61話
「さて、アドルフ。この惨状に付いて、話を聞かせてもらえるかな?」
寝ぼけ眼の俺を、城門の外・・・・・・昨日の焼け野原に引きずってきたラインハルト。
何だって言うんだ? こっちは、憲兵の相手を夜遅くまでしていたって言うのに。
「おい! こっちを見ろ、目を見て真実だけを話せ? いいか?」
「もー、何って、魔法の実験でしょう? それ以外に、俺がこんな暴挙に出ると思ってる?」
「思っているから、聞いている。それに実験自体が暴挙スレスレだ。この元草原に、人がいたらどうするつもりだ? って言うか、居なかっただろうな?」
「いるわけないじゃん! ちゃんと調べたよ。それに誰の実験が暴挙だ、うっかり王子。」
「ほう~、どうやって調べたんだ? 焼け野原の周りを見てみろ。背の高い草ばかりじゃないか。・・・・・・誰がうっかり王子だ?」
全く、起き抜けにこんなところまで連れて来て。
「調べられるの。森だろうが草原だろうが、朝でも夜だろうとネズミ一匹から見つけられるようになったんだ。」
「・・・・・・魔法か?」
「そう、こんな風に・・・・・・」
右手に木属性の魔力を、左手には土属性の魔力を展開する。
その状態で両手を合わせるように、2つの魔力をかけ合わせる。
2つの属性が合わさることで、魔力の質が変質する。
変質した魔力は体を通り、足から地面に抜け周囲一帯を駆け抜ける。
ラインハルトが近くにいることで一部が反響したように、返ってくる。
これが俺の唯一といってもいい、非攻撃魔法。
|探知「ラダール」、字のまま周囲を見通す。
そのためだけの魔法だ。
「何をした? なんか地面から、気味の悪い波動が上がってきたけど」
あれ?
「嘘? 感覚あった?」
「ああ。」
おっかしいなぁ~
原初の解説を思い出す限り、相手には分からないはずなのに原初が魔導の世界で、これを使う際とある野外ゲームで使っていたと、解説していた。
それは俺の知る言葉に訳すと、サバイバル・ゲームだ。
魔法を駆使して、低威力の魔法を当て合うと言う、想像するだに、非常にデンジャラスなゲームが魔導の世界にはあると言う。
そのゲームで、よく使われる手法の中にこの魔法が有ったと言う。
相手には気が付かれず、待ち伏せを察知する方法。
そう説明が書かれていたんだけど・・・・・・。
何回やっても、どれだけ離れてもラインハルトは分かると言う。
・・・・・・これは、要改良と言うことにしよう。
ちょいちょい、原初の魔法使いが使っていたと言う
魔法との差異が目に付く。
以前、木竜にも別物だと言われたけど。
真筆の手記よると、ほとんど変わらないはずなんだけどなぁ~? 中級だけは。
取りあえず、人的被害がない事を納得したラインハルトに、今後実験の際には届け出を出すように言われた。
・・・・・・どこに出せって言うのか?
ラインハルト本人にか?
・・・・・・これからは、見つからない所まで行こう。
「そう言えば、ラインハルト?」
「なんだ?」
「トムーギで貰った戦斧、あれどうする?」
賢王の戦斧。
褒美としてもらったけど、重いし俺達の誰も使わない武器。
長さもそれなりにある為、今はリーズベルト家に鍛錬用として置いてある。
国王も好きにしたらいいと、接収もしてくれない、正直扱いに困っている武器だ。
「ラインハルトの知り合いで、誰か戦斧を使っている人居ない?」
「いないな。取りあえず、リーズベルト家でいいんじゃないか?」
良いんだろうか?
まぁ、鍛錬用だとしても使ってもらえるならその方が良いかな?
・・・・・・最悪、独立した時に持って行こう。
男爵に切らないで貰えるように、後でお願いしておくか。
「これからどうするの?」
「もう用事は終わったから、好きにしていいぞ。・・・・・・開発に行くなら、一言言って行けよ?」
「行かない・・・・・・行かないよ。」
「そうか?」
今日は開発はしない。
他にやることがあるから。
ラインハルトと別れ、とある森に来ていた。
最近猫が良く出没すると言う森に。
暫く進んで行くと、いた。
猫だ。
わざと足音を立てて、近づいていく。
案の定飛びかかってくる猫を、紙一重で躱す。
最小限の動きで、躱す。
あぁ~、これは大きく動きすぎた。
防具の付けずに猫の攻撃を躱す。
視神経にだけ身体強化を掛けて、ひたすらに躱していく。
知覚スピードが上がっても、身体が付いていかない
俺は、6段階を覚えてから、そのことがどこか不安だった。
そんな訳で、こうして知覚スピードと身体能力の差異を無くす訓練をすることにした。
猫は疲れたのか次第に、動きに精彩が掛けてくる。
まぁ、こんなもんか。
猫が俺の横を通り過ぎるタイミングで炎の刃を突き立てる。
んー、速さに慣れるつもりで猫退治に来たけど。
駄目だな。
もっと速い攻撃に対応できないと。
魔神はこれの何倍も速い。
神殺しの方法がどんなものでも、視界に相手がいないんじゃ
確実に負ける。
明日は父上相手に同じことをやってみよう。
格上の相手でも、同じことが出来ないと。
いずれはリーズベルト男爵とでも同じことが出来るようにしないと。
魔神はそれよりも速いはずだから。




