46話
道中で野営をして翌日となり、呆然とする先輩冒険者と王都に戻り冒険者ギルドに入っていく。
あまりに早い帰還に俺達が逃げ帰ったと思ったのだろう。
囃し立てるような罵声交じりの声が飛び交う。
暫く黙っていると、先輩冒険者の昨日とは違う様子に何人かが気が付き、それは次第に伝播してギルド内に静寂が訪れる。
さて、やっと俺たちのターンかな?
ラインハルトに脇を突かれ、先輩冒険者が口を開く。
「依頼は・・・・・・確かに・・・・・・成功した。」
騒めきが起きる。
「5人で集落を潰したっていうのか?」
誰かが問を投げかけてきた。
俺達はまだ口を開かない。
「いや、・・・・・・5人じゃない・・・・・・4人だ」
更に騒めきが広がる。
「お前も戦ったんだよな、な?」
「いや、俺は見ていただけだ・・・・・・」
「なんだ?小さな集落だったのか?」
「後から数えたが57体いた」
「いやいや、分からねーな? 誘い出してちまちま殺って行ったんだろ? 本当に全部なのか? 上位個体もいたそうじゃねーか! これからまた殺りに行くんだろ? なぁ?」
大分混乱してるな。
さっき依頼成功って言ったじゃないか。
「違うんだ! 全滅させて帰ってきたんだ!!俺は確かに、この目で見てきた! こいつらは魔法を使って確かにゴブリンの集落を潰して見せたんだ!!」
肩で息をしながら周囲を見回す、先輩冒険者。
俺たちに向き直り、頭を下げて
「俺の言ったことは間違っていた。確かに魔法は復活していた! セロフィーが愚かだと言ったことは取り消す! 済まねぇ、許してくれ!!」
何度も頭を下げる先輩冒険者。
土下座の習慣があったら、やりそうな勢いだ。
静まり返る周囲に、俺達が魔法を披露する。
水、火、土・・・・・・ラインハルト、だから風は見えないって! 俺が睨んでいたのに気が付くと
ラインハルトは水に変更した。
押し固めてはいない素の状態だが、周囲にはどう映っただろうか?
驚愕の表情が並んでいた。
言葉の出ない周囲を置き去りにして、魔法を消した俺達は受け付けのカウンターに近寄る。
何人かが、俺達と未だ頭を下げている先輩冒険者を見比べている。
横を通るときにはヒィと、声を上げる人もいた。
カウンターには昨日のお兄さんがいる。
「お兄さん、確認してくれる? ゴブリンの耳57個、上位個体のもあるから間違ってないか見てくれ。」
そう言ってラインハルトが、耳の入った革袋をカウンターに置く。
青い顔をしながら耳を数えていたお兄さんは
「確かに・・・・・・57有ります。後日確認のため職員が集落を確認してから依頼達成となります。よろしい・・・・・・ですか?」
「なるべく早くに確認しに行ってね? まぁ、小屋は全部焼いてきたから大丈夫だと思うけど別の群れが住みついちゃったら無駄骨になっちゃうからさ」
努めて明るく話すラインハルト。
・・・・・・いや、口元がしてやったり、って言ってるな。
まだ静まり返っているギルドを出ると、全員が顔を見合わせ笑いあって宿に戻る。
あぁ、そうだ言っておかないと。
「ラインハルト、風は見えないから別なのって言ったじゃないか」
「お、そうだったな、目配せしてくれなかったら恥ずかしい思いをするところだったな」
翌日ギルドから知らせがあり訪れると
「この度は失礼が有ったようで、大変申し訳ありませんでした。ラインハルト・リッターシルト・セロフィー殿下」
と、支部長を名乗る大柄な男性に頭を下げられた。
「まぁまぁ、澄んだことですので、気にされなくてもいいですよ。」
ラインハルトも気さくに答える。
報告の後、大急ぎで集落の確認がされて、無事依頼達成となったようだ。
気分的に気持ちのいい依頼ではなかったが、相手はゴブリンだし。数が幾ら多くても対した金額にはならないんだろうな。
・・・・・・まぁ、実験の延長みたいな依頼だったし。
新しい魔法・・・・・・いや、技かな? も試せたし、路銀の足しになればいくらでもいいな。
「ではこれが報酬の金貨200枚です。確認してください、殿下」
「ああ、・・・・・・確かに」
当然のように受け取るラインハルト。
「え? ゴブリンだよ? あんな相手でそんなに貰っていいの?」
思わず心の声を口に出してしまった。
周囲が静まり返っていた。
カチヤは顔色を変えてはいなかったが、クラウディアは恥ずかしそうに顔を俯かせている。
ラインハルトに至っては頭を抱えている。
?
