87話
この地下室から、見つけたナイフ。
一体どんな秘密が、有るのだろうか?
「そんなことより、アドルフ」
「ん? なんだ? ラインハルト」
「お前、探索中に歴史的建造物がどうとか、盗掘が云々とか言ってなかったか?」
「ああ、言ってたかな?」
「地下室見つけたとき、どうしたって?」
「床を爆破したけど?」
「自分は良いのに、他人は駄目なんだ?」
「・・・・・・爆破してない」
「しただろ? 明らかに音したし、さっき自分で自白してるし」
「・・・・・・じゃぁ、言ってない」
「いやいや、お前・・・・・・」
「そんなことより、これだよ!!」
俺は地下室で見つけてきた、ナイフを皆に見せる。
鞘に収まっていたが、その紋章を見るだに皆が息を飲む。
「おい、アドルフ、これ・・・・・・」
「片翼の、竜・・・・・・」
「ですわね」
作業していたことも忘れて、皆がナイフを覗き込む。
足跡を辿れ、勇者の言葉に誘われて訪れた神殿。
その中に隠されていた、ナイフ。
これを期待せずにいられようか、いや期待せざるを得ないだろう。
皆が目を奪われている中、俺はナイフに手を伸ばし、鞘からその刀身を抜き放つ。
淡く虹色に輝く刀身。
とても1000年近く、地下に放置されていた金属とは思えない。
なんだ? この美しさは・・・・・・。
そして、この存在感。
これが伝説の金属だと言われても、俺は信じてしまうだろう。
全く腐食しない金属。
前世でもあれば、オリハルコンやヒイイロカネなどを思い出すが実際に見たこともないし、ラノベ御用達の鑑定スキルも持ち合わせていない。
ただただ、その輝きに目を奪われる。
「ラインハルト、これ何でできてると思う?」
「見たこともないな」
「ちょっと、竜鉱に、似てる?」
カチヤはそう言うと、自慢の剣を抜き放つ。
確かに、淡い光を蓄えているその姿は、似ている。
ただ、カチヤの竜鉱の剣は、単色の輝きだが、このナイフは複数の色を含みながら輝いている。
前世でもあれば、マジョーラ・カラーとでも表現するべきか?
だが、この世界の言葉では、表現する言葉を持ち合わせてはいない。
俺とカチヤ、ラインハルトがナイフの輝きに、ため息をついていると
「これのどこが、神殺しの法なんですの?」
などと、無粋なことを言う奴がいる。
「浪漫だろ? 1000年前のナイフなんだぞ?」
「浪漫で世界は救えなくってよ? アドルフさん」
うわぁ、この現実主義者め。
・・・・・・まぁ、確かにこのナイフが、本当に神殺しの法に関連しているかは分からない。
再度ナイフを凝視する。
紋章がある、紋章の中に宝石がある。
美しい輝きを放っている。
うん、それだけだ。
え? それだけ?
「どうなんだろう? これ、当たりかな?」
ナイフを皆に回して、検分していく。
皆が首を傾げる。
「あ!」
カチヤが何かに気が付いたようだ。
「アディ、これ刃が付いてない」
そう言って、刀身に手を這わせる。
一切の傷は出来ていない。
・・・・・・思わせぶりに出てきておいて、揚句にナマクラ・・・・・・だと?
カチヤからナイフを奪い、宙に投げる。
そして、爆裂魔法を・・・・・・。
「まて、待て!! アドルフ待つんだ」
何事もなく落下してきたナイフを、キャッチする。
「なに? 何かわかった?」
「お前の短絡さ加減がな」
ラインハルトがナイフを俺から奪い、その手で弄びながら
「何も、勇者はここに来いとは言っていなかった。そうだな?」
「ああ」
確かに、足跡を辿れだから、ここを限定したことではないな。
「辿る、この言葉に答えがあるんじゃないのか?」
辿る? ここ以外にも行けってことか?
「これが、その鍵なんじゃないか?」
「カギ?」
鍵? カギ・・・?
何言ってんだ? こいつ?
「このナイフを持って、各所を目指す。そうして、そこに有る隠し部屋に入る鍵なんじゃないか?」
え~~?
そんなことある~~?
なんか、前世の某盗掘教授映画みたいな事、言いだしたけど。
そんな都合のいい話あるか?
「ライニー、流石にそれは・・・・・・」
ほら、奥さん(予定)にも、呆れられてるぞ?
大体、
「それなら、ここの隠し部屋に入るヒントがなかったじゃん? 俺の魔法が無かったら、ここで終わりだけど?」
「・・・・・・それは・・・・・・そうだな」
だろ?
無理があるって、その推理は。
「とにかく、明日また、周囲を探索するしかないだろ」
夜が明けて、短い時間だけど隠し部屋を中心に、捜索する。
昨日開発した、探索魔法も使用して捜索していく。
隠し部屋の壁には、巧妙に隠してある扉があった。
なるほど、正規のルートはこっちから入るのか。
扉の向こうは、通路になっていて、神殿の外へと続いていた。
この部屋を見つけた状況が状況だったから、通路は見落としていたようだ。
通路から扉を眺めると・・・・・・。
風化していて、読むのは難しいが、何か書いてあるのが分かる。
ん? この窪みって?
扉の仕掛け部分に、四角の大きな窪みがある。
その窪みの大きさに、心当たりが・・・・・・。
「だから言ったんだ!! この窪み、あの石板だろ?」
石板? ・・・・・・勇者の家にあった? 主にラインハルトが壊したあれか?
「ほら、間違いない! 中に文字が見えるだろ?」
ラインハルトがはしゃいでいる。
うん、確かに反転した文字らしきものが見える。
文末の文字、片翼の竜を追え。
そう見えなくもない。
「やっぱり、このナイフは鍵なんだよ!!」
え~、マジで?
かなり予定時間が過ぎてしまったが、隠し部屋を入念に調べると
次のヒントが・・・・・・あった。
『我が虹の短剣を持って、業火の砦に向かえ』
我がってことは、これをやったの、原初さんですか?
ああ、アドベンチャー好きだったのかな?
あれ? イメージと違うぞ?
もっと、苦労人なのかと想像していたけど、案外お気楽な人だった?
これ、意外とノリノリで、やってますよね?
日記は、一人称は私だったし、我とか一言も書いてなかったですもんね?
あれ? ちょっと頭が痛くなってきたな。
この人の足跡、追って大丈夫か?
流石に、山に住む人の予測は正確だった。
昼を過ぎたことに、雪がチラついてきたので下山する。
夜通し歩き、麓の村に到着する頃には、辺りは厚い雪に覆われていた。
神殿を再度捜索したい気持ちはあるが、雪解けを待っていたら次の春まで待つしかない。
納得は出来ないが、取りあえず業火の砦とやらに向かおう。
ラインハルトが、上機嫌に先を歩いているのが不愉快だけど。
まぁ、ヒント通りに行ってみよう。
今、有力な手掛かりは、これしかないのだから。




