80話
客人と、言いながらも尾行を付ける。
まぁ、それは外交としては、正しいのだろう。
だけれども、尾行を付けられる側としては気分がいいものではない。
・・・・・・たとえ、原因が俺にあるとしてもだ。
そんな訳で、早々に神聖国スクロースを、後にしていた。
勇者の生家には、見られてまずいものは正直なかったのだが。
俺が魔法を使用した痕跡はある。
そして、あの石板をスクロース側が、見つけていないと言う確証もない。
それを勘繰られて、捕まる可能性もあり、今は速さが肝要と馬車を使用し、出国した。
勿論、南のトムーギ側には行かないで、東側から出国する。
商人の国アスファムを、経由し竜の聖地を超えて帰国する予定だ。
出国するにあたって、法王聖下達には、非常に心苦しいが、木竜に会いに行く。
そう言った名目で、退散してきた。
訝しんでいたけど、俺達を止めなかったのは何か思うことがあるのかもしれない。
或いは、俺達の考えすぎなのかもしれない。
まぁ、ラインハルトの重い腰を上げさせる良い口実になったのは、事実だ。
このアスファムと言う国は、他と変わらず王政を敷いているのだが何よりも、貿易を尊重している国で
セロフィーが、冒険者を優遇しているのに対して商人、特に大きな商家を優遇している国だ。
大きな商家が、国にあると言うことは、他国との交易だけではなく他国の情報も手に入ると言うこと、何を欲しているから国の情勢がどうなっている。
と、情報戦と言う戦を常にしている国と言うことだ。
ラインハルトにも、なるべく魔法使いと言うことは公言しないように、厳しく言い含められた。
まぁ、魔法行使願を見せているのだから、使おうが使うまいがアスファムには、ばれると思うんだけど。
用心はするにこしたことが無い。
と、言うことらしい。
入国して、数日後。
「アドルフ、気が付いていないかもしれないがつけられているからな。」
いやいや、幾ら俺がヘッポコでも、これは分かるわい。
正確に言えば、入国直後から俺達には、監視が付いている。
魔法使いに、どんな意味であれ、執着しているスクロースから、件の魔法使いが入国してくる。
異常事態と感じても、何ら不思議ではない。
まぁ、俺は気にせず魔法を使ってますけど。
何故なら、もうセロフィーの王太子と魔法使いが共に行動しているのは、数年前から公表している事実だし。
ラインハルトの存在を、情報戦に長けていると称される国が、知らないわけがない。
ならば、自分の行動を制限して、危険を冒すなら全力で行動した方がいい。
そう結論付けたからだ。
ラインハルトは、納得いかない顔をしていたが女性陣も俺に、賛成してくれていた。
もう一つ、魔法を使わなければ、いけない理由もあった。
この国には、大型の魔物が多いからだ。
この国でも、当然冒険者は居る。
しかし、商人が多いこの国。
冒険者の仕事は、商隊の警護が主だ。
討伐しなくても、撃退すればいい。
この国にも、軍はあるのだが、街道さえ守ることが出来ればいい。
なので、積極的な狩猟は行われることが少なくセロフィーから、逃げだした大型種や、元からいる
大型種が、多数存在している。
数の増減は、自然に任せているような状態なので路銀の補充には、事欠かないが手抜きをしているほど、余裕もない。
なので、魔法は監視の目も構わず使用し続けている。
監視者を引き連れながら、現在アスファムの王都を目指して歩いている。
監視を付ける位なら、王都までの馬車を手配してくれる方が
ありがたいのだけれど、そこは何か思惑があるらしい。
全行程、徒歩とは、随分久しぶりな気がする。
・・・・・・いや、初めてか?
ともあれ、時間を掛けながら旅をするのも悪い話ではない。
何故なら、魔法の開発に使える時間が増えるからだ。
アスファムに、入国してから属性の重ね掛けを、重点的に検証している。
これまで分かっていたのは、風の二重掛けと、炎の二重掛けだ。
風は、魔素創造魔法の併用が、必要だったけど炎は、そのままでも、十分に使うことが出来る。
そして、今回新たに分かった水。
俺的にはいいと思うんだけど、仲間には不評な魔法。
周囲に、霧を発生させ、尚且つ探索魔法が掛かると言う優れモノだ。
更に、探索魔法で大きな欠点となっていた、相手に探索魔法が掛けられたのが、分かると言う欠点がない事。
しかし、目視して相手と戦う仲間たちは視界が悪くなると言う理由で、この魔法を嫌っている。
いいと思うんだけどなぁ~。
残念。
代わりに好評な魔法もできた。
木属性の重ね掛けだ。
これまで、木属性は治癒魔法だったが重ねると、草木を操ることが出来る。
一度、ラインハルトが油断から深い手傷を負ってしまった時、高度な治癒魔法をと思い重ね掛けしてみたところ地面にあった草が、ラインハルトを拘束してしまい大変なことになった。
獣に掛けてみたところ、中々高度な拘束で完全に動きを殺すことが出来て、簡単に狩ることが出来た。
また、使用感も大変良い。
これまでは、基本飛ばすことがメインだったがこれは、俺の体が地面に接していれば任意の場所に、作用させることが出来る。
戦闘自体に、幅を持たせることが出来るようになった。
これで、集団を拘束できるようになったら俺の技の一部が、意味を無くすことになるのだが・・・・・・いや、今は魔法の発展を喜ぶべきだろう。
土属性の重ね掛けははっきり言って、戦闘向きではない。
要は、建築魔法だ。
旅をする分には、大変役に立つ。
家を旅先で、簡単に作ることが出来る。
即ち、夜は夜警をせずに済み。
十分な睡眠を取ることが出来る。
そこそこの大型種なら、破ることが出来ない壁が出来る。
この魔法が出来たおかげで、監視の人を意図せず振りきることが出来た。
睡眠って、重要なんだな。
そう、気付かされる魔法だった。
まぁ、土属性の重ね掛けも完全に戦闘に仕えないわけではない。
こちらは、不評だけど。
先ず、土で囲いを作りそこに炎を出す。
そうすると、簡易的な炉ができるわけだが中の獣は、骨も残らない完全な灰になる。
そうすると、売れる物もなく揚げ句、魔石も灰にしてしまう。
狩猟にもならない、只の排除行為だ。
しかも、炉になっているから冷却まで時間が掛かる。
放置して進むこともできず、余計な時間が浪費されるのも不評の原因になっている。
まぁ、色々使って分かったことは本来の属性魔法より、操作性は全体的に上がっている。
一部魔法を除くと、だが・・・・・・。
そんな久しぶりに、俺にとっては有意義な時間を使って、旅をしていると目的のアスファムの王都に到着する。
さて、この街では何事もなければいいんだけど、そうもいかないよなぁ~。