訳が分からない。
たかがゴブリンを倒すことが何でこんな大金になるんだ?
「いやはや、当代の魔法使い殿は大物でいらっしゃる」
あれ? 支部長さん明らかに気を使ってるな? 明らかに愛想笑いだし。
2人の反応もなんかおかしいし。
久しぶりにやっちまったか、これ?
「アドルフ。後で話があるから、今は静かにしてくれ」
「あ、はい」
支部長との話を終えて一旦宿に戻る。
道中ラインハルトは終始無言だ。
うーん、さっきの俺の発言、やっちまった度はかなり高いのかな?
宿につくと、男部屋に集まり俺は仲間たちに囲まれる。
「さて、世間知らずな魔法使いさん。今回の件、説明してやるからそこに座れ。」
「はい・・・・・・」
床に座らされる俺、立ったまま説明を開始するラインハルト。
「いいか? 先ず、ゴブリン。猫より厄介だって俺、言ったよな?」
うんうん
「猫を57匹倒しただけでも単純に金貨100枚は行く。そこまでは良いか?」
「はい」
「その金貨100枚より厄介な魔物が集落を作ってたんだぞ? 繁殖もしていたな? あの森だと80体を養えるかどうかってところだ。養えなくなったらどうなる?」
・・・・・・共食い? いや、この言い方は
「街を襲う?」
「そうだ! 深刻さ的には虎とそうは変わらないんだ。だから、軍隊レベルって言ってたやつもいただろう?」
あ、そう言えばいたな。
「確かに今回は、お前とクラウディアの魔法で簡単にやって見せたけど」
うん、我ながら予測通りの結果で怖いくらいだったな。
「もっと、危機感を養ってくれ! 確かにお前は一軍に匹敵するくらいの打撃力を持っている。だけど、このままやっていったら、いつか死ぬぞ!? 魔族の時にだって俺はお前を守ることが出来なかったんだぞ!」
そうか。
怒っていたんじゃなく、心配させていたのか。
「ごめん。」
「分かってくれたなら、それでいい。・・・・・・済まない、俺の不甲斐なさを棚に上げて。最後のは八つ当たりになってしまった。」
そうだな、今まで主人公補正か? なんて思えるほど順調に来たけど、確かに魔族の時は俺も危なかったよな。
そうか、ラインハルトはラインハルトで、あの時のことを悔やんでいてくれていたのか。
「ラインハルト、済まなかった。カチヤもクラウディアもごめん、少し調子に乗ってた。」
皆に改めて頭を下げる。
俺は過ぎたことを忘れやすいようだ。
仲間に、友達にこれ程心配をさせていたなんて。
そうだ、幼い自分との約束もまだ、道半ばなんだ。
今、俺が死んでしまったら俺の後悔だけじゃない、仲間を、家族を悲しませてしまうんだ。
・・・・・・家族、前世の両親にも親不孝をしたからな。
現世では、やらないように慎重に行動しないと。
よし、改めて頑張ろう!
勢いよく立ち上がり、心の中で叫ぶ。
作戦名:いのちだいじに
忘れないようにしないとな。
「ん? 誰が立って良いって言た? 話は終わってないぞ?」
え?
「いい話で終わりじゃないの?」
俺の中でちょっと感動する話だったんだけど・・・・・・。
「お前の非常識でかいた、恥ずかしい想いについてこれから話すんだが?」
「アディ、そろそろものの相場は把握して」
「分からないならせめて、聞いてくれませんか?」
「いや、ああ言う場所では口を開くな! いい加減思ったことを口に出すのはやめてくれ。後、お前の作戦は大雑把すぎる!」
小一時間詰め寄られ、結果。
作戦名:めいれいさせろ(ラインハルトに)
に、変更させられることになった。




