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19話

ラインハルトの許嫁、クラウディア。

年は俺たちの2歳上の15歳。王族の一角を担う大家の娘である。

成人の儀で捕まってしまい、夢であった世界を行脚することが出来なくなった、本人曰く哀れな女。


王族に多い茶色の髪を伸ばし、ポニーテールを作っている。

今、は胸部に金属板を打ち付けたレザーアマーで、隠れているが中々の持ち物を持った、女性性が表面に出ている。

まさに女性と言ったスタイルの持主だ。


だが、あまり視線を向けてはいけない。

俺が視線を向けるたび、カチヤの表情が般若に近ずいてきている。

最近のカチヤは、意外と自己主張が激しい傾向にある。

スタイルの話ではない、行動の話だ。


カチヤは独占欲が強いのか、家のメイドさんにも警戒心を向ける。

お世話になった人もいるから、やめて欲しいのだが・・・・・・。

転生してから目覚めた本能に従うと、かなり痛い目を見るようになっていた。

カチヤの投げた木炭が、壁に刺さったのを見てから俺は、意識して自重するようになった。


話を戻すと、やはり他の王族と同様の価値観を持つクラウディアが、何故ラインハルトのような常識で考えれば、王位継承権上位の許嫁になることに了承したのか疑問が生じる。


夢をあきらめて権力欲が高まったのか?

否、

婚姻した王族に適用される、ある特例に期待して許嫁になったのだ。

あまり使用回数の少ないその特例。未成年の王族と婚姻してから成人となった王族が、成人の儀を成功させると、その配偶者も出奔が許されるのだ。


かなり大胆な賭けだが、クラウディアはそれに掛けていると言う。

さすがのカチヤも呆れていた。


そんなクラウディアが、何故今回の旅に同行したのか?

それは、

「好奇心ですわ!」

だそうだ。


まぁ、ラインハルトを好いていないのかと、思われがちだが、彼の目がカチヤに留まると、カチヤ同様般若のような形相になる。

理由の半分はラインハルトの監視もあるのだろう。

王宮でお互い大変だなと、互いの肩を叩きあう姿があったのは内緒だ。


そんなクラウディアが、どの程度の戦力になるのか?

そう、心配していたこともあった。

しかし、旅立ちすぐにそんな懸念も無くなった。

クラウディアの武器は俺と同じ弓矢なのだが、大きく違う事がある。


クラウディアは、飛び立った鳥を射落として見せたのだ。

同じ弓使いの俺には、その凄さがよくわかる。

鳥をいることは俺にもできる、飛び立つ前なら可能だ。

しかし、飛び立ってしまった鳥をいることは、並の腕ではできない、俺には無理だった。


俺の弓は、あくまでも軍隊で使用する弓術だ。

周りの弓兵と、タイミングを合わせて同じだけの距離を飛ばす。

精度のいらない弾幕の一部としての弓。

対してクラウディアの弓は、冒険者としての弓術になる。

精度と威力が、混在する個人技としての弓。

用途が全く違うのだ。


そんな腕前を見せつけられ見惚れていると、カチヤが不貞腐れた顔をする。

違いますよ? 技術に関心していただけで、本人には見とれてないですよ?


北部に向かう街道には、森を通り抜ける箇所が多く存在する。

王都の周りの森を切り開けば、もっと安全に行き来が出来るのだろうけど、国民総冒険者を掲げる国にとっては、修練場のような森が街の近くにあるほうが都合がいいのかもしれない。

そんな事を考えて森を歩いていくと、小一時間程度で森を抜ける。

幸いなことに森での襲撃は少なく、猫も蜘蛛も現れず、野犬が数匹群れを成し襲ってくる程度で済んでいた。


そして森を抜け、第一の関門と言うべき山が姿を現す。

王都北部は山岳地帯が多く、いくつかの山を越えて目的の竜の聖地に至る。

その超えねばならない山々の中王都に近く、最大限に警戒をしなければならない山。

ヴィルトカッツェ山。


猫が多く生息している地域に挙げられる山。

猫だけではなく、山猫も生息していると言われる山。

そんな危険な山を通らずとも、迂回できる街道もある。

だが、今回は俺の我儘を通す形で山越えのルートを選んだ。


2年前の失態を払拭する為、そしてクラウディアを加えたパーティーの連携を確認したかったのだ。

大体うちのパーティーは優秀すぎる。

俺は魔法が使えるだけの、2流剣士のようなものだが、ラインハルトは魔法を覚えて盾役としてかなり優秀だし。

カチヤは剣士としては大したもので、野犬であれば15頭くらいなら単独で撃破できる実力になっていた。


道中が、毎回野犬程度なら何の問題もないが、目標としている山脈は最近異変が起きていると国王陛下に教えられた。

草食系の中型の魔物が、山から逃げ出すように砦に現れるようになったのだとか。


只の猪だけではなく、猪の魔物まで砦に現れたことから、より大型の肉食系の魔物が居付いたのではないか?

