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37話

トムーギの迷宮。

未だ自然に発生したのか、人為的に作られたのか不明の、人族が確認している最古の迷宮。

入口は天然の洞窟のようであるらしい。

しかし、その奥は未だ誰も見たことのない未踏破の迷宮。


トムーギ王国の西端にあるそれは、様々な噂を擁する謎の迷宮。

「曰く、魔物を生み出す」

「曰く、魔族の隠れ家」

「曰く、魔神の祭壇」

その謎が冒険者を駆り立て、幾人もの冒険者を飲み込み、一切吐きだすことのない。

人喰い迷宮として、冒険者ギルドでは有名な迷宮だった。


そんな謎の迷宮に、一つだけ分かったことがある。

『奥深くにキメラがいる』と、言うこと。

木竜の情報が齎されて、セロフィー王国は緊急議会が招集された。

本来、もうトムーギに向けて出発していたはずであったが、俺達パーティーメンバーは王都に足止めをさせられている。


「ラインハルト、お前が逃げ切らなかったからだぞ」

「捕まえた張本人が言うことか」

ラインハルトが王太子に任命されたことで、神託とは言え危険な迷宮に送り込んでいいものか? と議会が開かれているせいで、結局2か月足止めを喰らい今は王城で新年のパーティーに参加している。

今年は次期国王が定まり、次期王妃も決まりお披露目のために盛大に新年を祝っている。


「ラインハルト、いいか? お前がいなくなったら世継ぎがいなくなるだろ? 王国を想えばこそじゃないか」

そう、今現在確認されている国王の血族は3人の男子のみである。

(落とし子が居れば話は別だが)その直系男子2人はもうすでに出奔を認められている。

いわば俺の成人の儀での行動は愛国心から出た行動であって決して、自分本位な理由はないのである。

決して自分本位ではない! 大事なことなので以下略




「そう言うことだ!」

「ほう、その言葉俺の目を見て言えるのか?」

「もうこれが公式見解でいいじゃないか」

ジト目で見られるが、もう本当に公式見解と言うことで押し切ろう。


ラインハルトは自国の貴族たちではあるが、将来のために会わなければならない貴族もいる。

所謂大物貴族の挨拶を受けるため、その場を後にする。


今回は俺は、国王陛下の命で冒険者ギルドに本登録をし、成人の証を立てたことで新興貴族の当主としてきているが、爵位任命もされていない。

俺はあいさつ回りの必要がないため気楽に料理に舌鼓を打っている。

カチヤも同様だ。


新興貴族の婚約者であるため、貴族の子息たちにお披露目する必要がない。

例外として魔法省の関係で財政担当の貴族や、魔法省の職員になる貴族が挨拶に訪れた程度で、今年は比較的楽な新年パーティーを過ごしている。


「これはこれは、当代の魔法使い殿」

変な呼び方はされたくないものだが、大々的にお披露目した手前仕方のない事と

諦めているが・・・・・・。

顔を向けるとそこにいたのは

「ヘルマン伯爵」

「ほう、覚えていらしたか」

「ヘルマン伯爵こそ、よく覚えていましたね」


「いやいや、実際忘れていたのだがね。王太子の成人の儀でようやく思い出したのだ」

ああ、そう言えば外壁の上にいたよな、そう言えば・・・・・・。

「この度はお礼をせねばならないと思い、探していたのだよ」

お礼?

はて?

子息を叩きのめした以外に、係わりは無いはずがけど・・・・・・?

は! まさか仕返し?


「よくぞ、よくぞ!成人の儀を阻止してくれた!! 魔法のことで驚いていて、未だ挨拶もしてい無かったことを忘れていてな、この機会に我らの派閥を代表して礼を申し上げる」

深々と頭を下げるヘルマン伯爵。周りにいた反王派の面々も頭を下げる。


「いや! 頭を上げてください。そんな事されるほど大したことしてないですから!」

「いやいや! 我ら反王族成人の儀反対派に取って、成人の儀阻止は悲願!寧ろそれだけで繫がっている派閥なのだ! 今回のこと派閥全員、誠にありがたく思っている」

要するに、王族の出奔が嫌だってこと?

それだけ?


んー、確かに担ぐ神輿がないのは嫌か?

でもそれだけって・・・・・・。

「今回の件は感謝してもしきれない。我らに出来ることがあれば何でも協力するから遠慮なく言ってほしい」


なんだか思わぬ人脈が出来たな。

まぁ、魔法省関連で協力を仰ぐことになるかもしれないし、

「分かりました。その時はどうぞよろしくお願いいたします」

人脈、これも新興貴族にとっては必要なもの有り難く受けておこう。


反対勢力と思っていた派閥に渡りを付けられたのは大きい。それだけでもこのパーティーに参加して

良かった。

足止めさせられたのも無駄ではない、そう思えた。


それにこれで議会終結が早くなりそうだし。

なんか初めて貴族で良かった、そう思える出来事だった。


パーティーはそのまま終わりを迎え、翌日カチヤにとって、待ちに待った日を迎える。

新しい剣の試し切りだ。

竜鉱の剣。

聞いたことのない初めて目にする

金属・・・・・・でいいんだよな・・・・・・で作られた剣。


それを実践で使用する。

そのためにこうして久しぶりに王都付近の森に来ている。

ダグラス先生と来ていたころとは、別の少し遠いところにある森に来ていた。


蜘蛛の居る森でも良かったのだが、冒険者でもあまり入らない森を選んだ。

大型の魔物を求めて。

ここは大型の魔物が多くいると言われている森で、王国軍の演習で使われるが3か所をローテーションで使用しているため、たまに大型の魔物が入り込んでいる可能性の高い森である。


本来は入ることは出来ないが、が神託に関連することなので特別に森に入る許可を得た。

王太子のパーティーメンバーで、魔法省の立ち上げ発起人。

と言うコネを使いまくった結果だ。


良い子はマネしないように!

・・・・・・誰に言ってんだ俺?

やはり生来のボッチ気質は今でも健在か・・・・・・もっと、社交性を身に付けないと。


新興とは言え貴族なんだから。

人に会うのも仕事の一環、頑張ろう!


そんな気楽に考えていたが、流石に軍が使用する森であった。

まだ、この時はその意味を知らずにいた。


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