60話
久しぶりのフェニルニン、あ~懐かしい空気。
行きの時はこんな面倒事を抱えての帰還になるなんて想いもしなかったけど、生まれ故郷に帰ってくるって言うのは感慨深いのもがあるなぁ。
・・・・・・1年も経ってないのになぁ~。
冬の凱旋、これで二度目になるか?
旅に行く度、冬に帰って来てたらそのうち冬将軍なんて呼ばれたりして・・・・・・。
まぁ、今回は新年までそんなに時間もないから目立ったイベントもないだろう。
門を潜ると、首都は変わった様子が無いように思える。
しばらく歩くと、市場の周囲の建物が数件真新しい気がする。
「へーここの辺、新しくなってるな。」
「ああ、お前が打ち壊した家が新しくなったんだな。」
俺が?
打ち壊した?
「・・・・・・ああ、成人の儀でな。」
「そうだよ、滅茶苦茶しやがって」
まぁ、そのおかげでお前は今回の旅に行けたわけなんだけどな、ラインハルト。
俺とヘルマン伯爵が反対派の説得に暗躍したのも知らないで。
お陰で、もう俺は反対派勢力に飲まれそうですけどね。
まぁ、言いませんけど。
城に着き、いつもの通りに謁見の間に案内される。
もう、人生で何回拝謁したんだろう。
未だに慣れないよなぁ、この空気感。
玉座に座る国王陛下、周囲を固める陛下の腹心である上級貴族。
玉座に向かい、首を垂れる。
空気には慣れないけど、動作は慣れたな。
「面を上げよ。」
「ラインハルト以下3名、只今帰還いたしました。」
「良くぞ、無事に帰還してくれた。神託はどうであった。」
「無事に。」
「皆、大儀であった。」
ワーワーと広間に歓声が広がる。
国として受けた神託。
その達成の喜びは、本来全てが神への捧げ物のはずだった。
俺達には周囲とは違い、喜びを捧げることは出来ない。
まだ、やらなくてはいけないことがあるから。
本来、やるべきでは無いアイコンタクトを国王陛下に送る。
それを察した、陛下は
「皆、静まれ。詳しくは別室で聞くこととしよう。」
腹心中の腹心である、宰相を伴に広間から立ち去る陛下。
近衛から部屋の用意が出来るまでと、謁見の間の控室に通される。
一言も発さないが、別段落ち込んでいる訳でもない。
俺達は皆、決意を決めた表情になっているはずだ。
少し経って、別室に通される。
陛下、宰相閣下の他には、ヘルマン伯爵、将軍閣下そして、御誂え向きに司教様までが勢ぞろいしていた。
「して、如何様な報告がある?」
記憶にある悪戯好きそうな顔ではなく、一国を背負う大人の顔で、出迎えられた。
ラインハルトが俺に促す。
まぁ、興味を持たれた俺が話すのが筋だろうな。
「報告いたします、神託の五色の魔物、キメラは無事討伐に成功いたしました。途中、新たな神託により同行していた魔族が突如魔神を名乗り人族に対して宣戦を布告。しかし、魔法に興味を示した魔神は戦争を回避したくば、10年内に自らを殺して見せろと、そう言い放ちました。」
ザワザワと、部屋の大人たちが隣り合った者と思い思いに話し合う。
陛下は机を爪で叩くと
「名は名乗ったか?」
「はい、しかし聞き取れるものはいませんでした。」
「ふむ、では剣は効いたか?矢は?」
「分かりませんが、少なくとも魔法は発動しませんでした。」
「な! ・・・・・・んん、そうか、ご苦労であった。」
「もう一つ、人族の危機と言うことで、トムーギ国王にも同様の報告をしております。」
一歩引いて、報告を終える。
「・・・・・・分かった、それで諸君どう考える?」
そこから2時間、たっぷりと大人たちの話し合いを聞かされる。
やれ、神託は偽物だったんじゃないか?
本当にキメラだったのか?など、色々な事を聞かれた。
突然齎された、開戦までのリミット。
これだけの少人数でこの有様だ、謁見の間で報告しなかったのは正解だったな。
一頻り意見が出きった様で、静寂が訪れる。
「さて、当事者の君たちはどう考えているのかね?」
陛下が俺の方を向き、問を投げる。
「はい! 私は10年とういう時間を使い神殺しの方法を求めてみたいと思います。」
何回も話し合った結論だ、やる以外ない。
「そうか・・・・・・司教伝承は残っているか?」
「いえ、そのような恐れ多いものは・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
「陛下、今一度木竜の下に行かせては貰えなせんか?」
「木竜・・・・・・か。」
俺達は、これまでの道中で見てきたこと、話し合ったことを伝える。
木竜が何かを知っている可能性は高い。
もし、知らなくても最初の使徒である神木で何かが分かるかもしれない。
陛下は若干渋い顔をしていたが
「それしなないか。」
と、あきらめがついたようだ。
交渉材料はこれから、考えることになりその日は解散となった。
自宅に戻り、翌日。
誰も尋ねてくる人がいなかった為、近くの平原で新しく開発した魔法の再確認をすることにした。
先ずは爆裂魔法。
未だ、俺の頭の中には爆発のメカニズムは存在しない。
では何故現象だけ発現できたのか?
それは、属性を合成したから。
土の魔法を火の魔法で変質させる。
それだけで爆発するの? と思うだろうけど爆発させるには圧縮の工程が重要だったりする。
土魔法が変質するエネルギーを、圧縮の工程で封じ込めると言うか圧縮過多とでも言う状態に持っていく。
圧縮過多といってもそこまでしないと魔法の変質するエネルギーを抑え込むことが出来ない。
実は非常にバランスが難しい魔法でもある。
その絶妙なバランスで、保たれている魔力の塊が物に当たると当たった所から当たった物の魔素を吸収し、圧縮率に不均等が生じる。
すると、圧縮が急速に解けて内包されたエネルギーが噴出して爆発に至る。
こうした長い工程を戦闘の中で行う。
そのため射出速度が単一属性に比べて遅いと言う弱点もある。
今まで魔法はなんでも押し固めて撃ちだしていた俺には持って来いの魔法だろう。
氷は水と風を合成することで水自体の温度を奪い圧縮することで氷を形成する。
火と風なら業火と呼べる炎を、水と木なら合成した際の強力なエネルギーを治癒効果へと、変質したエネルギーをどう使うかが、これらの魔法のカギになる。
原初の魔法使い曰く、合成が中級魔法になるようだ。
そう、この上に上級と特級魔法が存在するらしい。
初級は原初とは違うが、圧縮と形成。
原初は発現と・・・・・・なんだっけ?
まぁ、俺には使えないものなんだから、忘れてもいいだろう。
ふぅ、中級魔法は意外と効率が悪いようだ。
腹が減ってきた。
・・・・・・草原が焼け野原に変ってしまったしな。
そろそろ、帰るか・・・・・・。
街に戻ると、門兵の軍人さんに、うるさいから今度からはもっと離れたところでやってほしいと懇願され、翌日には焼け野原に付いて憲兵に詰問されたのは、ラインハルト達には内緒にしておこう。




