28話
カチヤと熊の魔物が対峙している。
熊の咆哮の後立ち上がり、威嚇している。
体格は2メートル程度か?
カチヤは150㎝程度なので体格差は明確だ。
しかし、熊は後ずさりをして退却を考えているようだ。
相手の攻勢が無いと感じ取ると、早い動きで熊の後ろ脚に取り付き切り裂いていく。
脚を斬られ、威嚇行動を取れなくなった熊の魔物の背後に乗り首を切り落とす。
カチヤの手にあるのは水を形成した剣。
カチヤの魔法剣を試すために今日も森に来ている。
「こんな小さくしてよく切れるよな」
ラインハルトは呆れ気味に言ってくる。
俺もそう思う。
大剣の方が攻撃力が高く感じるのは前世のゲームの記憶が
関連しているわけではないと思う。
「アディーが、臆病なだけ。あんなにおっきくする必要ない」
カチヤはブロードソード程度しか形成していない
「いやいや、臆病じゃないし。切り裂くには相応の刃渡り必要じゃない?」
流石に弁明するが
「一撃で倒そうとすること事態が臆病。大体、すぐ火に頼るのはアディーの悪い癖。森で火を使うなんて危険」
最もな意見ですけどね?
「この魔法、イメージ次第で切れ味変わるから大きくする必要ない。それに、火だと毛皮が痛む、水が最適」
なるほど・・・・・・。
やっぱり、色んな人に使用感を確かめてもらうのが一番だな。切れ味の変化なんて考えてもいなかった。
因みにカチヤは、小さい小刀様のもので投擲をするのだがそれも完全再現が出来る。
使用武器によるイメージの固定がなされるようだ。
恐らくクラウディアなら、矢を番える際に石の矢や水の矢、火の矢など使うことになるんだろう。
まだ使えないけどね。
砦の責任者、アーノルド大隊長にも話を聞いておいた。
大隊長の話では最近特に、獣や魔物の数が増えていて
森から山に入るルートは進みずらいらしい。
そこで3つ案が上げられた。
1つ、完全遠回りだが森・山を迂回して反対側から登山をする。
これは完全に賭けだ。反対側でも同じことが起きていたら足止めされるのは必至。
また他国の領土なので、先ずは領主などにお伺いを立てなくてはならない。
魔法行使願の出番だが、正直何をされるか分からない。
下手をすると戦争の幕切りになってしまう。
それだけは避けたい。
2つ、獣・魔物を無視して登山を始める。
現状無理があるが急ぐならこれしかない。
デメリットとしては、山中で戦闘の連続だろう。
昼夜問わず戦闘しながら登山をする。
厳しい、ヴィルトカッツェ山を想うと出来れば強行軍は避けたい。
3つ、時間はかかるが獣・魔物を減らしてから先に進む。
堅実だが本当に時間が掛かるし、完全に足止めされることを意味する。
下手をすると冬が来て入山できずに次の春を待つことになる。
だが、安全策と言える。
月ごとに100の魔物、400の獣を戦果としてきたこの砦の現状。
常識で考えれば相手も生き物であることを考えれば
何時かは途切れるはずだ。
もう2年程こんな現状なんだが・・・・・・。
どれにしても精神を擂り切らすことは請け合いの選択肢だった。
だけれども、時間を気にしなければ3の一択しかない。
と言うことで、カチヤの魔法の訓練がてら滞在費を稼ぐ日々を過ごしている。
ある程度大型種の魔物を討伐できるようになり、パーティーとしても安定してきている。
最近はクラウディアも
「魔法覚えようかしら?」
なんて言ってるので、基礎理論から講義をしている。
言葉は悪いが、今後の俺の仕事の実験台になってもらっている。
人に伝えるのは難しいが、それなりに出来ているのではないだろうか?
ハンスさんもたまに町で見かけるようになった。
何でも稼ぎの多い冒険者には好評のようで、冒険者が魔道具の箱で物資(肉)を運ぶのに何度も利用してくれるのだとか。
次第に行き先を指定する人もいて人を雇わなければなんて話すことがあった。
一月ほどたち秋も中ごろに差し掛かると俺は非常に嫌な焦りを感じるようになった。
それは、山を越えたところにある隣国の町から、肉や素材の買い付けに商人が出張ってくると言う話を聞いたからだ。
山の南側だけ魔物が大量発生することがあるだろうか?
流石にカチヤもクラウディアも訝しんでいる。
ラインハルトは、もう何度も領主や大隊長に大規模な山狩りの必要性を訴えている。
隣国との交易関税などで税収の上がっている領主は聞く耳を持たないし、大隊長は部下の消耗がだんだんと効いているようだ。
冒険者も多くいるが、損耗率は高くないが確実に被害が出てきている。
・・・・・・これは、誰かの軍事作戦なのではないだろうか?そんな疑いが頭をよぎる。
魔物を使った人海戦術による侵攻作戦。
それが3年目と考えると、随分と気の長い話に聞こえるが人種でなければどうだろう?
これから会いに行こうとしている木竜。
このファンタジーな生き物はこの世界の創成期から生きているらしい、寿命など無いのかもしれない。
だが、積極的にこの世界に介入してくる様子も無いようなので、今回の件とは無関係と考えてもいいだろう。
人の世に積極的に害をなそうとする存在・・・・・・。
絶賛休戦中の魔族、確認すると戦時中以外は平均200歳くらいの寿命があるようだ。
このあたりが怪しく感じるが・・・・・・?
何故魔物を使うんだろうか?
一般の獣も混じっている状態で・・・・・・考えすぎなんだろうか?
「ラインハルト、このあたりで魔族の目撃情報ないか?」
ラインハルトも同様のことを考えていたのだろう。
「いや、気にはなったが無かったな」
無駄な警戒になるならまだいい。
しかし、本当に魔族がいたら?
・・・・・・悩んでいる暇はなさそうだ。
「明日から山に入ろう」
「それしかないか・・・・・・」
宿の部屋で、ラインハルトと話し合った結果強行軍を取り行う他ない。
そう結論付けた。
カチヤは付いて来てくれるだろうけど、クラウディアはどうだろうか?
俺とラインハルト二人で女性部屋に行き考えを話す。
そうすると、
「そうなると思って用意は出来てましてよ」
「うん、準備万全」
2人からそう返事があった。
水と少しばかりの食料を手に山を目指す。
アーノルド大隊長にも入山の事は言っておくことにした。
大隊長も魔族の可能性も少しは考えていたようで
一小隊を3つに分け入山する予定であったと聞く。
「それではアーノルド大隊長、手はず道理に別ルートでの探索を頼む。」
「了解いたしました。ラインハルト殿下」
それぞれ別ルートでの探索になり、俺達は先行することになった。
立派な角の鹿や牙の鋭い猪を相当数打倒し、森を抜け山の入口に立つ。
山の入口から見る山道は薄暗く不気味に口を開けている。
足を踏み入れると、より一層暗く感じる。
これは、日が傾いているからだけではないだろう。
そんな不安を掻き立てる空気をしていた。




