33話
下山して先ず、大隊長や領主に事の顛末を告げる。
魔族が領地内に侵入していたこと、獣に魔石が無いことを報告をしなかったこと。
これらは後日、国王陛より糾弾されることになるだろう。
魔族がいたことは、酌量の余地があるにしても、魔石が無いことに関して異常だと思わない人間はこの世界にはいないのだから。
聞けば領主は、ギルドから上がっていた情報を意図的に止めていたらしい。
理由は簡単、「税収に目がくらんで」である。
発覚したのも簡単で、ギルドに問い合わせをしたら領主まで意見具申をしていたことが簡単に分かった。
領主は青い顔でラインハルトに縋ってきたが、クラウディアの件もあり取りあう気はないようだ。
八つ当たりだけどね。
それよりも大隊長の方が大変だった。
部下を消耗させたことに責任を感じ、自害するのではないか不安に思えるほど憔悴しきっていた。
早まったことを仕出かさないように、仕方なく拘束するしかないとも思ったが、そこは軍人だ。沙汰があるまでは部隊を守り切ることを約束してくれた。
今は信じるしかない。
そう話し合い町を出発することにする。
そう言えばハンスさんはどうしただろう?
馬車を持ち逃げされたかもしれない。
そんな一抹の不安を胸に町中を探す。
「おーい!坊ちゃん、嬢ちゃんどうした?」
以前と身なりの変わらないハンスさんがそこにいた。
乗合馬車良いアイディアだと思ったけど、やっぱり駄目だったかぁ~!
「いやぁ~、そこそこ儲かったんだけど、人を募集してたら馬車ギルドに見つかってな」
詳しく聞くと貴族の式典用の馬車をレンタルするギルドが存在しているらしい。
そう言えば、新年のパーティーで登城するときは御者の派遣を受けていったっけ。
要するにその派遣元から横槍が入ったそうだ。
一悶着あったが、客層が違う事を説明し、業務提携と言う名目を勝ち取ったらしい。
アイディア料と就職先を得て、一先ず生活の向上は図れそうだと大喜びしているハンスさん。
元々約束していた2割の報酬に色を付けてくれるそうだ。
金貨で15枚中々稼げたようだ。
次なる目的地に早々に向かいたい俺達は、ハンスさんに王都まで馬車を走らせてもらえないか交渉を始める。
「王都まで? ルート指定でか? んー、ま! 坊ちゃんたちの頼みだ! やらせてもらうよ。」
「ありがとうございます」
快く引き受けてもらい、北端の町を後にする。
途中、狼に襲われたあの町を訪れ、約束通り穴を固めて更に1週間して王都に帰還を果たした。
こうして俺たちのパーティーによる、はじめての冒険は幕を閉じた。
後は登城して報告するだけだ。
「おお、よくぞ戻った!」
並んで拝謁する俺たちに国王陛下は大げさに喜んで見せた。
いつもの一室ではなく謁見の間を使い、周囲に側近だけでなく反国王派も並ばせてのお出迎えだ。
礼を解き陛下の顔を見ると、以前見たことのある悪戯好きの本性を隠さない、あの笑みを蓄えている。
ラインハルトは訝しんでいるけれど、俺には心当たりがあった。
玉座の近くに立つ人物、反国王派の重鎮ヘルマン伯爵の姿がある。
完全にあの約束事が陛下の耳に入っている。
そう、匂わせる配置で立っていたのだ。
・・・・・・気が付いていないのか? ラインハルト。
クラウディアは、もう諦めた顔をしているぞ?
「此度の遠征誠に大義であった!! して、どのような収穫があったのか詳しい報告は後で聞くとして・・・・・・」
あ、ラインハルトもヘルマン伯爵に気が付いた様子だ。
なるほど、苦虫を噛んだよな顔ってこのことを言うんだな。
「ラインハルトよ!些か急ではあるが、そちの成人の儀を早めようと思う!」
陛下の言葉に周囲が騒めく。
まだ、14にもなっていない王族に成人の儀を取り行う。
これは異例中の異例だ。
今は新年も近いこともあって、王城警備のために王国軍の大半が王都に詰めているはずだ。
余程のことが無い限り、ラインハルトは逃げられないんだろうな・・・・・・。
と言うより、陛下は逃がす気がないんだろう。
あの笑顔が雄弁に語っている。
俺も成人後は魔法省に詰めなくてはならない。
管轄は厳密には違うが、王国軍に入るも同然の身の上だ。
悪く思うなよ? ラインハルト。
鬼ごっこには、俺も参戦させ貰おう。
回復魔法を使えるようになった
今なら、手加減は無用だ。
そう誓い、謁見は終了した。
別室に通されると、ラインハルトは
「おい! どういうことだ? 悪い夢でも見ているのか? 俺は!!」
残念だけどこれ、現実なのよね。
「次期国王がそんな姿を見せるものじゃないぞ? ラインハルト陛下」
「まだ、捕まると決まった訳じゃない!」
「いやいや、逃げられるわけないだろ? 俺達だけじゃなく国軍の大半がお前を捕まえに来るんだぞ? 城からも出れないんじゃないか?」
国軍の大半が城を囲み街を警戒する。
そんな状況で逃げられる奴が、ヘルマン伯爵とあんな約束をするだろうか? いや、しない。
「アドルフ、お前も俺の敵になるのか?」
「だって、ラインハルトがいなくなったら防御魔法、誰が考案するの?」
そう、未だ防御に魔法を使えるのはラインハルトだけだ。
少なくともそれが体系化できるまでは、利用・・・・・・じゃない、居てもらわなければならない。
「それに友達が、遠くに言ってしまうのは寂しいじゃないか!」
「一人だけ自由にしてなるものかって、事か?」
「嫌だな、俺がそんな事を考えているとでも思っているのか?」
そうさ!
純粋に友達と別れたくないだけさ!
数少ない友達なんだしな。
「顔が笑っていましてよ? アドルフさん?」
ヒドイなこの夫婦は・・・・・・まだ、結婚してないか。
このカップルは、全く。




