した空間まで飛んでいく。

到達すると、中空に留まっている。

そろそろか?

未だ、発現しない魔法。

禍々しく、脈動しているかのようだ。


 あ、くる。

そう感じると、魔法は効果を発現する。

拳大の魔力は、瞬間的に収縮し、周囲の雪を飲みこみ、急速に膨張する。

地面を押し固め、飲み込まれようと動いた雪を弾き飛ばし、一息で10メートル程度の球体を創る。

真黒な球体、その周囲にあった空気を含むあらゆる物が俺達を守る盾にぶつかる。


 ものの数秒存在した球体。

それが消えると、周囲の空気が空白地帯に流れ込むかのように、雪煙を上げて風を巻き起こす。

これをなんと説明したら良いのだろう?

一瞬圧縮したと思ったら、外に向けて力が働く。

爆発の過程のない爆発と言えばいいのか。

それとも斥力だけを増幅させる魔法だろうか?

どっちにしろ、この魔法は危険すぎる。

準備段階が多いのと、指向性を持たせることが出来ないこと。

要するに、コントロールが出来ない魔法と言うことだ。


 まずい魔法を開発してしまったな。

制御できない魔法を、普及出来るか?

いや、そんな無責任なことは出来ない。

これは、魔法開発狂の俺でもわかる。

完全に禁忌魔法だな。


(・・・・・・いや、でも訓練次第で・・・・・・)

「訓練なんかさせられるかぁー!!」

ラインハルトは何時からそこに居たのだろう?

俺が小声で呟いていたのにも関わらず、俺の後頭部を小突いてきた。

「やっぱり、駄目?」

ラインハルトが後ろを指さした。

そこには、ラインハルトよりも恐ろしい形相のカチヤ、クラウディアが立っていた。


 ですよねー。

知ってた、知ってた。

これは大丈夫、一人では実験もできないから。

本当に大丈夫、やらない。

両手を上げて、そんな意志はないと伝える。

形相は変わらず、宥めるのに小一時間言い訳をする羽目になった。


 そんなおっかない顔しなくても、やりませんって。

フリじゃなく、本当にやりません。

本当ですよ?


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