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53話

見上げるキメラは、やはり巨大だ。

しかし、戦闘を始める前に比べれば

巨大なだけで、威圧感はそこまで感じない。

何故だろう?

考えても分からないなら、考えなくていい。

目標を、キメラを殺すことに集中しよう。


 改めてのあいさつ代わりに、両手で一つの火の玉を撃ちだす。

やはり、キメラは風を起こして魔法を防ごうとする。

しかし、今度の魔法は只の火ではない。

風を物ともせず、速度をそのままにキメラの胴体に到達、着弾後爆発を起こしキメラのわき腹を大きくえぐる。


「な、な、何をし、した?」

「教えるわけないだろ。」

キメラが飛ばしてくる、石つぶてを避けながら次の魔法を構築していく。


 両手から放たれる氷塊を飛ばす魔法。

避けきれないキメラが、後ろ脚を負傷する。

体勢を崩したキメラに、ラインハルトとカチヤが切り込む。

それぞれがキメラの顔や、背に傷を負わせ離脱していく。

キメラは、尻尾の蛇で二人を追撃しようとするが、クラウディアの魔法の矢により手傷を負い失敗する。


 いける、いけるぞ!

今までのように、決め手のない攻撃ではない。

確実にキメラを追い詰めている。

確かに傷自体は緩やかに回復されてきている。

しかし、俺の魔法による傷を回復していると前衛二人の付けた傷はそのまま残っている。

回復の手が回っていない証拠だ。


 これでやっと対等だ。

先ほどまでは、回避と打開策の模索で相手が見えていなかったようだ。

キメラの回復は炎を吐いている時は明らかに進行速度が遅くなる。


 恐らく、どっちも魔力を使っているからだろう。

考えられる方法は一つ、身体魔法の8段階を使っている。

それしか方法はない。8段階を使って、あの速度ならこちらは十分対応が出来る。


 落ち着いてみてみれば、体の大きさに惑わされていたことがよくわかる。

炎を吐くぐらいなんだ、俺でも火の魔法で出せるじゃないか。

風を起こすくらいがなんだ、俺やラインハルトでも出来る。


 要するに体の大きい俺がいるようなものだ。

ならば、俺自身もそして仲間たちも負けるわけがないじゃないか。


 とは、言ったものの体が大きいと言うことは多少の無理も利くのも確か。

攻勢を弱めないキメラは石つぶてや炎で応戦してくる。


こちらも攻撃の手は休めていないが先ほどの防戦で体力が消耗している。

不意に襲ってくる尻尾も厄介だ。


そんな事を考えていると、ラインハルトが尻尾の一撃を受けてこちらに飛ばされてくる。


 駈け寄り、回復魔法を掛ける。

これも今までとは、比べものにならないほど回復速度が上がっている。

難点としては、先ほどから使っている魔法は両手でしか行使できない点だ。

それもその筈、両手で2つの属性を使用しているからだ。


 相克を調べていくうちに、相克とは弱点属性だけを指すことではないと気が付いた。

キメラの攻撃を上げた、こちらの魔法を思い出しかけ合わせると、今までは出来なかった現象を

再現することが出来た。

5つの属性の中で相性のいい属性が存在していた。


 爆発に使った属性は土と火、氷は風と水だ。

回復は水と木、と言ったように図で書いた隣り合う属性をかけ合わせることで属性の強化、いや、別の属性を創造することが出来た。


 ラインハルトを回復しながらキメラを見る。

カチヤは上手く攻撃を避けているが、時折振るわれる尻尾に攻撃の糸口をつかめない様子。

「ラインハルト、先ずは尻尾を無力化するぞ」

「分かった。」

ラインハルトが真っ直ぐキメラの尻尾に突進していく。


 キメラもラインハルトに気が付いているようで、風と尻尾でラインハルトの行く手を阻む。

ラインハルトに向かって伸びきった蛇たちに魔法をお見舞いする。

使う属性は火と風。

(ピラー)のように地面から生えた火の柱が速度を上げ移動する。


 伸びきった蛇の大半を移動する(ピラー)が切り裂いていく。

