50話
トムーギの迷宮、前人未到の迷宮にいよいよ挑む時が来た。
この町。と言うか、トムーギ王国の冒険者ギルドにおいて、常時依頼が張り出されている迷宮攻略の依頼。
10代前のトムーギ国王の名前で、今も依頼書が張られている。
ギルド職員に話を聞くと、年間に1組か2組が未だに挑戦するらしい。
前回依頼を受けた冒険者は半年前。
俺達が今年初めての挑戦者らしい。
「ところで何名で入られる予定ですか?」
「見ての通り5人ですが?」
答えた俺の顔を呆れた表情で見てくる職員のお姉さん。
ちょくちょく感じるけど、この国のギルド職員て失礼な人多いよね。
「まぁ、言っても変わらないと思いますけど。やめておいた方が賢明かと思いますよ?」
はい! キタ。どうせ子供には無理だって言うんだろ?
予想通り、予想通り。
「前回の挑戦者は10人のパーティーで、未だ帰ってきていないんですよ?」
「・・・・・・そうならないように頑張ります。」
そう言い残し、ギルドを後にする。
そっか、10人か。
人数が多いから有利っていうものでもないだろう。
例えば、飲料水。
前世の、今は曖昧になった知識だが、成人の一日に必要な水分は大体2リットル程度。
これは、一般的な運動強度で生活した場合を想定していたはず。
前世での一般的な運動強度と、こちらの世界の一般的な運動強度は、どちらが高いだろう?
考える余地もなく、こちらの世界だろう。
何せ、移動がほとんど徒歩しかないのだから。
そして、冒険者の運動強度は前世でのアスリートより高いはずだ。
ならば、必要なカロリーも違うし、必要になる飲料水の量も多くなって然るべきだ。
いくら神様設計のとんでもファンタジーな魔道具の箱でも限界以上には、持ち運びが出来ない。
それに前衛が一抱えもあるような箱を持ちながら、戦えるわけがない。
迷宮内で補給が出来るかもわからないなら、少数精鋭でことに挑んだ方が断然有利なんだ。
そうに違いない。
・・・・・・そうだよね。
・・・・・・最近脳内会議が上手く機能しないな。
自己弁護で不安を解消させてくれ・・・・・・。
「ほら、アドルフ、落ち込んでいても行かないといけないことには、変わりがないんだから」
「そうは言っても、あんな話を聞いたら不安じゃないか・・・・・・」
「割り切れ、割り切れ。お前の提案通り、回数を分けて内部を調査しながら進むんだから。」
そう、臆病者と罵られてもこれは曲げなかった。
大体、死に戻り有りのゲームじゃないんだから、一回で踏破する必要はない。
先ずは未帰還の曰くを取り除いていきたい。
この考えを持った先人にも居たらしいが、その人たちも3回目の突入で未帰還者の仲間入りを果たしたらしい。
情報を集めようにも過去の冒険者が、他のパーティーに対して情報を売ることもなかったようで、内部に関して不明なのはこの町に来ても変わりはなかった。
なので、先ずは情報収集に時間を掛けようと提案した。
ラインハルトは、神託で時間が無いと言っていたのを聞いていたので、すぐにでも攻略をしたがっていたが良く考えてみて欲しい。
魔族として潜在能力は高いかもしれないが、戦闘初心者のエルがいるんだ。
エルはまともに狩りも一人で出来ない。
身体強化も3段階程度しか使えないと言う。
未だ猫も一人で倒せない仲間を連れて、初見クリアと言う縛りプレイ。
失敗は俺たちの死。
はっきり言って無理ゲーだと思う。
そんな状況で、危険度を自ら上げる必要がどこにあると言うのか。
大体、エルを連れて行けと言ったのも神託を与えた神様自身なんだ。
多少の時間のロスは織り込み済みなんだろう。
じっくりと時間を掛けて、準備を行いながら目標のキメラを目指す。
「じゃぁ、明日から潜って、目標は半年で攻略完了だ。」
「おう。」
◇ ◇ ◇
翌日、こうして迷宮の内部に初の潜入だ。
話に聞いていた通り、入口は天然の洞窟のようだ。
真っ暗な視線の先から異様な雰囲気が漂っている。
まるで、大型の獣の口臭のような独特の空気に覆われて、松明の明かりを頼りに奥へと進んで行く。
今日の目標は松明3本分の時間をこの中で過ごすこと。
松明1本が約2時間半、3本で約7時間半。
夜には街に戻ることにしている。
これを徐々に増やしていって、半年後には攻略の予定だ。
まぁ、どの程度の深さなのか分からないけど。
「魔物の巣って噂は間違いらしいな。」
松明を1本消費したところで、ラインハルトは呟く。それもそのはず、未だ魔物の影も見当たらない。
「それに只の天然の洞窟のようですし。」
クラウディアもラインハルトの言葉に同意を示す。
若干進みにくい箇所もあったが比較的平坦な道。多少下っているようなので、下に伸びている洞窟のようだ。
内部には人工物のじの文字も出てこない。
・・・・・・だとしたら、何が前人未到足らしめているのか?
壁には所々記号が刻まれている。
先人達の目印なんだろうか?
何にも出会うことが無く、松明の2本目も半分を消費していた。
取りあえず、俺達も先人達に倣い壁に印を掘り来た道を戻る。
結局その日は予定通り、3本の松明を消費して街に戻ってきた。
「正直、拍子抜けッス」
「そうだな。明日は獣香でも持っていくか?」
「そうですわね、良いかもしれないですわね」
3人は、予想を裏切る迷宮に対して警戒心が薄れているようだった。
俺は言いようのない不気味さを感じ、出来れば行きたくないと言う考えが頭に過ぎる。
カチヤも帰路の間、柄から手を離さなかった。
恐らく俺と同じような感覚があったのかもしれない。
明日から3日間迷宮に籠ろうと提案してくるラインハルトを、何とか説得して獣香無しで松明5本、10時間の探索とした。
あの迷宮には何かがある。
前人未到足らしめる、何かが。
今




