25話
予定されている行程の半ばを過ぎたくらいで、
「アドルフ、そろそろ路銀の補充をしとかないか?」
ラインハルトが提案してきた。
一応国家のバックアップはあるが、子供のパーティーが大金を持っていることは好ましくない。と言う理由により、一か月ほど旅が出来る程度しかお金を渡されていない。
まぁ、魔法行使許可証で、領主辺りから金を引っ張ることは出来るが、ラインハルト、クラウディア両名は本意ではないようだ。
そんな訳で、宿場町の冒険者ギルドに立ち寄ることになった。
先ず、成人しているクラウディアはギルドに登録済みなので何ら問題がない、俺も仮とは言え一応登録している。
ラインハルト、カチヤは未だ登録していないため
形式的には俺か、クラウディアの見習いメンバー扱いになる。
この時問題となるのが・・・・・・。
「よー! 兄ちゃんら、依頼なら俺らといかないか?」
こういったルーキー狩りだ。
「いや、俺らは俺らでやるから、お宅らはお宅らで頑張って
おーい、行くぞー!」
極力相手にしてはいけない。
「待ちなよー! 優しい先輩たちが、手を貸してくれるなんてそうそうないんだぜ?」
全く、こういう手合いは何ですぐに威嚇行動に出るのかねぇ?
まぁ、慣れていない俺には効果てき面だけどさ。
「いやー、間に合ってるんですよねー! 連れもいるし、依頼じゃなくて換金なんですよねぇ~」
ここらで引いてくれないと大変なことになる。
主にあなた達ですよ? 先輩方。
「へー! 俺らは邪魔かい?」
あー、これ何言っても突っかかってくる奴かー!!
俺は平和主義ですけどね?
後ろの3人が・・・・・・。
「あぁ、邪魔だな」
ラインハルト君、言葉選ぼうか?
「邪魔でしてよ?」
クラウディアさん? 先輩方が数人立ち上がっちゃいましたよ?
「弱い人、いらない」
カチヤさん、相手さん武器に手をかけちゃったから。
「おー! おー! 威勢がいいね! タグがないところを見ると見習いだろう? 弁えないと教育しちゃうぜ?」
仲間であろう、他の5人と笑っている。
かなり卑下た笑い方だ。
正直好きじゃない。
冒険者ギルドでは、タグが発行される。
それは成人の証であり、市民の証だ。
それがないということは半人前の証。
なので、おこずかい稼ぎの子供ということ。
子供も指導は大人の仕事、善意ならいい。
しかし、たまにこう言う奴が現れる。
まぁ、前世的にゆうとカツアゲ、強請り集りだ。
相手の装備を見てみると・・・・・・。
まあまあ良い装備だ。
あ、あーあ抜いちゃったなぁ~
冒険者ギルドの説明で、施設内では許可なく武器を構えてはいけないと注意事項が設置されている。
殺し合いになるからだ。
絡んできた奴の取り巻きの二人が、抜刀している。
職員さんは見ないふりか・・・・・・。
剣は使いこんでいないし・・・・・・。
貴族の次男、三男かな?
帰属意識が薄い、我が国の貴族の中にたまに貴族然とした態度の奴がいる。
威張り散らして権力をかさにきてやりたい放題。
ただし、親の領地内に限る! みたいな奴
カチヤとラインハルトは、今にも突っかかっていきそうである。
クラウディアは、冷静にスリングを用意している。
・・・・・・流石に魔法行使許可証があっても、貴族の子息を惨殺したら大問題だろうな。
「分かりました! では、実力を見せてください。修練場で手合わせしてください。」
模擬戦用の木剣なら死なないだろう。
もう、お互い発散させないと駄目だろう。
王都から離れたギルドではあったが、中々に広い修練場だ。
家の訓練場の倍くらいかな?
