69話
お、クラウディアが戻ってきた。
さて、そろそろお話も終わるかな。
「おい、何立ち上がってるんだ? 話は終わってないぞ?」
「え? クラウディア戻ってきたよ?」
「・・・・・・チッ!」
いや、流石の俺も悪いとは思ってるよ? 一人で実験しに行ったこと。
けどさ、3時間ぶち抜きで説教ってどうなの?
捕まえた野盗何人かは、逃げだそうとしてたし。
何より見張りもなしに、2人揃って説教しなくても良いんじゃないかなぁ~って、想う訳ですよ。
まぁ、終わったことだから、もういいけどね?
クラウディアが連れてきた
町の警備隊たちは、3人だけ。
訳を聞くと、後から馬車で野盗たちを輸送するそうだ。
その準備に時間が掛かる為、先に引き継ぎの人員を寄越したと言うことらしいい。
「ところで、この後どうなるんです?」
「はい! 彼らは犯罪者なのでどこかで開拓などの労働に精を出してもらうことになると思います。」
背筋をピンと伸ばした若い警備隊員は、緊張した面持ちで応える。
なんでこんなに緊張してるんだ?
周りに比べれば、若いけど
俺達より年上だろ?
「クラウディア、身分明かした?」
「いえ、言ってませんけど?」
「やけに緊張してる人がいるんだけど・・・・・・」
「ああ、あの方は、虎殺しの英雄さんに憧れているんですって。」
虎殺しの英雄・・・・・・誰? って俺か?
視線を向けると、より背筋を伸ばそうとより緊張した直立姿勢になった。
はぁ、そんな奇特な人がいるんだ。
さっきまで説教くらってたのが英雄と呼ばれた者の末路ですけどね。
まぁ、憧れを抱いていることに託けて色々聞いてみた。
通常の野盗の対処について。
要約すると
野盗、山賊の類はサーチアンドデストロイが普通らしい。
分かっていたけど、この世界で犯罪に組した場合、人権を放棄したことと同義になるらしい。
生きて捕まった所で、死ぬまで何かしらの労働が待っている。
更生なんて優しい言葉は、存在しないらしい。
「ちなみにセロフィーではどうなるの?」
「我が国では、生きていた場合は魔属の森を開発してもらうことになるかな? まぁ、大抵はその場で・・・・・・」
ラインハルトは首に持って行った手を横に振る。
血気に逸る冒険者が多い国では、そうなるのか。
そりゃ、そうなるよな。
因みに今回の野盗たちは、懸賞金など掛けられていないため
ただ働きだ。
ラインハルトは
「トムーギに入っていたから今回みたいな対応したけど、セロフィーでは手加減するつもりはないから、アドルフもそのつもりで行動してくれよ。」
と、内心ビビッていた俺の心情を読み取っていたらしい。
でもなぁ~
相手は人だぜ?
・・・・・・これも異端なのか?
これから魔族を殺すって覚悟を持たないと
なんて言っていたのに、これは偽善なんだろうか?
悩みは尽きないな。
一先ず、トラブルは解消され旅を続けていく。
野盗の残党が報復に来ることもなく旅は順調に進んで行く。
幾つも野を超え山を越え、川を渡るが目立ったトラブルもない。
珍しく順調と言えるだろう。
何故だろう。
順調にいけばいくほど、不安になる。
この先に何があるのか? 重大なフラグを立てていないか
そんな事ばかり、考えてしまう。
どこかに魔族が潜んでいるのではないか?
強大な魔物と遭遇してしまうのではないか?
考えれば考えるほど、不安に襲われる。
ラインハルト達は、呑気に異国情緒を楽しんでいる。
俺がおかしいのか?
考えすぎなのか?
そんな不安をよそに、あっさりとスクロースとの国境に到着してしまった。
全く何にもなく、ただただあっさりと。
うん、俺がおかしかっただけみたいだな。
神聖国スクロース。
教会本部が置かれ、国の運営も教会の上層部で取り仕切っている、宗教国家だ。
国の法律よりも経典が上位に来る。
様々なものが過去に異端認定され、原初の魔法使いも一時異端認定された事がある。
そして、過去に勇者を輩出した国。
現役で魔法を使っている俺は、かなり慎重に行動しなくてはならないだろう。
何かあって、魔法が異端視されてしまっては魔法の普及を掲げている俺の目標が、潰えてしまうそんな可能性もある。
国境の審査施設で前もって持たされていた、国王陛下の親書、魔法行使願、司教の親書を
審査を担当している警備兵に渡す。
トムーギでも経験しているし、俺の行動に怪しく感じることは無いだろう。
・・・・・・俺は犯罪人か。
何もしていないのに、何でこんなに警戒しているんだろう?
馬鹿らしい。
「ほう、あなたがかの有名な魔法使い様でしたか。」
初老に掛かろうかと言う警備兵が、親書に目を通し俺を見てくる。
まぁ、当然書いてあるだろうな。
うん、トムーギとは違い、俺を馬鹿にする態度は無い。
いや、意外と好感触か?
流石に勇者の一人に数えられる魔法使いがいた国。
(晩年出奔したみたいだけど)
魔法使いを名乗っても偏見は無いのか?
もしかして意外と良い国?
これは何事もなく、疑問が解消できるのか?
この時は本気でそう思っていた。
やはり俺のいく先にはトラブルが待ち受けている。
そのことに気が付けないでいた。
トムーギと同様、馬車で首都に案内され
そこで考えもしない、トラブルが発生するのであった。




