55話
訳が分からないことが、立て続けに起きた。
ボッチだと言う魔族を仲間にした。
目標の迷宮はキメラ1匹しかいなかった。
キメラは魔族だった。
仲間にした魔族が裏切り、その魔族は神様だと言う。
何より、魔法が効かなかった。
心血を注いできた、新しくバージョンアップ仕立ての魔法が。
あまりのショックに、どの程度かけて帰ってきたのかもわからないくらいに。
気が付いたら迷宮近くの街の宿に戻っていた。
まぁ、あんなところにいた魔族が怪しくないわけないし、迷宮にキメラもいて討伐もできた。
相克も理解に近づき、今まで出来なかった魔法も発現で来た。
仮に裏切られた魔族が、神様でもそこまでショックではない。
名前が分からない神様が増えただけなら、俺に関係のない神様であったらここまで、ショックはなかっただろう。
しかし、彼の神様は自分を殺せなかったら戦争を起こす。
そう言っていた、10年で神殺しをしてみろと。
俺がここまで魔法を開発するのに12,3年費やしている。
全部が全部とは言わないが、人生のほぼ全てを魔法に費やした。
これまでの集大成が全く通じなかった。
10年・・・・・・あまりにも短いのではないか?
いっそ、このまま逃げだせたら。
いや、戦争自体が目に入らないところで起きてくれたなら。
所詮俺は、平和ボケした日本人の生まれ変わりだ。
自分の関わるところで、戦争が起きるなんて考えてもみなかった。
薄っすらと、自分が寿命で死んでから何年か後に起きるかもしれない、そう考えていた。
魔族を手に掛けておいて、今更な。
どれだけ自分本位で物事を考えていたんだ。
神様が『大変なことが起きる』そう、言っていたのに。
敵対勢力がある、相手は進攻していると言っていた。
直ぐに開戦しないことに・・・・・・どこかで喜んでいた。
最悪、自分が死んだ後に戦争が起きることが確定して、ホッとしていた。
仲間だと言っていた人たちを巻き込んだことに、自分だけのせいではないと・・・・・・喜んでしまった。
俺の中に抱える仄暗い闇に同調してしまった。
俺は、転生しても上辺でしか生きていないと自覚してしまった。
一瞬でも自分との約束を違えてしまった。
また、自分を裏切った。
幼い自分に罵られたくない。
そう思うと、寝付くこともできなかった。
禄に眠ることもできずに3日が経った。
迷宮攻略をラインハルトが報告した。
周囲の人間は、迷宮攻略の英雄が誕生したと騒ぎ立てていたが、その様子を俺は俯瞰から見ているような気がしていた。
魔法も剣も効かない相手を10年で殺す。
無理だ、方法がない。
即ちそれは死刑宣告と同じだ。
仮に、戦争の現実に押しつぶされず、戦い抜いても殺せない相手がいる。
最終的には蹂躙される。
10年後ここで祝ってくれている皆が等しく殺される。
そんな事を考えていると、嘔気に襲われ両足に力が入らなくなる。
立っていられに俺は、床に頭を打ち意識を手放してしまう。
白い空間に立つ。
あのまま、死んでしまったのかな?
もう、剣と魔法の世界はこりごりだ。
平和な、争いのない世界に行きたい。
「そんなのないって知ってるくせに」
何で、無いって言いきれるんだ?
探せばどこかにあるかもしれないじゃないか。
前世の世界には、平和だっただろ。
「仮初ですやん、それ」
仮初で何が悪い?
俺の前になければ無いも同然だろう。
「だから、それ現実逃避やで」
知ってるよ。
けど、少なくとも俺の失敗が戦争になることは無い。
俺一人じゃ、抱えきれないだろ。
「一人なん?」
違うって言うのか?
「友達に恋人に、家族。一杯いますやん」
全員巻き込めって言うのか?
弟も妹もまだ小さいのに。
「キミがやらな、全員死ぬで?」
・・・・・・。
「キミがあの場にいなかったら、あの後近くの街から攻め滅ぼされて、トムーギ王国はあっと言う間に飲み込まれて、隣国は全部対応もできずに攻められていたよ?」
でも、たった10年で何が出来るって言うんだ!
「たったや無いよ? 10年もやで? キミ10年で何してきた?」
・・・・・・魔法を、創った?
「そうや! 一から魔法を作ったんやで? 子供らしく遊ぶこともできたのにひたすら、セコセコと実験して! 物書いて! 大人相手に意見言って!自分が創ったんやろ? 何で可能性を狭めんの? まだ、可能性あるかもしれんやん!!」
あると思うか?
「あるよ! 無いわけないやん!!」
10年で神殺しを?
「出来るよ! 世界を救うヒーローになれるって!!」
ヒーロー? 柄じゃないんだけど・・・・・・。
「ヒーローに憧れない男の子なんていません!!!」
俺が振り返ると、そこにいたのは金髪の男ではなく小さな男の子が涙目で立っていた。
ごめんな、また|お前「オレ」を泣かせちゃったか・・・・・・。
「不甲斐ないのは僕の特性だから我慢する。」
ハハハ、そうだ。
不甲斐なくって、煮え切らないのは俺の持ち味だったな。
「でも、今生は違う。」
あぁ、前世よりも愚直に進んで、魔法を普及させる。
それが誰でもない俺自身の約束だった。
「体術もね。」
あぁ、そうだった。
10年で死んじゃったら、普及したのか確認出来ないもんな。
「普及させる相手もいなくなるし。」
なら、あの金髪締め上げてでも方法確認しないとな。
「恋人との甘い結婚生活も長い方がいいしね。」
おお、そうだった。
まだ、カチヤとは清い交際(?)しかしていない。
「男たるもの心に決めた人は幸せにしないとね。」
そうだ、漫画の主人公のようにな!
「金髪の人って言えば、あのハリセンは使えないのかな?」
分からない。
もう、14年も前のことだし。
魔法を覚えてからも使えなかったしなぁ。
「今ならできるかも?」
いやいや、そこまで楽観は出来ないだろう。
二つの属性を混ぜることで使える位なら、あいつのことだから、以前から仄めかしていても不思議じゃないし。
「なら、全部混ぜちゃえば?」
それこそ無理だろ。
・・・・・・やってみるけど。
「フフフ、やっと可能性を考えることが出来るようになったねぇ。」
あ?
あぁ、そうだな。
情けないところを見せたな。
「もう、大分前から知ってる。」
そうだった。
「もう、行きなよ。皆が待ってるよ。」
あぁ、またな。
「『また』は、無い方が良いけどね。」
そうか?
「そうそう、自問自答より仲間を頼りなよ。」
・・・・・・そうだな。
じゃぁな。
「じゃぁね。」
・・・・・・
・・・・
「・・・・・・ディ! アディ!!」
・・・・・・女の子が泣いている。
?
カチヤ?
カチヤが泣いてる?
「カチヤ、どうした?」
「どうしたじゃない!」
「ごめん。」
「心配した。」
「・・・・・・ごめん。」
「大丈夫?」
「ああ、カチヤ、相談したいことがある。」
「何?」
身体を起こしながら、周囲を見渡す。
ラインハルトもクラウディアもいない。
「これからのこと、皆と相談しないと。」
「・・・・・・そうだね。」
10年後までにやらないといけないことが出来てしまった。
前世の享年を超えるために。
それにカチヤとの結婚の約束もしている。
なら、幸せを模索しないとカチヤにも失礼だ。
結婚生活が10年未満なんて冗談じゃない。
やってやる。
絶対に!!