ここなら誰にも迷惑をかけないだろう。
手合わせと言うことでルールを決める。
木剣や刃引きの装備で、相手が降参したら終わり。
気絶も負け、俺らが負けたら素材を含む金銭の一切を。
相手が負けたら、こちらの申し出をなんでも一つ叶える。
これを家の名に懸けて実行する。
これだけだ。
「じゃぁ、俺から行くか!」
相手側は大柄な男、刃引きの両手剣を振りまわすほどの力の持主だ。
一応、手合わせでは魔法を使用禁止をメンバー内で話しておく。
殺さないように配慮はしておこう。
カチヤが木剣を持ち立ち上がろうとする。
すると、ラインハルトが押しとどめて
「最初は盾役の俺の役目だ」
そう言って前に出る。
カチヤは不満そうだけど渋々了承したようだ。
「は! どっちのチビでも変わらないぜ!」
相手は完全にラインハルトを舐めてかかっている。
開始を告げると、両手剣の男は上段に構え走り出す。
間合いに入ったラインハルトの頭部目掛け剣を振り下ろす。
刃が付いていないとはいえ、両手剣の重量を頭部に受ければ
最悪命の危険性がある。
ニヤリと相手の男が笑みを浮かべる。
ラインハルトは、構えた盾で相手の初撃を受け流す。
両手剣が地面に刺さり、そこで終わりだった。
受け流し、相手の体が流れ頭が下がったところに
柄頭でのコメカミへの一撃。
意識していない一撃により、相手の意識は刈り取られた。
前のめりに崩れ落ち動かない相手をそのままに帰ってくる。
ラインハルトは、13歳になってからダグラス先生から一本とれるほど成長していた。
力自慢だけの相手では、身体魔法を使用しなくても十分に渡り合える。
俺たちにしたら当然の結果だったが、相手にとっては驚愕の結果だっただろう。
気を引き締めた顔になった相手側、二人目はショートソードを持って出てきた。
先ほどの男に比べれば小柄だが、それでも俺たちの誰よりも大きい。
一般的な男性と言った体格だ。
しかし、それなりに引き締まった筋肉質の男だ。
こちらはクラウディア、もちろん弓を持っている。
矢は鏃の無い練習用の矢だ。
「おい、ラインハルト
クラウディアはあれでいいのか?」
流石に不安になり聞いてみた。
クククと笑い
「アドルフは知らなかったっけ? クラウディアはあれで大丈夫だ」
見てれば分かると言われ視線を戻す。
近接戦で弓矢が不利なのは当たり前だが、さて?
開始と同時に男はクラウディアに迫ってくる。
対するクラウディアは矢を番えたまま放とうとしない。
袈裟切りに振るわれるショートソードを躱すクラウディア。
相手の剣の勢いを利用し和弓で言う日輪、アーチェリーで言うチップを相手の袖に掛け地面に引き倒す。
剣を持った手を踏み、制してから後頭部に鏃部分を当てる。
当然、番えた弓は引き絞られている。
「まだ、やりますか?」
冷たく言い放つクラウディアに表情はない。
「ま! 参った!! 撃たないでくれ」
男の懇願があり、勝負は決した。
クラウディアが残心を解くと周囲からワー! と歓声があがる。
いつの間にやらギャラリーが出来ていた。
観客がいては逃げることが出来ない貴族の子息は、伴を連れて俺たちの前に立つ。
4人が揃って戦うつもりらしい。
カチヤが俺の方を向き期待に満ちた目をする。
・・・・・・はいはい
「じゃぁ、行くか?カチヤ」
「うん!」
ラインハルトは
「任せた!」
と声を掛けてくる。
クラウディアは心配そうだが、正直カチヤだけでもおつりがくる、そう考えていた。
しかし、久しぶりのコンビでの戦闘だ。
剣と矢玉を持ちカチヤと並び立つ。
「おい! あとの二人はどうした!」
貴族の子息は、顔を赤くして怒鳴ってきた。
「こっちは二人でいいよ。な?」
「うん、十分」
「ふざけるな!」
観客は失笑気味に子息を見ている。
それが更に気に入らなかったのだろう。
明らかな殺意が俺たちに向けられている。
・・・・・・同じ殺意でも、あの狼に比べたら大したことないなぁ~
平然と受け止める俺たちに逆上して、開始の合図を待たず突っ込んでくる子息。周りにいた伴との連携が取れず、遅れて走り出す二人を横目に奥で弓を構える姿を捉える。
3人はブロードソード、一人は弓なら俺の相手は先ず弓の人だな。
指弾を連射し相手の弓を破壊。
武器を持ち変えようと視線を外したことを確認し、縮地で相手の裏に回り後頭部を柄頭で叩き行動不能にする。
カチヤは ・・・・・・子息相手につばぜり合いを楽しんでいる。
相手の三人はカチヤしか見ていないようで、俺が背後にいることに気が付いていない。
つばぜり合いをしていたカチヤが、力を抜き子息が転んだところで自分の近い方の相手を胴なぎの一閃で倒す。
もう一人は、流石にかなわないと思ったのか踵を返す。
すると、背後にいた俺に気が付き、ヒャーと高い悲鳴を上げて尻餅を付いて、武器を捨て戦意喪失を示す。
切っ先を三人目に向けたまま、カチヤに目を向けると、向かってくる子息の剣のことごとくを撃ち落とし翻弄していた。
流石に哀れに思えたので 一声かけて勝負を決めさせる。
カチヤの剣が子息の肩を捉えて模擬戦は終了となる。
伴の5人は流石に参ったのか大人しくしているが
子息はギャーギャーわめき、勝負の無効を訴えてくる。
観客からのブーイングも効果は無いらしい。
しょうがないのでこちらの身分を明かす。
流石にラインハルトも名前に、神妙になった子息は大人しく負けを認めた。
後日屋敷にお邪魔することにして当初の目的である換金を行おうとその場を離れると、周囲の観客たちが殺到し勧誘が行われた。
俺の影に隠れるカチヤとは反対に、ラインハルトとクラウディアはまんざらではない様子。
「おーい! 置いて行くぞ」
「まって! えっとそちらは・・・・・・」
と、いつまでも終わらない自己紹介に呆れた俺とカチヤは、二人を置いてギルドのカウンターに行くことにした。




