30話
目を覚ますと・・・見知らぬ天井、じゃないアパートの天井だ。
はー、長い夢を見ていた気分だ。
さて、仕事に行かなきゃ・・・・・・。
ん?
身体が・・・・・・動かない・・・・・・な?
「おーい、まだ寝てろよ」
声がする方を向くとラインハルトが心配した様子で話しかけている。
?
なんだ?
「事故で骨折してるんですから、もっと自分を労わって下さいね」
クラウディアも同様に心配してくれていたのか・・・・・・?
「ちょっと、手も動かせないんだけど?」
「ああ、よーく見てみろ」
ラインハルトが指さす先にはカチヤがいた。
俺にひっついて寝てしまったようだ。
・・・・・・なんか急にカチヤが幼く見える?
体を起こすと自分の体に違和感がある。
「ラインハルト、俺何かと戦ってなかったか?」
うっすらと何かと争っていた記憶だけが残る。
何だろう、頭にもやが掛かった様な感覚・・・
「何言ってんだ?この日本で何と戦うって言うんだ?」
日本? あぁ、ここは日本だったけ・・・?
違和感が強くなる。
おかしくないか?
俺、ラインハルトって呼んだよな?
日本でラインハルト?
どんな字を書くんだ?
雷春斗か? 線治人なのか?
・・・・・・いや、冷静に考えて外国人に決まってるじゃないか。
不意に窓に映る人影が目に映る。
中肉中背・・・・・・いや、やや太り気味の凹凸のない顔立ち
何時染め直したのか黒い髪の毛
違和感を通り越して吐き気を催す。
何だ? 何が違う?
明らかな違和感はさらに続く
カチヤの顔・・・・・・違わない・・・・・・か?
何だろう、誰かに似ている。
さっきの顔・・・・・・俺に・・・・・・似ている?
カチヤを抱き上げ顔を凝視する。
カチヤらしき少女? は、目を開き俺を見据え
「また、投げ出すのかい?」
そう、言ってきた。
吐き気が強くなってくる。
「ほら、もう休まないと」
ラインハルトは優しく声を掛ける。
「そうですわ、休まないと」
クラウディアも同様のことを言ってくる。
次第に辺りが暗くなってくる。
二人の目が暗く、まるで闇を蓄えたような色になってくる。
思わず後ずさろうとするが、身体がゆうことを聞かない。
「「さぁ、こっちにおいで」」
「あほかーーーーーーーーーー!!!」
身体を起こし、辺りを見回す。
カチヤが俺を抱きしめながら眠っている。
顔を覗き込むと良く知っている少女の顔をしている。
周囲は土に覆われた空間・・・・・・。
そうだ、洞窟だ。
自分の手を見ると、手のひらにタコが出来ている以外は大よそ子供の手の特徴をしている。
試しに手をつねってみる。
うん、痛い。
良かった・・・・・・さっきのは夢だったのか。
安堵すると、先ほどの吐き気が残っていたのか
身体を捻って嘔吐してしまう。
よかった、カチヤにはかからなかった。
安堵し嘔吐する俺に
「やっと、起きたか」
ラインハルトが声を掛けてくる。
まじまじとラインハルトの顔を覗き込む。
良かった、いつも通りの細目だ。
闇は蓄えられてはいない。
なんかヒドイ悪夢だった、あれは見続けてはいけない系統の
悪夢ではないだろうか?
・・・・・・頭、殴られたよな? そう言えば。
「ラインハルト、俺イビキかいてなかった?」
「いや、かいてなかったぞ?」
ふぅ、脳の疾患はないようだ・・・・・・一応0.5で回復しておこう。
「クラウディアは? 無事か?」
先に起きていたラインハルトに確認を取る。
「命に別状はないけど・・・・・・骨が折られているみたいだ」
その言葉を聞きラインハルトに目を向けると
傍らには、クラウディアが横向きに寝かされている。
「大丈夫かなのか?」
そう言えば、魔族の野郎に思い切り腹を殴られていたのを思い出す。
「今は痛みで気を失っているんだろう。さっきまで痛みで呻いていたよ」
優しくクラウディアの頭をなでるラインハルト
婚約者としてやはり不安もあるのだろう。
顔色が優れない。
起きてきたカチヤに別状ないかを確認して、野営の準備を始める。
魔族の死体は、装備を外して洞窟の外に埋めてきた。
幾ら敵とはいえ、自分たちが殺した知的生命体が近くに転がっているのは精神的に来るものがある。
取りあえずの準備をすると、ラインハルトにクラウディアの容体を確認する。
ちょっと前に起きたそうだが、痛みがひどいのでそのまま一声かけて眠ったそうだ。
幸い血色は良さそうなので、大事には至らないだあろうがこんな時に回復魔法が合わば・・・・・・。
残念ながら、この世界にはポーションなんて言う便利アイテムは無い。
回復魔法の開発を後回しにしていたことを、少しばかり後悔しながらその日は夜が明けた。
正直俺たちはほとんど寝れなかったが、このままここに留まることは出来ない。
話し合った結果、負傷したクラウディアを抱えてこのまま竜の聖地を目指すことにした。
下山も考えたが、魔族の生み出した獣たちはかなりの数が残っている可能性があり、負傷者を抱えたまま戦闘するには明らかな技量不足と考えた。
幸い山の向こうには獣が少ないと言う情報があったのを思い出し
このまま行軍を続けることにした。
クラウディアも目を覚ましたが一人では歩いていけない。
かと言って、置いて行けないので近くの木々を伐採して背負子を作ることにした。
が、釘もない状態では出来ないので板を作り担架モドキとして使用することにする。
多少揺れるが負ぶさるよりは傷に響かないだろう。
「じゃぁ、行くか」
俺とラインハルトが前後を持ち、カチヤが先頭で哨戒をする。
洞窟を出て1時間足らずで竜の聖地に到着した。
拍子抜けだが、現状ではありがたい。
取っ手もない板を人一人乗せて山道を歩くのは、かなりきつい作業だった。
竜の聖地、山の中には似つかわしくない荘厳な雰囲気のある神殿、前世のパル〇ノン神殿が朽ちていなかったらこんな感じだったのだろうか?
負傷者は出たが、やっと目的地に到着することが出来た。
ここに最初の使途、木竜がいるんだ。
五色の魔物、魔法のこと、そして今回の魔族の一件、聞きたいことはたくさんある。
それよりもクラウディアの治療は出来るのだろうか?
不安を胸に聖地に脚を踏み入れる。




