48話
街に入り、冒険者ギルドに向かう。
獲物の換金に訪れたのだが案の定、量が多すぎて全てを換金することは出来なかった。
まぁ、1000羽を軽く超える量を持ちこまれても困る。と言う職員の言い分は、正論かな? と思えた。
幸い大半は直接市場に下せるように手配してもらえたので、無駄にならずに済んだ。
それでも箱の中に200羽分の肉が貯蔵されることになった。
箱の中では腐食しないと説明は受けているものの、月単位で時間が経過した食材に食指が動くのか? と言う問題は残っている。
早くに消費できるように、何か手を考えないと。
出店をやるかとも考えたが、新参者の外国人に許可を出すギルドも見つからず、取りあえずは箱の中で眠って居てもらうことになった。
街には王都並みの市が開かれていたので、必要なものを見て回る。
これから向かう迷宮は未踏の遺跡だ。
目的のキメラが、一体どの程度の深さにいるのかも分からない。
ならば、箱の限界まで食料や、水を買っておく必要がある。
そう考えれば大量の鳥の肉も無駄ではないだろう。
「ラインハルト、どこから行く?」
「先ずは、塩だろう。」
ここに来るまでに、それなりの量を消費している。
水に塩に薪をそれこそ、村で消費するのか? と、思われるほど購入していく。
だが大半は、大きな商会で買う必要があるので市では、主に野菜を中心に購入していく。
この町では俺たちにしては、目立ったトラブルもなく旅立つことが出来た。
道中が全部、こんな感じならどんなに楽だろう。
相も変わらず、狩りをしながら街から街へと歩を進める。
野営地での宿泊も珍しくなくなったある日。
ク~キュルゥゥゥゥと、野営の準備をしている俺の耳に奇妙な音が届く。
「ラインハルト、腹の虫ぐらい抑えておけよ。」
「はぁ、俺じゃないし」
「じゃぁ、クラウディア?」
・・・・・・無言で叩くのはやめてください。
誰だ?
「カチヤ・・・・・・じゃないよな?」
「違う」
?
キュル、キュルゥゥゥゥ
無言で顔を見合わせる俺達。
全員が首を振る。
準備を止め、戦闘態勢で周囲を警戒する。
腹の音が聞こえる・・・・・・かなり近い位置に何かがいるはず。
不意に近くの木の上から影が落ちてくる。
クラウディアが矢を番え、他の全員で抜刀し落ちた地点を凝視する。
子供か?
近くに村でもあったのか?
落ちてきた影は俺達とほぼ変わらないほどの人型だった。
「あ、あの~、食べ物を分けて欲しいっス」
まだ、あどけない表情の子供がいた。
ただし、頭には角が生えていた。
魔族の子供か。
一瞬緩んだ気を張りなおして言葉を発さず、警戒を続ける。
「お願いッス! 食べ物を下さいッス」
あまりに必死に頭を下げるその姿に、張りなおした気が緩む。
「・・・・・・どうする?」
「いいんじゃないか? 危険もなさそうだし」
「そうですわね」
「皆がいいなら、いい」
手短に相談し、取りあえず食料を分けてやることにした。
物凄い勢いで食べ始める魔族の子供。
その様子は周囲に擬音が見えるようだ。
まるで、漫画の一コマのように食べ物を口に入れていく。
・・・・・・俺たちの2日分位の食料を食べてないか? これ?
「ふぅ~、もう食べられないッス!!」
確実に膨らんでいる腹を擦りながら、幸せそうな表情の魔族の子供。
「で、お前なにものだ?」
俺とラインハルトは剣を構えて質問する。
「へ?」
やっと、周囲の状況を把握した様子の子供。
「あ、あれ? 人族ッスね」
「そう言うお前は魔族だな?」
「ヒヤァァァァァ、お助けッス!!」
地べたに五体を投げ出し、敵意がないのを表現している様子の魔族の子供。俺とラインハルトは頷き合うと剣を納める。
「助けてやる代わりに質問に答えろ。魔族のお前が何で、トムーギ王国内にいる?」
小さく顔を上げると、消え入りそうな声で話し始める。
「自分、見ての通り体が小さいので、魔族の中でも常に相手にされないんッス」
聞けばこの子は、周囲の評価が得られず、魔族の中で居場所がなくなり逃げるようにトムーギ王国に来たらしい。
しかし、人族と魔族の関係は良くないので人里には行けず、ここから近い森に隠れ住んでいた。
狩りも得意ではなく、日々食つなぐのに必死で野営地であるここに食料を求め入り込み、木の上に潜んで、残り物に群がる獣を取ろうとしていたらしい。
潜んでいた間に、あまりの空腹で気を失いかけ木から落ちた、そこに俺達がいたと言う。
・・・・・・本当だろうか?
特出する何かがある個体が群の中で孤立するのは、自然界でも人間界でもあり得ることだ。
俺にも覚えがある。
まぁ、筋としては通っているのだろう。
多分、いまいち腑に落ちないけど。
・・・・・・どこまで、信用できるのだろうか?
「お願いッス! 自分も旅に加えて欲しいッス!! もう、一人は嫌なんッス!!」
確かに一人はキツイ。
本当の意味でも、精神的な意味でも。
あ~、嫌だ。
前世の嫌な記憶が呼び起こされる。
・・・・・・出来れば連れて行ってやりたい。
人であったなら。
魔族は危険じゃないか?
いや、危険しかないだろう。
しかし、俺の一存では決められない。
仲間たちを見ると、俺と同様のことを考えているようだ。
特に俺と同じように交友関係が薄いカチヤは、非常に微妙な表情だ。
「どうする? ラインハルト」
「あぁ、どうするかな。」
「クラウディアはどうしたい?」
「えぇ、・・・・・・」
「カチヤは?」
「・・・・・・」
皆が閉口した。
魔族に痛い目にあわされる前なら、ラインハルトは了承しただろう。
俺も同情して、了承したかもしれない。
魔族の情報が入る絶好の機会だ。
利用したい気持ちもある。
しかし、あの魔族の脅威を知っている俺達には直ぐには決めることが出来なかった。
そうなれば、もう保留して明日に持ち越すしかない。
一先ず、返事を待ってもらい夜を明かすことにした。
当然、魔族の子供には一つのテントを使ってもらい、別のテントを順番で使うことにした。
そして、決断をしなくてはならない朝が来た。




