73話
「で? あれは何なんですか?」
一先ず、騎士団と和解した俺は法王聖下と騎士団長を名乗る人物と相対していた。
あの騒ぎでも動じず、部屋で俺を待っていたラインハルト達も合流している。
「あれは悪食と言いましてな。」
「別名、女神の祝福ですな。」
「これ! チャールズ!」
「あ、・・・・・・申し訳ありません。聖下。」
何て?
「女神の・・・・・・祝福ですか?」
名前と姿が、全く一致してない。
・・・・・・けど、あの神様の関係者なら
やるかもなぁ~、魔神を自称しちゃう奴もいる位だもの。
俺の投げた疑問に、法王聖下はバツが悪そうに答え始めた。
「まぁ、何と言いましょうか、先代の魔導の勇者様が居られた頃の話なんですが・・・・・・」
勇者一行が、魔王討伐のため旅立ちを決めた頃、地上に降臨した母神でもある女神。
詳しい理由は今では分からないが、彼女は魔王討伐を止めるように、説得に来たと言う。
しかし、魔王による侵略は、激しさを増し人族の生存圏が、大きく後退していることもあり勇者一行は、女神の願いを聞き入れなかった。
それでも、何度も何度も、女神は説得を試みたが勇者一行は歩みを止めることはなかった。
ある時、勇者一行が魔族と戦いを繰り広げていると女神が双方を説得するため、戦場に現れた。
そして、どちらかは分からないが、女神の体を傷つけてしまうそうして、魔族と人族の愚かさに絶望した女神は呪いと言う、祝福を世界に生み出した。
『愚かな人と魔族よ、我が祝福で死に絶えるがいい』
そう言い残し、女神はこの世界から姿を消した。
そんな、話を聞かされた。
何とも後味の悪い、話だが・・・・・・。
「女神を傷つけることが出来たんですか?」
この話は、受け流すことが出来ない。
「どうやったのかは、どの文献にも見当たりませんでしたがな。」
法王聖下は、申し訳なさそうに呟いた。
もちろん、謁見時に魔神のことも話しているし、神殺しを目標としていることも話した。
現状は、芳しくないことも伝えている。
それを気にしてくれているのだろう。
しかし、この話が本当なら、原初の魔法使いの頃には神を攻撃できる手段があったと言うことになる。
「この話だけでも、一歩前進です、法王聖下。」
「そう言ってもらえると、有り難い。」
「それで、あの気色の悪いのは、どんなものなんですか?」
「そうですな、何でも食べる。それこそ、共食いだろうが排泄物だろうが目に見えるもの何でも食べるのです。故に悪食と呼んでいるのです。」
え? それってゴキ・・・・・・黒い悪魔ですか?
「それに魔物なんですが、厄介なことに異種間での繁殖も可能です。」
チャールズと呼ばれた騎士団長も苦い顔で衝撃の事実を伝えてくる。
気持ち悪い、・・・・・・吐いてきていいですか?
「その上、母体となった生物は、生まれた幼体に喰われてしまうのです」
もう、良いかな。
聞きたくないや。
クラウディアはもうすでに、ノックアウトされている。
「まぁ、繁殖期があるので警戒しやすいのですが恐ろしいことに、対象が生きていなくても、繁しょ・・・・・・」
「もういいです! 分かりました。」
「そのような訳で、この国の最大課題が悪食の殲滅なのです。」
騎士団長、絶対俺に嫌がらせしてるよな?
部下がやられて、内心面白くなかったのか?
それとも俺、嫌そうな表情してないのか?
「まぁ、全て父神様によって結界内に閉じ込められているんですがね。基本は安全なのです。たまに、ああやって結界外に出てくる奴もいるので騎士団は常に警戒しているのです。」
法王聖下も、俺達の反応面白がってる?
まぁ、たまには、はぐれ竜も退治しますけどなんて言ってるけど、軽くない?
それにしても、あんな化け物がいるんじゃ、いずれ人族滅びちゃうんじゃ・・・・・・?
俺なら、人込みに紛れてても見つけられるんだよ・・・・・・な。
今思い出しても、正直また戦うのが躊躇われる。
「因みに、結界の外に出てくる頻度ってどの位なんですか?」
「それが、そんなに多くは無いのです。」
「前回は、5年前だったかの? チャールズ?」
「そうですね、もうそんなになりますか。繁殖期に重なって、街にかなりの被害がありましたね。」
放置できるかどうか、微妙な所だな。
けど、被害は確実にあるんだな。
「あの、そのような話初めて伺いましたが?」
沈黙していたラインハルトが、やっと口を開く。
「それもそのはず、良いですかなラインハルト殿下。他国・・・・・・いや、この都市以外に悪食の話は伝わっておらんのです。」
「何故?」
ラインハルトの疑問は最もだ。
この情報の秘匿は危険すぎる。
やっぱり、この国・・・・・・。
「それは、この都市周辺にも結界が張られているせいですな。悪食は、こちらの結界を抜けることは出来無いのです。故に、この『神々に愛された土地』以外に悪食が出没することはあり得ないのです。なので、他国に知らせる必要はなかった、知らせるつもりがなかったのです。悪食の件は、教会の恥部でもあるのですから。」
え? それでいいの?
「これは、教会の贖罪なのです。」
贖・・・・・・罪?
「かの女神も神の一員、それを害した要因に教会関係者がいた。その赦しを乞うために、教会として、神に願い出たことなのです。」
「信徒の罪は教会の罪。悪食の殲滅は、我ら教会にに課せられた試練なのです。魔導の勇者様御一行も、どうかこの件は内密にお願いいたします。」
手伝った方が良いのかな?
「手助けは?」
「無用です。」
はぁ・・・・・・?
あれ? いいの?
「では、この件はこれで。それで、御一行が求める神殺しの情報は有りませんが、魔族に関する情報はこの地に有りますのでゆっくりと探していってください。この度は、御迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした。」
法王聖下と騎士団長は深々と頭を下げて、退室していった。
モヤッとするけど、無理に手伝うことは教会や、騎士団の矜持に係わるようで、出来そうにない。
寧ろ、俺が騎士団員を傷つけなくて良かった。
ん?
被害者なのに、なんで申し訳なく思ってるんだろう?
うーん?
まぁ、偶然見つけたらしょうがないよな。
それくらいの認識にしておくか。
何にせよ、やっと魔族の情報が手に入るみたいだ。
何で、魔族にだけ9・10段階の身体強化魔法があるのか?
そもそも、魔族がいる訳は?
その理由を知ることが出来るんだ。
この情報が有用である事を、願うしかない。




