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58話

 トムーギ大図書館、ここは周辺国に比べると桁違いの本が集められている。

歴史家や、文官候補生が大挙して押し寄せる、云わば、智の聖域。

・・・・・・まぁ、金に糸目を付けないなら木竜に会いに行った方がいいんだけど。


 恐らく、今回のことを聞きだすには途轍もない金額を要求されるに違いない。

前回のように、俺が編纂中の魔法教本も進んでいない。

ならば工芸品が必要になるのだけど、工芸品を買うにもお金がいる。

核心部分を聞くには、今回の報酬を全部つぎ込んでも足らないんじゃないだろうか?

前の装飾品も立派だったしな・・・・・・。


 そんな訳で、この大図書館の自由閲覧の権利を追加報酬として頂戴したわけだ。

基本トムーギの王族か、限られた上級貴族にしか閲覧が許されていない秘蔵の図書。

そこにはトムーギの成り立ちから書かれている歴史書から、歴代王の採択した重要書類、はたまた歴代王や貴族たちの日記なんかも貯蔵されていると聞く。

・・・・・・日記かぁ、俺が死ぬときには燃えるように細工出来ないかな?

前世で言うパソコンなんかの恥部を保存されているようなもんだろう?

あ、

あ?

あああああああああああああああああああ。

前世のパソコン!!!!


 まさか、転生して14年経って思い出すなんて・・・・・・。

不意に、前世での痴態を完全消去する前にこちらに来たのを思い出す。

ああ、鬱だ。

さながら落ち込んでいる犬のような格好の俺に仲間たちが心配して近寄ってくる。

俺は君たちに心配されるような人間ではなかったよ・・・・・・。

今度神様に会ったら、駄目元でお願いしてみよう・・・


 駄目な過去を引きずりつつ、大図書館の門を潜る。

ずらりと並ぶ書架。

みっちりと詰められた、本たちが並んでいるフロアを抜けていく。

そこを抜けていくと奥に一つの扉が見えてくる。


 扉の前には屈強な警備が立っていて忍び込むのも難しそうだ。

しかし、国王の証明による閲覧許可証を見せるとにこやかな表情で扉を開けてくれる。

中には魔道具の箱が所狭しと並べられている。


 この世界でも羊皮紙は、羊の魔物の皮を使用しているおかげで劣化が少ない。

どう言う原理でそうなるのかは不明だが、それを魔道具の箱に収めることで更に劣化を予防してくれるらしい。

まぁ、使用期限のある魔道具なので、定期的に交換は必要だけど。

お陰で、こうして古い文献を読むことが出来る。


 適当な箱から1冊手に取る。

表紙に題が書かれていないからパッと見、何が書かれているのかは分からない。

ここの管理の人なら分かるのかな?

パラパラと捲っていく。ああ、これ例の貴族の日記か。


 へー、あー、随分とゲスいこと書いてあるなぁ。

誰だよこんなの書いたの。

最初に戻ると、そこにはセロインの文字が・・・・・・。


勢いよく本を閉じ、箱の中に戻す。

「アドルフ、目ぼしいのあったか?」

「いや、こ、こっちには無いかな?」

「? ・・・そうか。」

ふー!

これは現役の王族には見せられないよなー!

そうだった。

初代王はこの国の出身だった。

こんなものを保存している、この国に憤りを感じつつ、隣国の恥部を解放しない優しさに触れ言いようのない感情に包まれる。


暫く思い思いに資料の探索をする俺達。

すると、

「アディ、これ」

カチヤが1冊の本を持ってくる。

捲っていくと、あぁ、木竜に会いに行った時の話を書いて居るのか。


 おお、まだ俗物思考のない木竜って酒でも話をしてくれたのか。

へー。

更に捲っていくとある一文に目が留まる。

『2柱の幼神の父は、この地から御隠れになった』

え?

御隠れ?

死んだってこと?

父神が?

待って!

あの関西弁が父神じゃないの?

いや、あの木の場所に潜んでいるって可能性も・・・・・。

更に読み進む。


 父神と呼ばれる神は、その後一切の神託を授けることはなかったようだ。

と、言うことは言葉の意味そのものと考えた方がいいのか?

如何せん、名前が分からないので正確なことは分からないが、その後の世界は幼神が見守っていると

当時の木竜は語っていた。


そこから先は木竜の夜の相手に係わることが書かれているのみで、神に関する話はかかれていなかった。

衝撃の事実を目にした興奮もあるが、とんでもなくヤバイ物を目にしてしまった緊張もある。

ラインハルトもクラウディアもその項目を目にすると勢いよくページをめくり、無言のまま本を渡してくる。


 可能性として、魔神の望みが父神だったとしたら今、俺達に神託を授けている神。

あの関西弁は、魔神と兄弟ってことになる。

もう一つは関西弁の隣にいた、羽根の人と魔神が兄弟で、未だ魔神から隠れないといけない理由があると言うこと。

その登場人物(?)に、あと母神がいると言う。

目にした、どの書物にも未だに描かれていない女神。

気になる反面、出てきたら面倒なことになるのではないか?

そんな心配もある。


 扉の外にいた警備の人が、燭台を持って扉を開けてきた。

部屋の窓から夕陽が差し込んでいることにも俺達は気が付かず、1冊の本を中央に立ち尽くしていた。


声がかかり、我に返った俺達は一先ず大図書館を後にして、宿に戻る。

目的の神殺しの方法、魔神の最期に付いての本は未だに見つかっていない。


神妙な表情で話し合った結果。

明日も大図書館に籠ることになった。

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