83話
「あ゛あ゛~、寒い!」
宿で、目を覚ますとこれまでにない、寒さで目が覚める。
因みに、ラインハルトは高鼾をかいている。
しかも、掛け物の毛布を蹴り飛ばしている。
こいつは、王族の癖に野生児みたいなとこがあるよな。
毛布をにくるまり、外を眺めると、晴天にもかかわらず
周囲は霜が降りているようだ。
放射冷却現象と言うやつだろうか?
「こういう所は、変わらないんだな」
何故か、不意に感傷的になってしまった。
ふふ、らしくない。
前世の記憶は、段々と風化している気がする。
これが、転生したと言う実感なのかもしれない。
親といって思い出すのは、ヴェルマーの両親だし
故郷と言われれば、セロフィーを思い出す。
不思議なものだ。
「戦争を回避出来たら、同い年位か」
前世の享年と、並ぶには魔神を倒していないといけない.
勿論逃げる事も出来るだろう。
しかし、逃げたところで、コイツらが居なければ耐えられないんだろうな。
隣のベッドで寝返りを打つ、ラインハルトを見て、改めて決意する。
「ああ~~、久しぶりによく寝たなぁ」
ラインハルトの朝の第一声は、大抵これだ。
全く、悩みとか有るのかね?
「ラインハルト、朝飯済ませたら防寒具を買いに行こう」
「ふぁぁ~、へ? 防寒具?」
「全く、アドルフもカチヤも、寒がり過ぎだろ。お陰で、出発が2日も伸びたぞ」
「そう言うなよ、旅に使う備蓄も底が突き始めてたし、いい休養になっただろ?」
「いや、俺は寒くなかったし、1日でも早く出発したかった」
「そうですわ、寒いのなんて気の持ちようですわ」
・・・・・・。
「このデブ二人は・・・・・・」
「おい! デブって言ったか?」
「気のせいじゃない?」
「言いましたわ! 気にしてるのに」
「気のせいだよ、な? カチヤ」
「そう、気のせい」
ワイワイ言いながら、街の北の門へ向かう。
こうして、俺達は北に向けて、歩み始める。
目指す場所は、勇者と原初の魔法使いが出会ったとされる
北の神殿。
今は、訪問する者も少なく、老朽化が激しいらしい。
そこは、元々女神を祭る神殿であったが姿を消した神を奉るほど、周辺の集落は裕福ではないらしい。
そうして、次第に勇者ゆかりの地としての、意味合いが強くなった。
平和と思いこんでいる民衆が、勇者の足跡を辿るのは稀なこと、次第に寂れて行ったようだ。
周りに人が少ないなら、願ってもない状況だな。
万が一、神殺しの法があったとしたら拡散を防げるし。
何より、どこで俺達を監視している魔族が、いないとも限らない。
なら、獅子戦の後、魔族戦も考慮しなくてはならない。
なんだかんだ言って、エルに付きしたがっているであろう魔族は、9段階や10段階を使うし、誰かを守りながらの戦いを俺達は、したことが無い。
まぁ、好戦的な魔族がいなければ、それに越したことは無いけど・・・・・・。
7日も歩き続けると、そろそろ獅子がいると言う、草原に出る。
近くに姿を隠せそうな森はない。
まして、冬だから草の背も高くない。
やや丘のようになっている場所に、陣を張る。
探索魔法を掛けるが・・・・・・。
ふむ、近くには居ないようだな。
ただ、広い草原に他の獣が一匹もいないのは明らかに不自然だ。
獅子が脅威だと、この状況が証明しているようだ。
さて・・・・・・と
「じゃぁ、予定通り」
「ああ、野営だな」
草原に降りて、土魔法の重ね掛けを行い簡素な建物を創る。
そして、今日の移動は、終わり!!
さて、メシ! メシ!
◇ ◇ ◇
霧の立ち込める闇夜の草原に、動く幾つかの影。
4つ脚をついた状態でも、人族の大人より遥に大きな身体。
その身体を移動させても、草原では物音ひとつしない。
彼らが、生粋の狩人だと証明しているように。
光の漏れる建物、それは今日になって突如現れた獲物を囲う檻のようなもの。
霧の中でも、その檻を見逃しはしない。
草原の狩人たちは、ゆっくりとその檻を取り囲み始める。
先頭にいた5匹が、壁を突き破り建物に侵入する。
侵入した5匹が、仲間達の視界から姿を消す。
周囲にいた6匹は、後続に警戒の声を伝える。
しかし、6匹の視界に映ったのは目映い光と、そこに倒れる後続の姿。
本能的に散り散りに、走り出す6匹。
周囲に木霊する、仲間達の断末魔。
6匹は、痛感したことだろう。
自分たちよりも、優れた狩人を襲った・・・・・・いや、誘い込まれたことに。
少しでも、遠くへ。
そんな、生存本能から来る願いは儚く散る。
元狩人の6匹の脚に、意識を持った草の蔓が巻き付く。
速度を失った、その体は地面に向かって引き付けられる。
身動きの取れない眼が、霧の中動く影を捉える。
無駄と知りながらも、威嚇せざるを得ない。
闘志ではなく、恐怖から来る逃避だから。
その眼に映る最期の光景が、白刃であることを認識してしまったから・・・・・・。
・・・・・・なんてな。
中々良く書けてるんじゃない?
「うわぁ、ヒドイ 30点」
「ちょ! 覗くな、ラインハルト!」
「文才無いなぁ~」
「じゃ、お前も書いてみろよ!」
「ふっふっふ、家庭教師達に神童、天才と呼ばれた俺の才能に、勝負しようってことか? 止めとけ、泣きを見るだけだぞ?」
「何を~!」
「二人とも、箱詰め、手伝って」
「そうですわ、遊んでいないでください。」
「だって?」
「じゃぁ、勝負は、セロフィーに帰ってからだ」
まぁ、初の霧の実戦投入としては、上出来かな?
建築魔法も、トラップとして使えるし、流石の中級魔法と言った所かな?
あ、遊びにノート使ったら、残り枚数が心許ないな。
次の町に、ノート売ってたらいいけど・・・・・・有るかなぁ?




