45話
俺達は、トムーギ王国王都の近郊の廃村に来ていた。
久しぶりに魔法の開発をしようと、人の立ち入らない場所を聞いたらここに案内された。
・・・・・・この世界は、呪われているのか?
王都の周辺に廃村があったり、開発せずに森を残していたり。
普通は、王都の周辺から開発して行くものじゃないのか?
王都の目と鼻の先に、廃村が放置されてて疑問に思わないのか?
まあ、場所を提供して貰っているんだ、皆まで言うまい。
今回は、一体上空のどこまで魔素を魔法に変換出来るのか?
魔素が空気と同じなら、上空に上がるにつれ薄くなって、魔法に変換出来なくなるはずだ。
今後、標高の高い山で戦闘になったとき魔法が使えない、では話にならない。
前回の山が2000メートル当たりのはず、そこで問題なかったから、2500位から試して見よう。
空を見上げると低い位置に在る雲を見つける。
あの雲の上ならどうだ?
目標が曖昧なのはご愛嬌と言うことで・・・・・・。
意識を空に向け、水の弾の雨を降らす。
廃村の周りにある休耕している畑が、限定的に掘り返されていく。
・・・・・・うーん、分からん。
大体雲の高さってどれくらい?
大昔に習ったような?習わなかったような?
じゃぁ、これは置いておいて別の実験をするか。
次は何回ぐらい魔法を重ねられるか、これを実験していこう。
火の弾の雨を同じ空間に同時に発動させる。
すると、両方とも威力の弱い魔法しか発動しなかった。
別の空間から同じ地点を攻撃することは出来る。
これは魔族との戦いで実証済みだからいいとして。
縦軸が同じだったら発動するのか? これも問題なく発動する。
効果範囲を大きくとると? 隙間が大きくなり効果自体が落ちるような感じか。
広範囲を広げて重ねれば隙間を埋めることは出来る・・・・・・ただ、集団戦闘には向かいかな?
距離が離れてて先制攻撃が可能なら十分使用に耐えられるだろう。
あと、問題は相手をその場に留めておく方法を考えればいいんだけど・・・・・・。
これはあれを応用すればいけるかな?
まぁ、直ぐに使う物でもないだろうしな。
一段落すると空腹を覚えたので街に戻る。
仲間たちとは王都の冒険者ギルドで待ち合わせをしている。
ギルドに入ると喧騒が聞こえる。
注意してみるとそこにいたのは俺の仲間たちだ。
・・・・・・外国なんだから、問題は起こさない方がいいんじゃないかな?
カチヤを見つけたので、話を聞きに行く。
この騒ぎのあらましを聞く。
要約すると、俺が魔法を復活させたと言う話は、トムーギ王国にも当然伝わっていた。
しかし、トムーギ王国の国民の多くは俄かには信じられない。
偶然ラインハルト達と居合わせた、この国の冒険者は縄張り意識も相まってラインハルト達を嘲る。
憤慨するラインハルト。
そこに登場した俺と言うことらしい。
「お、一国をだました稀代のペテン師さまのご登場か」
まぁ、信じられないよなぁ~。
この世界で純粋に育ったものなら、信じられなくて当たり前だし、もし俺が同じ立場なら信じられる訳もない。
「お前いい加減にしろ!」
「あ? なんだぁ?」
全くうちの王太子様は血の気が多いな。放っておけばいいのに。
「馬鹿な国王と馬鹿な国民が、ペテンに騙されて国を挙げて大騒ぎしているようじゃ、セロフィーも終わりだな」
周囲の冒険者も声には出さないが同じ意見なんだろう。
皆嘲笑を浮かべている。
これは頂けない、俺だけを嘲るのは良い。
しかし、色々と協力してくれた国王陛下や家の家族を含めた臣民を馬鹿にされてしまった。
俺は足早にカウンターに向かう。
受け付けのお兄さんにこう告げる。
「あの、あの口だけ立派な人が到底こなせないレベルの依頼はないですかね?」
職員として流石に閉口していたお兄さんは、若干の笑いを含みながら
「あの人に出来ないなら君たちにも出来ないと思うけど?」
「有名人なんですか?」
「そうだね、キミほどではないけど有名だね。」
あー、この人も同じ考えだったか。
まぁいい、
「で、有ります? それともそこまで難しい依頼はここにはないんですか?」
流石にムッとした表情を浮かべる職員と周囲の冒険者たち
「じゃぁ、これでもやってごらん」
出された依頼は
【森に作られたゴブリンの集落の殲滅】
と言う依頼だった。
え?
ゴブリン?
あの?
漫画や小説で大体最初の相手に書かれる奴?
ラインハルトが、依頼書を覗き込むと少し眉をしかめる。
この表情は難しいのか?
