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27話

ヘルマン伯爵との会合を終えてから数日間。

ラインハルトとクラウディアは、宿の片隅でぶつぶつと互いには聞こえない大きさで呟き膝を抱えている。

「権利を父上に・・・・・・いや、では・・・・・・」

「ライニーとは別の・・・・・・そんなの絶対いや!」

・・・・・・と、こんな感じで先に進めないので馬車に放り込んで先を急ぐ。


あんまり待っていると冬になってしまう。

冬の八甲・・・・・・じゃなかった冬のアポステル山は勘弁してほしい。

アポステル山は、以前訪れたヴィルトカッツェ山とは比較にならない険しい山らしい、ヴィルトカッツェ山が大体1000メートルと考えて戦闘を含めて5時間の登山だった。

アポステル山は2000メートルオーバーのようだから、戦闘含めると半日以上は山の中にいなければならない。


まぁ、竜の聖地は王都側から見てアポステル山の裏にあるわけだから、どう考えても1晩は山で過ごさなければならないし、天候なんかを考えると麓の町で1週間ぐらい過ごして、今は夏も終わるころだから秋の内には帰路につきたい。


兎に角早く着くに越したことはない。

こうして馬車を買った訳だけど、意外としたなぁ~、山猫の革を売った全額使ったのは痛かった。

狼は、素材のほとんどを町の復興に使ってもらったから、討伐料だけだったし、それは御者を雇って無くなった。


思えばこのパーティーメンバー全員が、騎乗訓練を受けていないのも問題だよな。

後で、練習しよう!


雇ったハンスさんは元冒険者で肘の怪我により、冒険者を引退せざるを得なかった。

かと言って農業のような重労働もできず、日雇いの便利屋みたいな仕事をしていた。


「いやぁ~、坊ちゃん嬢ちゃん方に雇ってもっらて助かりましたよ。あんまり、いい稼ぎじゃなかったですからねぇ~」

器用に馬車を操作しながらそんなことを言いだした。

「あの仕事ってそんなに儲からないんですか?」

「はっきり聞くね~、そうですね。誰でも出来るお使いみたいなもんですからね」

「そういう人って結構いるんですか?」

「いるいる。年齢的に引退した人やら、若くても怪我した人なんかは、たくさんいるから仕事の奪い合いだよ」

笑っているけど、出発前にご飯に誘ったときなんて、かなり大量に食べていたから、大変なんだろうな・・・・・・。

「そういう人の中で、馬車を使える人少ないんですか?」

「いや、冒険者崩れなら大抵出来るんじゃないですかね?」

「だったら、町から町に人専用の馬車を定期的に走らせれば儲かるんじゃないですか?」


前世で言えば、移動の度に車を買わなければいけない。

そんな事なら、ある程度の距離を運んでくれるバスや、電車があれば助かるだろう。

車と違い馬車は馬が必要で、維持費だけじゃなく健康にも気を付けなければならない。

それを肩代わりしてくれる組織があれば楽だろう。


「そりゃいい! ・・・・・・けど、馬車を買うなんて貴族でもしませんぜ?」

「誰もやってないから儲かるんですよ。アポステル山についたら時間余るだろうからその間やってみたらどうですか? 馬車は御貸しするってことで、馬も見てもらわないといけないから、厩舎につなげておくだけじゃもったいないですからね。」

そう、動物は適度に運動させないと病気になる。

そこで運動がてら稼いでくれたら儲けものだ。


半信半疑のハンスさんだったが、小遣い稼ぎ程度ならと引き受けてくれた。

取りあえず、売り上げの2割をレンタル料に受け取ることにして

乗合馬車を開業することになった。


そうしているうちにアポステル山のふもとの町に到着した。

徒歩で1月くらいの道のりを2週間で走破した馬車の旅も終わりだ。

ハンスさんは早速、乗合馬車をするために街の中心に走り出していた。

「・・・・・・ここどこだ?」

ラインハルトは不思議そうに聞いてきた。

・・・・・・まだ立ち直ってなかったのね。


宿に行きこれまでの経緯を説明。

もちろん馬車の購入、乗合馬車の事も話して置いた。

不用心だと言われたが、そもそも山登り中に盗まれるのも一緒だろう。と話すとそれはそうだと、納得してくれたようだ。


その後立ち直ったクラウディアにも同じ話をしておいた。

一先ず、荷物を置き街の散策に出る。

話に聞いていたように冒険者であふれかえる街はほとんどお祭り騒ぎのようになっていた。


滞在費を稼ぐためにも、冒険者ギルドの支部に顔を出し現状を確認する。

「まだまだ魔物が多いから、いくら冒険者がいても足りないのよー」

そう言われて出発前に感じていた不安がよぎる。

ラインハルト達も同じ様子だ。


まだ日も高いので砦近くの森に入ることにした。

砦の責任者に話を聞くのは明日以降でもいいだろう。

森に入ってすぐに鹿が出てきた。

「本当にこんな人の近くまで来てるんだな」

「ああ、先ず考えられないことだな」

話し合っていると鹿は俺たちに向かって走り込んできた。


カチヤが鹿の首を切り落とす。

この程度なら俺でも出来ることなのだが、馬車でよっぽど退屈だったんだろう。

久しぶりの獲物に、目を輝かせ切り込んでいった。


「やっぱり、変。何かに怯えているみたいだった」

カチヤはそう言って辺りを見回す。

俺たちもそれに倣うが、周囲には鹿を怯えさせるような生き物の気配は感じられない。


ふと、ある事を思い出す。

「獣香って誰も持ってなかったよな」

「持ってくるわけないだろ、持ってきた魔道具も箱だけだしな」

そうだよな、それに獣香に獣を恐慌状態にする効果はない。

可能性が元から無いと分かっていても確認したくなる異常さだ。


それから3時間ほど散策していたが、鹿が3頭、猪1頭、魔物の鹿に猪がそれぞれ2頭、熊も1頭狩ることが出来た。

どれも同様に何かに怯えていたような行動が目立つ。


これが数年にわたり続いているのだ。

異常といわず何と言えばいいんだろう。

「熊まで怯えるなんて、この先には何がいるんでしょう?」

クラウディアも不安そうな顔をしている。


果たして、竜の聖地にはたどり着くことが出来るのだろうか?

そんなを考えながら街に戻ることになった。


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