慌てて戻したであろう数匹の蛇も、俺に気を取られて見失ったカチヤによって切り裂かれていた。

尻尾を失ったキメラは雄たけびを上げる。

怒りからか、痛みからかは判別できない。

しかし、キメラの表情はそれまでのどこか楽しむような表情は消えて、憤怒と言った表情に変っていた。


 俺達は3人が集まり、3方向に散開する。

正面が俺、右がカチヤ、左がラインハルト。

キメラは、これまでのように多方向からの攻撃に対応できないと思ったのか俺に集中をする。

こちらの思惑通りに。

特大の炎を俺に向かって吐きだすキメラ。

水と風を使い、水の壁を創りだし炎にぶつける。

対消滅で生じた大量の水蒸気で辺りが白く染まる。


 白い闇に紛れてカチヤとラインハルトがキメラに手傷を負わせたようだ。

キメラの雄たけびが上がる。

「離れろ!」

短く仲間に指示を出すと爆裂する弾の雨(バレット・レイン)をキメラの影に落とす。


まだ、立っているであろうキメラの影に上空から魔法の矢が大量に降り注ぐ。

「ぐぉぉぉ」

弱弱しい声を上げ、キメラの影は大きな音を立てて地面に倒れる。


水蒸気が晴れていく。

キメラの巨体の数割が弾けた衝撃で削り取られていた。

頭は半分が吹き飛ばされていた。


「やったな!」

駈け寄る仲間たちとキメラだったものを見る。

ん?

吹き飛ばされたキメラの頭が動いたような?

脳があるべき場所にも、肉が詰まっていた。

そこがわずかに動いた気がした。


 クラウディアも合流した。

喜びを分かち合っている仲間の声を聞きながら、再度動いた場所に目をやる。

はじけ飛んで、所々焦げている肉が盛り上がる。

「おい! あれ!」

仲間たちに注意を呼びかける。


振り向いた仲間の中から

「ひ!!」

と、悲鳴が漏れる。


 盛り上がった肉の中から、人の手が出ている。

キメラの血で汚れているが、間違いなく人型の手が見える。

その手には力が入っているようには見えないが、もがき、周囲を押しのけその周囲も露出する。

人型の上半身が完全に露出する。


 その露出した人の頭には片方が折れてはいるが角が生えていた。

魔族だ。

魔族の上半身がキメラの頭の残骸から生えている。


 怨念がこもった目が俺を捉える。

「・・・・・・そが・・・・・・」

「くそが!!!! 今までどれだけの時間を費やしたと思っている! 500年だぞ! この穴倉に籠り、我らが宿願を! 我らが神の復活を! こんなガキどもにぃぃぃぃ」


怨念の籠った声が反響する。

魔族自身の血なのか、キメラの血なのか分からないが魔族の顔を血が染めている。

その血の中から暗い目が俺を捉えている。


「貴様らなんぞに! 我らが主の宿が・・・・・・」

叫んでいた魔族の目から怨念が、暗い光が失われる。

魔族の胸から手が生えていた。

魔族は胸から生えた手に視線を落とし、その手の持主がいるであろう後ろを振り向く。


 俺は未だにその光景が本当か理解できないでいた。

仲間も同じ様子で、ただその光景を眺めていた。


「エル・・・・・・グレー・・・・・・公爵様」

後ろを向いた魔族がその人物の名を呼ぶ。

後ろにいたエルに向かって。

エルは満面の笑みを浮かべて

「ご苦労様ッス、リットン元伯爵。お役御免ッスね」

「な・・・・・・ぜ・・・・・・?」

「キミ達の宿願は果たされたッス。いや、自分が果たしたッス」

「お・・・・・・お・・・・・・お」

死にゆく魔族の顔に満足げな笑みが浮かぶ。

エル?

宿願?

訳が分からない!


「エル!!!」

「はいッス?」

意味が分からない。

「なんだ? これは? お前は何者なんだ?」

「あは、聞いてませんでした? エルドレー公爵ッス。元ですがね。」

元の幼い表情は消え、鋭い眼光で俺を見つめる

その人物は、助けを求めてきたエルのものではなかった。

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