54話
「お前は、何者なんだ? エル!!」
エルを見上げて問を投げる。
答え次第では殺さないといけない。
「ですから、元エルドレー公爵ですよ。アドルフさん」
「何が目的で、俺達に係わってきた?」
「そうですね・・・・・・1つはここに来るのに暇つぶしが欲しかったからもう1つは彼に会うためですかね」
そう言うと自分が殺した魔族を引き上げて俺達に晒す。
あんな殺され方をしたのに、その死に顔は満足そうだった。
「騙したんですの?」
「そうですよ、クラウディアさん。簡単に魔族を信じてしまうなんて危ないですよ? しかも、あんな在り来たりな嘘なんかで! ククク・・・・・・」
確かにあんな有り触れた話、普通は信じないよな。
現にカチヤは長いこと警戒していたし。
俺は、同情もあったし、神託もあった。
早々に警戒心を解いてしまった。
情けない・・・・・・。
「何で、殺したの?」
「おお、彼に同情されているんですか? カチヤさん」
「違う、疑問なだけ」
鞘に手を持って行っている。
答え次第では、抜刀するつもりなんだろう。
カチヤに視線を向けると、頷いてきた。
まだ、聞きたいこともある。
静かに首を振ると、カチヤは鞘から手を離す。
「そうですね・・・・・・彼を見た時皆さんはどう思いました? 醜いと思ったでしょ? 私は、哀れに思いました。なので、殺してあげたのです。」
哀れ?
姿は確かに醜いと感じたけど、あの力は強大だった。
殺す必要があったのか?
「まだ、疑問のようですね? 仕方ない、教えてあげましょうか。」
「あの姿はあなたたちの言う身体強化魔法の10段階に相当します。ここに魔物が居なかったのもそのせいです。9段階で、生み出した魔物を生贄に捧げて超上の力を手にする。それが10段階です。」
何だって?
あれが、・・・・・・10段階?
あの姿が?
「そう、あの姿が10段階に至った姿。・・・・・・まぁ、失敗作でしたけどね。」
失敗作?
あの姿でも十分脅威だった。
じゃぁ、成功例はどれほどの脅威になるんだ?
「うん、まだ疑問のようですね。じゃぁ、もう少し詳しく説明してあげますか。魔族の中でも到達することが容易ではない9段階。これは自身の強化だけではなく魔物と言う、戦力を生み出す力。数で劣る魔族が、人族に対抗するために必要な力です。数の暴力は脅威ですからね。そして10段階!! これは、ある存在を呼び出すためのいわば、儀式です。その存在を己の中に降ろすことで、超上の力を得ることが出来る。そのための生贄として、9段階で生み出した魔物を捧げる必要があるんです。まぁ、成功例は今まで無かったわけですが。姿がこのようになるか、勇者に撃たれた魔王のように精神が破綻するかそのまま死に至るか、そんな感じです。」
笑顔のまま、事もなげに話すエル。
「成功すとどうなるって言うんだ」
「ラインハルトさん、神様を呼び出すんですよ。魔族のね。どうです? 超上と言うに相応しい力でしょう?」
神様だと?
確かにあの力を行使で来たら脅威だろうけど、あの神様が?
何のために?
「アドルフさん。魔族の神様って言ったじゃないですか? あなたの会った神様ではないですよ。」
やれやれ、みたいな素振りをしてるけど。
俺は声に出していない。
仲間たちも? を浮かべた顔で、こちらを見てくる。
「お前、考えを読んだのか?」
「はい、だってこの体の持主が唯一の成功例ですから、私は####といいます。聞こえました?」
分からなかった・・・・・・。
確かに口が動き、空気の振動はあった。
しかし、名前の部分だけ認識が出来ない。
不意に木竜の話を思い出す。
『神同士は呼び合っていたようだが、どう呼んでいたかは一切分からなかったな』
これか。
神様の名前は認識できない。
なら・・・・・・。
「そう、私が神です。まぁ、魔神とでも呼んでください。」
魔神・・・・・・いや、そうなら名前ぐらいは分かるはず。
かつて、木竜が話してくれた話が本当なら魔神は神ではないと言う話だったし・・・・・・。
「物覚えがいいんですね、アドルフさんは。そう、私は嘗ていた魔神ではありません。かと言って、教会が崇めている神でもないんですよ。」
「ラインハルトさんは、私の目的にしか興味がないようですね? カチヤさん、幾ら竜鉱であっても私は切れませんよ?」
「そう、クラウディアさん! 何で魔神を名乗るのか、その疑問を待ってましたよ!! 私はもう一度、私を産んでくれた神に、父親と母親に会いたい。それだけです。ですが、神威を弱めてしまった神は、この世に顕現してはくれない。なら、人族の信仰を高めるしかないじゃないですか。」
嫌な流れだ。
これは・・・・・・。
「人族の信仰を集めるために、私は魔神として神に宣戦布告します。これは人族と魔族の宣戦布告でもあります。」
やっぱり・・・・・・あの北の魔族もこいつに踊らされたわけか。
「ですが、使徒でもあるアドルフさんがいるのですし、猶予と余興を兼ねて、賭けをしませんか?」
「賭け?」
「そう、賭けです。私を見つけて、討ち果たせたら戦争は回避。そうでなければ、戦争です。そうですね・・・・・・10年程時間を上げますので私を見つけてみてください。」
馬鹿な、こんな馬鹿げたことがあるか。
神様の勝手で戦争をするだと? ふざけるな!!
「俺は神様を理由に戦争をする奴が、大っ嫌いだ!!」
例え、神様本人であっても。
俺は、エルに向かって爆裂の魔法を放つ。
見つけるまでもない、ここで、討ち果たしてやる。
放った魔法はエルの体に到達し、・・・・・・発動しなかった。
何故?
魔法を確認しながら、数回放つがいずれも発動はしなかった。
「もう、見つけたらって言ったじゃないですか。まぁ、見つけたところで、こんな攻撃では神は殺せませんけどね?さて、興も覚めましたので私は行きますね? 10年ですよ? 私を見つけて、私を殺せる手段を見つける。長いですか? 短いですか?フフフ、頑張って下さいね。魔法使いさん。」
エルの嘲る笑いを残して、エル自身は消えてしまった。
何でだ?
何で発動しなかった?
同じ魔法をキメラの死骸に撃ちだす。
音を上げて、はじけ飛ぶ肉片。
魔法自体は発動している。
あの時も発動自体はしていたのか?
結果だけがなくなっているような奇妙な現象。
訳が分からないまま、魔法を撃ちだし続ける俺に
「アディ、もういないから」
カチヤが声を掛ける。
分からない。
両親に会いたいから戦争をする?
余興? 余興で命を賭ける?
訳が分からないことだらけだ。




