57話
何なんだ、この国、いや、この世界は。
俺も仲間たちもうんざりとした表情でトムーギ王国の首都の入口に立っている。
見渡す限りの人、人、人。
さながら、お祭りでもしているのかと言う賑わいだ。
どうやら迷宮を出て俺が、意識を失っていた3日の間にトムーギの冒険者ギルドの職員が国中に走り迷宮攻略者が出たことを触れ回ったようだ。
訪れた町々で歓迎を受けて、途中までは気分よく過ごせたのは事実。
だが、来る日も来る日もお祭り騒ぎを聞き続けると人は、どうなるか?
当然逃げたくなる。
隙を見て宿から、逃げだそうと画策もしたが人の波に阻まれ、終いには馬車に詰められ首都までの町々を強制的に練り歩かされた。
お陰で、行の倍の日数を掛けこうして、首都に到着したわけだが・・・・・・。
いや、分かるよ?
娯楽なんてほぼ無いだろうし、新年や収穫祭でもなければ騒いだりは出来ないだろうけど。
ちょっと、騒ぎすぎじゃないですかね?
街の門から一時間たって、未だ城に着かないってどうよ?
って言うか、人居すぎじゃね?
こんなに人口多かったの?
わー!
こら! カチヤに触れてんじゃねーよ! オッサン!!
と、悪態を心の中で付きながら、本来なら一時間もいらない道程を4時間かけて城に到着した。
事前にギルド職員が通達してくれていたお陰で、国王陛下の謁見はスムーズになされた。
・・・・・・だったら、交通整理もしてほしかった。
恭しく膝をつき、玉座の主人を待つ。
横目で仲間たちを見れば、皆疲弊した様子で頭を下げている。
ドスドスと重い足音を鳴らし、トムーギ国王が玉座に現れる。
前に会ったのは、どれくらい前になるだろう。
随分と昔のような、一か月もたって無いような不思議な感覚だな。
短いお褒めの言葉を貰い、謁見の間を後にする国王。
先祖の約束とは言え、やけに淡白な態度だったな。
よくよく考えると、俺が会ったことのある王族ってセロフィーの王族ぐらいだし、大国の王族なんてあんなもんかもな。
忙しいだろうし。
けど、仮にもセロフィー王国の王太子がいるのにあの淡白さ、前回は親書があったから話を聞いてくれたのかもな。
そんな事を考えていると、見るからに上級貴族と言ういで立ちの男が俺達の前に立つ。
依頼達成の目録を読み上げる。
「見事迷宮を攻略した若き英雄たちよ! 彼の賢王、レイモン・アクスト・トムーギの名において
褒美を取らす。先ずは金貨1000枚、そしてレイモン王の愛用していた、戦斧を下賜するものとする。他に望みのものがあれば申し入れるように!」
依頼料は破格だけど・・・・・・。
他国の王太子にその言葉はどうなんだろう?
いいのか?
まぁ、俺じゃないからいいけど。
ラインハルトも気にしてないようだし・・・・・・?
寝てる?
いやいや、そんなことないよな?
そんな恥ずかしい真似は・・・・・・無いな!!
俺は何も見てない!!
目を閉じたままのラインハルトに代わり目録と
戦斧を俺が受け取る。
重い!
こんな重量兵器使える奴いるんだ?
すげーな。
道理で戦斧だけ見るからに軍人ですって人が持ってると思った。
身体魔法掛けっぱなしじゃなければ床に落とすところだった。
さて、じゃがれ声のラインハルトが
「あれ? もう終わったの?」
なんて、奇妙なことを話していたけれど気にせず城を出よう。
早く退散しないと、問題が起きそうだ。
城の役人に指定された宿に入ると俺達は追加の褒美について話し合う。
「で? 何にする?」
ウキウキと話し出すラインハルト。
我が国の次期国王様は随分と庶民派だな。
「そうですわね・・・・・・」
クラウディアも真剣に悩んでいる。
「私はなんでもいい。」
カチヤは謙虚だ、決して興味ないわけではない。
「あのさ・・・・・・一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
皆頭に?を浮かべた顔をしている。
・・・・・・あれ?
忘れてんのかな?
「魔神のこと、話してないよね?」
・・・・・・。
暫し、沈黙が流れた。
いや、俺も忘れてたから強くは言えないよ?
けどさ、しっかり者のイメージのクラウディアも忘れるって・・・・・・。
ラインハルトは寝てたしな!!
しっかりしてくれよ、王族さま。
取りあえず、世の中を揺るがすであろう大事件は後日伝えることになった。
「で、追加分のご褒美なんだけど、この国に大図書館てあったよね?」
「あったな、そんなの」
ラインハルトは興味を示さない。
こいつ・・・・・・。
「その閲覧って出来ないかな?」
「いや、一部は解放されていただろ?」
「そうですわね、近隣国からも図書目当てでかなりの人がくるそうですし。それがどうしましたの?」
「閲覧禁止図書の閲覧が出来ないかと思って。」
「アドルフ、お前は何を考えてるんだ?」
「いや、この国はセロフィーよりも歴史が深いだろ?」
「・・・・・・そうだな。」
「だから、魔神の文献って禁止図書の中にないかな?」
そう、攻撃が当てられない神に攻撃を当てる方法。
禁止図書にあったらこれ程、有用な褒美は無いだろう。
「なるほど・・・・・・」
「アディ、教会じゃダメなの?」
「それは俺も思ったんだけど、以前司教様が『教会に文献は少ない』って言ってたんだよ。だから、教会よりは期待できるかも。」
方法さえわかれば10年なんて待たなくていい。
それに最悪、俺が使えなくてもいい。
誰かが使えるようになればいい、神殺しの方法を。
「じゃぁ、それにするか。」
「ああ。」
皆で頷き合う。
追加の申請を伝えに行った時、目録を読み上げた身なりの良い貴族が魔神の話を聞いて倒れたのは、翌日のこと。
大図書館に足を踏み入れたのは、更に翌日となった。




