41話
「アドルフさん・・・・・・強すぎ・・・・・・ます」
「アディ・・・・・・大きすぎる」
「アドルフ! 風位ちゃんと制御しろ!!」
トムーギとの国境近く。
現在は、この世界のワイバーンの大群に竜巻を喰らわせているところだ。
何でこうなった?
1時間前国境が近くなり、セロフィー最後の宿場町で馬鹿デカいカラスの魔物を風魔法の練習台にしたこともあり、換金をしに冒険者ギルドの支部に顔を出していた。
受付で、職員のおねーさまが大声で俺の名前を叫んだおかげで、注目は集めたが絡んでくるおバカは排除できていた。
しかし、同時により厄介な存在を呼び寄せていた。
それがこの町のギルド支部長だ。
この支部長は、本来軍に要請するべきワイバーンの大群を俺たちに討伐依頼をしてきた。
厳密にはワイバーン2匹と言う話だった。
はずなんだが・・・・・・。
「おいおい、20匹のワイバーンなんて聞いてねーぞ!」
「俺も初耳だよ!」
「ラインハルトが、依頼受けた」
「そうでしたわね」
「ハイハイ! ごめんなさい。兎に角今は、逃げろー!」
出没すると聞いた森に入ると、そこにはワイバーンのコロニーが形成されていた。
ワイバーン、すなわち飛龍だが大きさは想像よりも小さい。
ダチョウに大きな羽が生えているくらいの大きさで、始祖鳥の予想図的な風貌だったが。
一匹ならまだ、大丈夫。
だけれども20はない。
草原に出ると町は目と鼻の先。
これ以上は逃げられないと思い、風魔法で竜巻を起こし、ワイバーンの行く手を阻んではみたものの・・・・・・。
思いのほか大きく作ってしまい、こちらも風に阻まれ行動が出来ない。
そこで、先ほどの俺に対する仲間からの非難となった。
「これ! 消してもいいけど、どうするんだ? ラインハルト!」
「馬鹿! 消すな!! 壁を作れ!!」
壁? さて、俺に作れるかな?
うーん、無理だな。
イメージできない。
空気の密度を上げるってどうするんだ?
・・・・・・面倒だな、地面に落とそう。
風の方向を変え、上から下に打ち下ろすイメージで風を起こす。
これなら弾の雨の要領でできるし。
飛龍たちが落ちたのを確認すると、竜巻を消す。
何匹かは地面に衝突した際羽根を痛めたようで、再度飛び立つことのできない個体もいた。
しかし、10数匹は再度空に舞おうと羽根を羽ばたかせるしぐさをしている。
再度風を発生させ地面に縫い止める。
「そのまま抑えていてくださいまし!」
そう言うと、クラウディアは空の弓を引き絞り集中したかと思うと、水の矢を番える。
いや、水の矢を創造した。
水の矢は3本に分かれたかと思うと虚空に放たれる。
3本の水の矢はそのまま飛んでいくかと思ったが、途中で無数の矢に分かれ、それぞれがワイバーンを射貫いていく。
クラウディアの魔法プファイル・レーゲン。
航空機による機銃掃射を思わせるその魔法は、クラウディアが唯一使える魔法でありバレット・レインの上位互換とも言える魔法だ。
殺傷力は格段に落ちるが、範囲が広く大軍相手には持って来いの魔法だ。
身体強化の操作技術は魔法にも応用が効くらしい。
と、言うか魔力代謝が向上したのかな?
今まで魔法といっても、火種や水を出すことしかできなかった。
クラウディアが魔法らしい魔法を使えるようになるなんて、リーズベルト邸でよっぽど辛い思いしたんだね・・・・・・。
生暖かい目でクラウディアを見ていたら、
「なんですの?」
と、きつい言い方で睨まれた。
何でそんな言い方をされるんだろう?
ラインハルトの成人の儀を阻止したからか?
身体魔法の件でとばっちりを受けたから?
リーズベルト邸に男爵がいることを黙ってたからか?
リーズベルト男爵にあらかじめ面白い才能の子が居るって伝えていたからか?
そのせいで剣鬼自らクラウディアを鍛えることになったからか?
俺には全く謂れがないと思うんだけど・・・・・・?
「アドルフ! 遊んでないでとどめを刺すのを手伝ってくれ!!」
20匹全部が、抵抗できないことを確認したラインハルトが声を掛けてくる。
そうだ。さっさととどめを刺さないと、ワイバーンの血の臭いで肉食獣が来たら大変だ。
「わっかた、よし!」
剣を振るうと手に痺れを残し、剣を弾く。
ワイバーンと言えど、飛龍と言うことか。
「固いな、この鱗」
「そうか?」
気のない返事を返しながら、ラインハルトはワイバーンの首を落としていく。
カチヤも同様だ。
クラウディアはそもそも剣を持っていない。
・・・・・・武器新調しといた方が良かったかなぁ~。
っと! あぶね!
どう、とどめを刺そうか考えてたら食いつかれそうになった。
こんな状態でも竜は竜。
油断しないようにしないと。
炎の刃を使い、ワイバーンの首を落としていく。
当分はこれでいいか。
いつものように箱にワイバーンの体を詰めていると、
はて?
何かの視線を感じるような?
森は近いけど周囲は草原で見通しも明るい。
観察されて困ることは無いけど・・・・・・。
なんだ?
ラインハルト達を見ると一心不乱に作業をしている。
・・・・・・気のせいかな?
そう思い作業に戻る。
暫くすると、妙な視線は感じなくなっていた。
作業を終え、ギルドに向かうとそこから大騒ぎだ。
支部長は手違いだと、譲らないし。
ラインハルトは明らかな違反行為だと糾弾の姿勢を崩さない。
追加報酬を申請しても最初の金額から譲歩しない支部長に、俺が切れた。
2匹で金貨10枚が正規報酬で、そこからは素材代しか出さないと頑なに譲らない支部長。
そんな話をカウンターでしていたものだから、周りの冒険者も支部長にブーイングだ。
今回の俺達も彼らも命がけで依頼に向かう。
こちらのミスで脱落するのは仕方ない。
そう言うものだし。そうならないように当たるのが仕事だ。
しかし、今回は明らかに情報が間違っている。
どう見ればコロニーを作っているワイバーンを2匹と間違うのだろうか?
情報収集はギルドの仕事だ。
その情報が間違っていたのに、追加の報酬がないだと?
ほかの国ではどうかは知らないけど、国民総冒険者を掲げるこの国で、冒険者を使い捨てにする考えはない。
ラインハルトも王太子として支部長の、態度には想うところがあるのだろう。
俺達はかなり熱くなってお互いを罵りあっていた。
「支部長、それは私の仕事も評価していなかった。そう言う意味でいいですね?」
冒険者の輪の外から声がかかる。
良く通るその声の主が歩を進めると、人波が割れる。
「いや、・・・・・・そうではないんだ!」
その人が視界に入ると、明らかな狼狽が支部長に浮かぶ。。
赤い顔をしてこちらを睨んでいた顔が、一気に青くなる。
俺はその声に聞き覚えがあった。
その声の主を見て確信する。
「ダグラス先生!」
「久しぶりですね、アドルフ、カチヤ、ラインハルト殿下」
厳しくも頼もしい先生の懐かしい姿がそこにあった。




