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34話

久しぶりの我が家、父上も母様も無事を喜んでくれた。

クリスは、久しぶりに会った俺に若干の人見知りを発動させているようだ。

一週間はゆっくり出来る。また、くっ付いて来るだろう。


一週間後ラインハルトの成人の儀が行われる。

王族の成人の儀は、毎回街から人が姿を消す。

無人の街に軍と王族のみが残り、盛大な鬼ごっこが行われる。


王族は己の能力全てを用いて、街の外を目指す。

軍は其を全力で阻止する。

日が暮れるまでに街の外に出れたら、王族は自由の身。それ以外はどんな理由があっても王族として生涯を全うする。


全力と全力のぶつかり合いだ。

建物が壊れる事も珍しくない。

壊れた建物は王家が責任を持って保証する。

市井に公金を流し、経済を活性化させる目的も有るようだ。


今回は俺も参加することが決まっている。

国軍に俺の魔法を御披露目する意味合いもある

ラインハルト、すまないが全力で行かせて貰う。

そう伝えてある。

実に一週間後が楽しみだ。

今回の保証額は、王家始まって以来の額になるかも知れないな。

ククク・・・・・・


◇ ◇ ◇


一週間が経った。

もう直ぐ、成人の儀開始時刻に成る。

俺はとある商会の屋根の上でその時を待つ。

ここなら王城の門も良く見えるし、周囲は市が開かれる広場だ。見落としも少ない。

軍の大半は街の門に張り付いて貰っている。

万が一も無い、完璧な布陣だ。


おー? 始まったかな?

一人の人影が此方に向かってくる。

うん、ラインハルトだ。

クラウディアは街の外周の壁にいる。

特例の為に手助けをするようだ。


「アドルフ、俺はお前を無二の親友だと思っている。見逃してはくれないか?」

「俺も同じさ、大人しく捕まってくれないか?」

ラインハルトは、剣を抜き俺に向けてくる。

「こうして、剣を向け合うのはいつ以来だろうな? ラインハルト!」

火球をラインハルトに打ち出す。

ラインハルトの手前で逸れる火球。

やはり、風の壁を展開していたか。


「本気なんだな?」

「前は負けたからな」

呼び方を決めるときは、火球を駆使してもラインハルトに届かなかった。

しかし、今なら届くかもしれない。


盾を前に出し、見慣れた構えで俺を見上げるラインハルト。

位置的優位を崩さないよう足場を確かめつつ、ラインハルトを見下ろす。

ラインハルトが、ジリジリと後退するのが確認できた。

離れた相手に攻撃手段のないラインハルトが、逃走するのは予想済みだ。


水の弾の雨(バレット・レイン)でラインハルトの後方を射撃する。

当てるのが目的ではない。

魔法使いからは逃げられない。

それを警告するためだ。

ニヤリと笑みを浮かべた俺の視界の端に、光る何かが入ってる。


視線を向けると一本の矢が、俺に向けて飛んでくるところだった。

「クラウディア! 無駄だぞ!」

声を上げ、俺はこの日のために編み出した新型魔法を使う。


矢の進行方向を、斜めに横断するように一直線に並んだ水球を撃ちだす。

それを左右から。十字射撃(クロイツ・シュス)を水弾で発射する。

クラウディアが、ラインハルトを援護するのは予想していたので、俺なりの防御魔法だ。

狙い通り矢を撃ち落とすことに成功する。


矢に気を取られていると下で物音がする。

ラインハルトがいない。

「しまった!」

建物に逃げ込まれたようだ。

良い連携だ、けど建物内は選択ミスだよ?


弾の雨(バレット・レイン)で、近くの家を無作為に打ち壊す。

「ほらほら、出てこないと下敷きになっちゃうぞ!」

バン! と勢いよく狙った家とは反対側の家からラインハルトが出てくる。

「無茶しすぎだろ! 殺す気か!?」

「そんな訳無いじゃないか、親友」


逃げるラインハルトを屋根伝いに追い回す。

撃ちだす魔法は避けられたり、風の壁に阻まれたりと決定打にはならない。

幸い縮地を使えるので振り切られることはないが、時々クラウディアの援護射撃をしてくるので上手いこと誘導しきれない。

徐々にラインハルトは外周に近づいていく。


仕方がない、カチヤのいるところに誘導して挟撃するつもりだったけど・・・・・・。

炎の柱(ファイヤー・ピラー)を使い近くの路地に誘導し、先回りをして地面に降り立つ。

ラインハルトと向き合う。

「ラインハルト、降参する気はないか?」

「お前も諦めてくれないか?」

ジリジリと距離を詰める俺に対して、動かないラインハルト。


一対一の剣技では互角位だろう。

魔法は上手くさばかれている。

何より風の壁とラインハルトのスタイルが相性よすぎるよな・・・・・・。


それ以外で勝たなくてはいけない。

ならば・・・・・・。

炎の柱(ファイヤー・ピラー)をラインハルトの左右に大きく展開し、正面から踏み込む。

風の抵抗はなく、ラインハルトに難なく接近する。


「馬鹿な? 何をしたアドルフ!」

「何をしたでしょう?」

接近されたことに驚愕しているラインハルトは、反応が遅れいとも簡単に俺に組み伏せられる。


やったことは簡単だ。

左右に展開した炎の柱(ファイヤー・ピラー)

それが周囲の魔素を急激に消費する。

いくら優秀な風の壁であっても、消費できる魔素が不足していれば維持は出来ない。


天才肌のラインハルトは、今まで理屈の所に興味を示さない傾向にあった。

そこをつかせてもらったのだ。

まだまだ、魔法の運用に関しては俺に分があるようだ。


ラインハルトも諦めた様子で、力を入れていない。

捕まった時点で成人の儀は終了なのだから。


ラインハルトと共に街の外周に向かい、兵士にラインハルトを引き渡す。

外周部にいた兵士たちは拍子抜けした顔で、成人の儀の終了を告げる。


下にいた兵士たちは不思議そうな顔をしているが、外壁の上にいる審判役の貴族たちは青い顔をしている。


捕まえるのに必死で、周囲の目を気にせず魔法を行使していた。

貴族たちにはばっちりと見られたし、護衛についた兵士にもみられている。

これで国内には、魔法が復活したことが知れ渡る。

恐らく、国外にも知れ渡るのだろう。


そう考えるともっと、派手に行けば良かったと後悔がある。

だけれども、貴族たちの顔見るに宣伝は上々なようだ。

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