70話
おお、何と言うか。
凄いところに来てしまった。
見上げるほどに高い城と言うか、神殿と言うか。
その二つをごちゃ混ぜにして、五月蠅くした建物。
この国、神聖国スクロースの中心。
教会本部にして、法王の住まう地。
アセルス城を見上げていた。
周辺国では随一の宗教国。
ここを納める法も教会の経典が引用されている。
そんな国の中心部に案内をされた。
城の中に入ると、荘厳さの欠片もなく成金趣味を何百年も続けた結果非常に目に五月蠅くなったような内装をしていた。
ああ、この国には住めないな俺。
通された部屋の窓から外を見て、そう思った。
目の前に広がる風景は、左右で明らかな貧富の差が見て取れる。
首都にスラムを有しているのに、何でこんなキンキラとした内装になるのだろう。
前世の感覚では、宗教イコール清貧と言うイメージがあったけど・・・・・・そうでもないな。
一部宗教は絢爛さを誇っているのもあった。
やっぱり、良いイメージないな。
宗教って。
別の意味でため息をついているとクラウディアもため息をついている。
「どうしたの?」
「あれ、見てください。」
指さす方を見てみると、立派な弓が飾られている。
「なにあれ?」
「過去の英雄様の弓なんですって」
「はぁ。」
「それをあんな風に飾り付けるなんて」
セロフィー人の多くは何らかの武芸を習っている。
そんな風土のため、武器に対する思い入れは強い。
曰く武器は使ってこその武器。
武器は装飾品ではない、そう考える人が多い。
俺もその意見に賛成だ。
どんなものであれ、使われない武具は死んでいるも同然だ。
・・・・・・戦斧、早く譲る相手見つけないとな。
他にもこの部屋までの通路には、色々な武具が飾ってあった。
要するに、過去の偉人の紹介なんだろうけど見ていて痛々しさしかなかった。
飾ってあるだけで、まともに手入れされているか怪しい武具の数々。
中には明らかに、実戦に耐えられない装飾が施された武具も数多く見受けられた。
まぁ、他国のことだから、俺には直接関係してないけど。
そう考えていると、部屋の扉がノックされる。
入ってきた女の人の姿を見ると・・・・・・派手だ。
それはもう、これでもかと言った派手さだ。
・・・・・・こんなところに革鎧を着こんで訪問する俺達も俺達だけど。
そこらの王侯貴族より王侯貴族らしい格好をしている。
「ご用意が整いましたので、こちらにどうぞ。」
恭しく頭を下げる女性。
「分かりました。」
返事をする王侯貴族に見えない王太子。
果たしてどっちが正しい姿なのだろうか?
考えるのはよそう。アホらしい。
案内に従い通された広間。
謁見の間なんだろうか? やけに広い。
フロアぶち抜いて使っているのか?
我が家が丸っと入りそうなぐらい広い。
歴史的にも古く、周辺国の国教でもある宗教の総本山、そこの王様に会う。
ラインハルトも些か緊張しているようだ。
装いとは反して、洗練された動きで頭を下げる。
俺達もそれに倣うが、不格好に映るだろう。
その証拠に雑踏に紛れ、失笑が聞こえる。
ああ、俺、この国嫌いかも。
ざわついていた周囲の音が途切れ、杖を突く音共に一人の老人が姿を現す。
この国のトップ、ステリアル法王。
長く白い髭を蓄えた、高名な魔術師にも見える。
まぁ、そんな訳無いけど。
「良くおいで下さった、ラインハルト殿下、当代の魔導の勇者様。」
その言葉に周囲がざわつく。
要らんこと言いやがって、俺は勇者じゃないし。
ラインハルトが挨拶や訪れた目的等を説明していく。
魔法行使願についても説明をする。
やけに念を押しているのが不思議だけど。
・・・・・・俺のこれまでの行動に問題があるような
そんなニュアンスも含まれている。
まだ、腐食魔法を実験したことを根に持っているらしい。
非は俺にあるのだから、仕方がないけれども。
反省を示した俺を、信じてくれてもいいと思うんだが?
「分かりました。魔導の勇者様の願いとあらばこの国は協力を惜しまない。これはこの国の国是としておる処何も心配せず、ゆるりとされるがよかろう。」
国是?
何故、そんな言葉が出てくる?
宗教国の国是か。
もう不安しかないな。
一通り説明が済んだところで法王が退室していく。
広間に集まった皆が、頭を下げて見送る。
普通の光景なんだけど、この国がやると不気味に見えるのは、俺がこの国を穿ってみているからなんだろうか?
いや、そうに違いない。
協力してくれると、言ってくれた国をあんまり不信がっていたら、失礼だよな。
俺達も退室すると、
「皆さま、こちらに。」
先ほど案内してくれた女性が控えていた。
彼女の案内で、それぞれ個室に案内される。
「じゃぁ、荷物を置いたら俺の部屋に集合してくれ。」
そう言ってラインハルトが部屋に入っていく。
皆もそれぞれの部屋に入っていく。
俺も部屋に入ろうとすると
「魔導の勇者様、こちらへ。」
?
なんだろ?
案内してくれた女性が俺を呼び止めとある部屋に案内する。
「こちらでございます。」
皆と少し離れた部屋に案内され扉を潜る。
はぁ~、これはまた・・・
豪華絢爛とはこういうことを言うのか?
まぁ、所々金をあしらっていて、見ようによっては下品だけど。
これ、どんだけ金かかってんだろ?
思わず、口を開けながら部屋を見回す。
「では、ごゆっくり。」
女性が扉を閉めるとガチャリと、音がする。
え?
慌てて扉に駆け寄りノブを回す。
ガチャガチャと音はするが回らない。
押しても引いてもびくともしない。
扉を叩いてみるが、音もしない。
扉に鉄板でも挟んでるのか?
身体強化を掛けて、扉を殴るがそれでもウンともスンとも言わない。
あれ~。
これ、閉じ込められた?
いやいや、まさか。
部屋を見て回り、窓を見るが格子が掛けられている。
何だこれ?
座敷牢か?
他に何かないかと探ってみるが何もない。
ベッドと机があるだけだ。
水差しが置いてあるけど、怖くて飲めないじゃん。
ああ、これ完全に監禁されてるわ。
何がしたいんだ、この国は?
はぁ・・・・・・
食べ物どうしよう・・・・・・。
トイレは?
皆どうしてるかな?
はぁ、これは予想してなかった。
自分で対応してもいいのかな?
どうしたらいいのかな?
もう、魔法で扉壊してもいいかな?
国際問題にならないかなぁ?
ああぁ、冷静になる前に魔法使っておくべきだった。
はぁぁぁぁ。
もう、この国嫌いだ。




