20話
クラウディアは思う。
旅の道中で見た魔法の数々を。
皇太子の婚約者なのを利用し集めた情報の数々を加えて、実際に見た魔法の有り様を。
アドルフと言う少年が5歳の頃、魔法を発見。
そこから8年で、戦闘に使用出来るほどの技量を見せつけた。
正直、魔法に関して懐疑的であったクラウディア、1000年も前に無くなった能力が今も有効な訳がない。
そう考えていた。
少なくとも実物を見るまでは。
猫の討伐の仕方や、山猫に対する攻撃。
魔物の防御を意に介さないそれらは、人の業と言うには強力過ぎないか?
手にした情報の中には、虎の討伐の話もあった。
恐らく魔法の威力に依るものだろう。
何でこんな研究を始めたんだろう?
聞いてみると
「今度は無くならないように、広めたいじゃないか!」
と、普及が目的のようだ。
虎の毛皮を貫通できるのなら、一般的なフルプレートを貫通できる威力を持つということ。
魔法の普及・・・・・・。
それは戦争の方法が、一変するのではないだろうか?
少年の笑顔が恐ろしいものに見えてくる。
今は休戦中だとしても魔族と言う明確な敵がいる。
それがいなくなったら?
彼自身が使わなくても習得した誰かが、人間に向けて魔法を使うのでは?
・・・・・・いや、考えても意味はないのかもしれない。
彼が生きているうちに戦争が終わる保証もないし、魔法が技術として確立するのかも分からないのだから・・・・・・。
◇ ◇ ◇ ◇
クラウディアが神妙な顔をしている・・・
やっぱり馴染めないのかなぁ~
女子同士仲良くなってもらえればいいんだけど、カチヤはあんまり人に懐かないからなぁ
ラインハルトは、そんな事より外の世界が楽しいみたいで、ずっと目を輝かせてるだけだし・・・・・・。
俺には、魔法のこと以外聞いてこないし・・・・・・。
後でカチヤに頼んでみるか? ・・・・・・ダメ元で。
しかし、魔法も大分使えるようになってきたな。
【弾の雨】
これは意外と使い勝手良さそうだな。
属性変えることで色んな魔物に対応できそうだ。
空気中の魔素を使用する方法は、使用者に負荷が少なくていい。
範囲はあまり大きくできないけど・・・・・・。
修練の問題なのか、術者の問題なのかは追々考えることにしよう。
これまで考案した魔法。
火球魔法、いや、球体魔法とでも言うのか?
各属性を圧縮して撃ちだす魔法。
射出速度、溜めともにかなりの速度で使用可能だ。
単発が基本だが修練次第で連射可能のようだし、初級の魔法としては理想的だろう。
名前は・・・・・・弾丸でいいか?
安直かな?
弾の雨は狭い範囲を攻撃する魔法。
範囲設定や射出速度などを考慮すると、一人の時に使いずらい。前衛がいることが条件になるけど、初見で回避は、かなりの難易度になる・・・・・・はずだ。
少なくても俺は回避が出来ないだろう。
後は山猫に使った柱の魔法。
これも属性を変えて使用可能だ。
ただ、水と風なら視界を邪魔しないけど、土と火は邪魔なんだよなぁ~
特に火の柱は、すこぶる評判が悪い
一度試しに使ってみたけど、カチヤとラインハルトが『危なくって突っ込めない』
そう言って使用を禁止させられた・・・・・・。
そうそう、縮地後の地面に残った残存魔力を使用する魔法。
足跡の魔法。
これは、そもそも縮地を使えないと意味がないものだし、近接戦闘時は自分が危なくて使えない。
遠距離じゃ足跡を残せないから使えないし、正直だったら柱でいいじゃん、ってことになるよなぁ~。
逃走時の目くらまし位に考えておくか。
後は武器の使用に合わせた使用方法が、あれば良いんだけど・・・・・・。
魔法剣ってロマンだよね!
ただ・・・・・・剣が燃えて切っても意味ないんじゃね?
多少固いなら身体強化で何とかなるし、それ以上に固いなら、そもそも直接攻撃自体に意味がなくなる。
熱や衝撃に武器が耐えられるのか? って言う疑問も残る・・・・・・。
・・・・・・ロマンはロマンでいいか!
必要なら作ればいいし、誰かが考案するかもしれないし!
それ以外にどんな魔法があればいいかなぁ~。
そんな事を考えながら歩いていると、途中の町が見えてくる。
警備の人数が多いような気がする・・・・・・。
普通門の前には2人程度で事足りるはずだ。
しかし、櫓の人数を含めると10人は居る。
厳重すぎる警備が気になりラインハルトに確認してみる。
「ラインハルト、やけに物々しくないか?あの町」
ラインハルトも腑に落ちないようで、
「あぁ、ちょっと変だな」
と、
「武装も、変」
カチヤが櫓の兵士を指さし一言。
・・・・・・確かに弩を持っている。
王都でも、櫓の上で弩を持つことはあまりない。
戦に対する準備だろうか?
・・・・・・王国の中央に近いこの町で、どこと戦をするのか?
ないな!
少なくとも、山に入るまではそんな情報は無かった。
では、何故か?
一つしかない、強力な魔物が近くにいる。
それしかないだろう。
俺たちは互いに頷き合い、町へと走り出した。
警備の兵士には、魔物と遭遇したのかと勘違いされたが、二言、三言話すと誤解も解けた。
改めて理由を聞く。
「こんな厳重に何に、警戒しているんですか?」
兵士は青ざめた顔で答える。
「狼が出たんだ・・・・・・群れで・・・・・・」
この世界に生まれて、何度か目の絶望が迫っていた。