「どうだい、出来るかい? 魔法使い君?」
職員の言葉に周囲が笑いだす。
「だっははは、そいつは無理だよ」
「ゴブリンの村を殲滅? できるわけがない」
「軍隊レベルの案件じゃないか、人が悪いな!」
周囲が更に笑いに包まれていく。
「いいだろう、受けてやる!」
ラインハルトは大声で宣言する。
「おい! あんたが証人だ、付いてこい」
元々の言い争い相手を指さす。
「は! 死にたくないからごめんだね」
「怖いなら俺達を見捨てて逃げていいぞ! それが怖いなら遠巻きに眺めてても、いいぞ?」
煽りすぎかな? とも思うがラインハルトは直接父親を罵倒されたのだ、これ位は良いだろう。
「どうだ? 誰か付いて来て確認をする奴はいないか? それともこの国の冒険者は腰抜けぞろいか?」
埒が空かないので、俺もラインハルトの尻馬に乗り周囲を煽る。
先ほどの冒険者が意を決した様子で
「そこまで言われちゃぁ黙ってられねぇー! 行ってやるよ!! だが・・・・・・」
剣に手を掛ける。
「逃げたり、失敗するようなら手前らを真っ先に切るぞ?」
「「勝手にしろ!」」
ハモった少し恥ずかしい。
そのまま件の森に向かう。
夕方になろうかと言う時間に森に到着する。
「ラインハルト、今更なんだがゴブリンてどの程度の相手なんだ?」
ふと思い立ち確認してみる。
「個体的には猫より劣るくらいか。だけど知能がある分だけ厄介だ」
なるほど。
情報によれば、この森の中心近くの沼に集落を築いているらしい。
中には、上位個体もいるようで中々に統率が取れているとも聞かされた。
集落を目視出来る位置に付いた時には、もう日も暮れていて外に出ているゴブリンは少ない。
良く観察してみると、みすぼらしい装備を纏い、やや低い身長、予想した通りのゴブリン像がそこにあった。
オークのこともあったので警戒していたが、今回は普通だ。
ただ、数が多い。
見えているだけで10数体。
立てられた小屋の数を考えれば30から40程度はいると予測できる。
噂の上位個体は見当たらなかったので、戦力予想が不十分だと思うのだが現状なら十分勝機があるな。
「皆、こっちに来てくれ」
小声で皆を少し離れた場所に誘導する。
以前の旅でやられた経験が役に立ちそうだ。
昼間の実験も十分に役に立つな。
作戦を説明する。
先ず、俺が範囲魔法で先制攻撃。
次いで、クラウディアによる魔法攻撃で数を減らし、生き残りをラインハルト、カチヤで切り伏せる。
単純明快な作戦だ。
以前は俺達が、ゴブリンの立場で俺達の位置には狼の群れがいた。
違うのは敵に存在が知られていない点だけだ。
だけど、その一点が大きな利をもたらす。
説明を終えると、行動を開始する。
縮地で集落の周りを慎重に周回していく。
まだ、気が付いていない様子だ。
速度を上げていきルフトシュピーゲルングを行う。
これなら矢玉の弾速を調節しやすいし、周囲が囲まれてると思えば自然に中心部に固まるはずだ。
しかも、今回の弾は魔法を使う。
延焼が怖いので水弾のルフトシュピーゲルングだ。
俺の攻撃が始まると、外にいたゴブリンの半数位が地面に倒れる。
まだ立っているゴブリンが周囲に警告を発したのか、小屋から数十のゴブリンが姿を見せる。
周囲からほぼ同時に着弾する水弾に、混乱した様子のゴブリンたち。
全員が後ずさりをするように、ひと際大きな小屋に集まっていく。
頃合いかな?
ルフトシュピーゲルングを中断し、上空に意識を集中させ。
三重の弾の雨を撃ちだす。
範囲はいつもよりも広くしてあるので、ゴブリン全員と大きな小屋をまとめて範囲に入れている。
水弾が地面に着弾すると後を追うように、クラウディアのプファイル・レーゲンが連続で打ち込まれる。
動いている個体は数匹になったな。
仲間に合流し、全員で切り込んでいく。
クラウディアは離れたところから、倒れている個体に矢を打ち込んでいく。
案の定、やられたふりをしているゴブリンが悲鳴を上げ絶命していく。
交戦できるゴブリンは多く無いようで、ラインハルトとカチヤによって排除されていく。
中にはメスの個体もいたようで幼体のゴブリンを抱いている個体も見受けられる。
もがいている幼体も殲滅しないと被害が出るようになる。
心苦しくはあるが、生存闘争に負けた種だと自分に言い聞かせ剣を振り下ろしていく。
知的生命体の命を刈るのは、気持ちのいいものではないがオークや魔族を刈っている現状もあるので
次第に感覚が慣れていく。
外に動くものが俺達のみになった所で、大きな小屋に目が留まる。
上位個体はいたのか? 中にいるのか? 未だ小屋に動きがないので分からない。
「どうする?アドルフ。」
踏み込むか?
待ち構えている可能性もあるよな。
「小屋は燃やそう」
そう言うと全員が頷く。
小屋の周囲に火を打ち込んでいく。
勢いが強く地面にめり込んでしまうが何回か繰り返すと、小屋に火が付き瞬く間に燃えていく。
燃え広がっていくと、大きなゴブリンが転がり出てくる。
周囲に転がっている死体に比べるとやや大きい・・・・・・が、俺達とほぼ同じくらいの大きさのゴブリンだ。
これが上位個体か?
どうやら俺かクラウディアの魔法で、脚に傷を負っていたようだ。
ラインハルトが上位個体に剣を振り下ろし、殲滅戦が終わる。
周囲の小屋にも一応火を放ち、生き残りがいないか確認する。
火が森に延焼しないか心配ではあったが、ラインハルトが一軒一軒小屋に壁を作り、延焼しないように
していてくれたらしい。
頼りになる王太子様だ。
生き残りがいないことが確認できたところで、つい忘れていた同行していた冒険者を呼び寄せる。
恐る恐る近寄ってきた冒険者の顔色が分からないのが残念だ。
恐らく青くなっていることだろう。
「さて、今日はもう遅いから明日みんなの前で証言してもらうから。」
コクコクと力なく頷く冒険者。
ラインハルトが冒険者の肩を持ち
「証言の時、発言の撤回もきちんとしてくださいよ? 先輩」
と、小声で言い聴かせていた。
王太子として入国した割に発言はチンピラのようだ。
俺も発言は気を付けよう。
「アディ、魔法消してあげて。あの人気の毒」
・・・・・・行動も気を付けよう。




