82話
「何で、どの国も竜を解体してくれないんだ? あんなの只の、デカいトカゲじゃないか。」
ラインハルトは城を出たとたんに、愚痴を言い始めた。
分からななくもないが、あれをトカゲと称するのは如何なものだろうか?
帰国しても、暫くは箱の中で死蔵ってことになりそうだ。
それよりも、ここから北に行くなら
「獅子って、やっぱり群れで行動するんだよな?」
一応、確認する必要があるだろう。
前世の記憶だと、雄一匹に雌数頭のハーレムを形成していたはず。
同じ認識で良いのか?
何せ魔物だからな。
「ああ、そう聞いているぞ?」
「え? 雄が単独で雌の群れを巡回するって、聞きましたわ」
「番で、行動するって聞いたけど?」
はい、情報が錯綜しています。
魔物の場合は、どれが正解なんだ?
何せ、山猫が野良猫と群れを作る世界だ。
野生のライガーが、群れを作っていても不思議ではないんだ。
あ! そうだ。
「ラインハルト、バルドゥル様は情報持ってないかな?」
「お前は、冒険者同士なのに情報を融通してくれる分けないだろ?」
◇ ◇ ◇
「あぁ、お前達は北に行くんだ? 俺達は東に行くことにしたから金貨40で、情報売ってもいいぜ?」
ほら、思った通り第一は、第三に甘い。
「お! アドルフ、お前今、兄は弟に甘いって思っただろ?」
「いえ! そのようなことは」
何で分かるんだ??
「何で? そう思ったな? ふふふ良いだろう、お前らにラインハルトより弱い俺が、何故成人の儀を成功させたのか教えてやろう」
唐突だな。
まぁ、だけど興味はある。
父上も参加していた、第1王子の成人の儀。
ラインハルトと同じぐらい、人気の有った王子の成人の儀が何で、成功したのか?
ヘルマン伯爵も不思議がっていたし。
今後の王族を逃がさないために、是非聞いておこう。
「ま、反王族派の居る前で、全部言う訳にもいかないから触りだけだけど、俺は、相手の考えを読むことに長けていたんだ。だから、兵士たちを誘導するのも簡単だった訳」
何それ?
超能力?
いや、魔法のある世界だ。
超能力があっても不思議じゃない・・・・・・はずないだろ!
「別に特別なことじゃない、訓練でどうにかなるもんだ。見当つくか?」
うう、手品のミスディレクション見たいなものか?
正直、苦手な分野だ。
知識も持っていない。
「まぁ、今後のために良く考えてみろ?」
そんな事を言われた後で、考えろと言われてもそれすらも、誘導でないかと思ってしまう。
いっそ、超能力とあきらめた方が、良いのか?
「後、お前らが抱えてる、箱の中のそれな? 俺らのパーティーで、どうにかなりそうだぞ」
「本当ですか? 兄上!」
「ああ、以前鍛冶場で働いていたこともあってなその伝手を使えば、俺達でも解体もできそうだ」
「ありがとうございます! 兄上」
いやいやいや、何故、知ってる?
竜を持ってることなんて、一切話していないぞ?
「アドルフ、冒険者の情報網を舐めていちゃ、駄目だぞ? 情報は生命線なんだ、使い方によっては一軍にも匹敵するからな」
怖!!
何この人。
情報の取り扱いに関しては、時代が違うじゃん。
数世代先行ってるよ。
やっぱり、出奔させたらダメな人だったな。
不意にポンと、肩に手を置かれ
「猟場荒らしの件は、ギルドには黙っていてやるからラインハルトの子供、2人は見逃せよ?」
そう、小声で囁かれた。
腐食魔法の実験も、ご存知でしたか。
「・・・・・・はい」
これは、後でヘルマン伯爵に怒られるしかなさそうだ。
くそ、ラインハルトには過少報告していたのにそれが仇になるとは。
この人には、逆らえないな。
そう思えば、この人が出奔したのは俺にとっては、僥倖だったか。
バルドゥル様に貰った情報は、以下の通り。
1つ、獅子は群れを有するが、1つとは限らない。
力を持った雄が、複数の群れ・・・・・・と言うか
ハーレムを行ったり来たりするそうだ。
2つ、今回の獅子は、若いこともあって大きなハーレムは持っていない。
巨大なハーレムを持っている可能性もあるが現時点では確認されていない。
3つ、獅子は雌が主目標ではない。
何より、冒険者が気にするのは、その値段だ。
やはり、鬣を持つ獅子が値段が高い。
初見でも、その鬣を見れば雄の力量が分かるらしい。
しかし、優秀な雄は危機管理もできるため、群れを分けて
自分の子が絶えないように、管理しているらしい。
今回の若い獅子は、15匹の雌を侍らせているようで
あと数年で、ハーレムを分ける時期に来ているらしい。
なんて、うらやま・・・・・・もとい、危険な状態なんだろう。
1匹1匹は、虎と同等位の危険度らしいがそれが今回は、16匹の群れだ。
単独でも手ごわい相手なのに、連携もしてくるだろう。
でも、原初の魔法使いの足跡を辿る為には、討伐しなくては先に進めない。
回避できるかもしれない。
けど、後ろから襲われたら、幾らなんでも無事では済まないだろう。
なので、今回は討伐してから、先を進むことになった。
「まぁ、気負付けて行けよ」
「はい!兄上もお気を付けて」
「ああ、・・・・・・あ、そうそう、アドルフ」
「はい、何でしょう?」
今度は何を言われるのか・・・・・・。
「お前は、いい加減装備を整えるように、子供服を何時まで来ているつもりだ? 装備に金を掛けるのも、貴族の嗜みだぞ」
え? それあなたが言うんですか?
いや、正論かもしれないけど。
貴族が嫌で、出てった人が嗜みに付いて言いますか?
けど、まぁ。
「はい、分かりましたこの旅が終わり次第、誂えます」
「よし! では良い旅を」
そう言って、バルドゥル様は街の人込みに消えていった。
なんか、・・・・・・疲れたなぁ~。
それにしても新しい鎧か、今のは今ので、愛着もあるんだけど
ああ言ってくるってことは、あの人のことだ。
他所で俺達に関して良くない話を聞いたんだな。
他国に行く機会も、ってここも他国だけど。
そう言った場所には、相応しい格好があるって意味だろう。
どうせ、竜が処分できれば、それなりの金も入る。
パーティーメンバー全員で、それなりの服を調達しよう。
まぁ、それも今回の旅が、一段落してからだ。
獅子狩りか・・・・・・気合を入れ直さないと。