国はそう結論付けたらしい。


探索に掛からないため詳細は不明。地域の領主は税収に大喜びで国の警戒を大げさだと、笑い飛ばしているらしい。

その話を聞いた俺は直感的に、その「何か」に遭遇すると考えている。

虎以上の何かが行く手を阻む。

そんな気がしてならない。


そんな訳で、前哨戦と連携確認の意味を込めて、猫討伐にこの山越えを選んだ訳なんだけど・・・・・・。

あまり整備されていない山道が、こんなにつらいなんて・・・・・・。

0.5を発動し、脚に身体魔法を掛ければ楽勝なんて考えていた、昨日の自分を殴りたい。


昨日、麓の村で宿を取った際ミーティングにて、皆に山越えを提案する。理由もちゃんと説明した。

ラインハルトは、考えすぎだと言って笑っていたけど、旅をするうえで連携の確認は重要だからと了承してくれた。


「山登り、初めて」

カチヤが、不安そうにそう告げてきたとき

「大丈夫!身体魔法で楽勝さ」

と、大見栄張ったが俺自身も山は初めてだった

正直甘く見ていたのかもしれない。


常に警戒しながらの山登り、遭遇する猫との戦闘。

身体的には、魔法で楽が出来るが、精神的にはかなりの負担が生じる。


中腹を過ぎたあたりから空気が変わり、何かの視線を感じる。

警戒心を高め進む俺たちの前に、それは姿を現す。


山猫の魔物だ。

猫とは違い大きな体躯。

正面から、堂々と現れたその眼光は鋭い。

周りには、数匹の猫を連れてこちらと対峙する。


なわばりに侵入したから、遭遇したわけではないようだ。

いや、山と言うなわばりを荒らす人間を討伐しにきたのだろうか?

明確な殺意をこちらに向けてくる。


俺たちは隊形を整える。

正面にラインハルトが盾を構える、風の障壁も展開しているだろう。

その横にカチヤが剣を構える。

後ろは俺とクラウディアが、互いの射線が被らないように立つ。

弓兵と俺が後衛に並んだ様は、さぞかし俺を臆病に写すだろう。


しかし、魔法発動にライムラグのある俺は、この位置が一番いい。

「雑魚は弾の雨(バレット・レイン)で一掃するから大物を囲んで潰そう」

仲間に大体の作戦を伝える。

頷きが帰ってくると、山猫が吠える。

ギャァァァァァァ

山猫の声に合わせて、猫たちが突進してくる。


突進してくる進行方向に、水弾の雨を降らせる。

空気中の水蒸気と魔素を集めて、上空から地面に向け撃ちだされる水弾。

水魔法考案の時に思いついた範囲魔法だ。


残念なことに、一発一発には致死性のダメージはない。

だが、それでも数を集中させると・・・・・・。


無警戒の頭上から来る攻撃に、猫たちは気付いていない。

撃ちだされた水弾が、地面に着弾する。

水煙と無防備に宙を舞う猫たち。

突進の勢いが鋭い猫の魔物に、上からの攻撃。

頭や前足、または地面が抉られ推進力を前方に伝えられなくなった。

そのエネルギーに耐えられなかった、猫は体を投げ出す。

防御姿勢を取れない猫の上に、さらなる水弾が打ち付けられる。


山猫の取り巻きの大半が事切れ、数匹は辛うじて死ななかった程度。

形成的にはこちらの圧勝だ。

だが、山猫はこちらに向けた殺意を緩めることはしない。

と言うか俺に殺気が向いているような気がする。


水弾でぬかるんだ箇所を、迂回しながらゆっくりと移動を始める山猫。

それに呼応するように、やや後退しながら距離をとる。

山猫が歩を止めると、クラウディアが番えていた矢を放つ。

巨体の割に俊敏な山猫は、矢を躱しこちらに突っ込んでくる。

ラインハルトは盾を構えて待ち構える。

風の障壁で、幾分か緩和されているのかもしれないが、巨体の突進を受け止められず後方に飛ばされる。


ラインハルトにぶつかって、勢いが殺された山猫の前足を狙い、カチヤが剣を下段から振るう。

ギャァァ

と、声を上げ後退する山猫。

次いで、クラウディアの矢が山猫の目を捉える。

しかし、まだ倒れない。

起き上がったラインハルトと、カチヤによる2方向からの攻撃。

ラインハルトが、踏み込んだ右側の前足が振るわれる。


ラインハルトは、受けきれないと判断したのか、受け流すように盾を振るい山猫の攻撃をしのぐ。

そのすきに、カチヤが上段から剣を振るう。

金属音が轟き、体勢を崩す山猫、しかしカチヤの剣は山猫の毛皮を大きく切り裂くことはなかった。


ならばとラインハルトが風の力を乗せ、シールドバッシュを行う。

崩れた体勢に逆らわらず、側面に回転して逃げる山猫。

前衛二人に殺意を投げ付け向き直る山猫。

山猫の胴体に矢が刺さる。クラウディアの放った矢だ。

クラウディアに視線を向ける山猫に見て確信する。


山猫の意識から俺が抜け落ちた。

クラウディアの放つ2の矢を飛んで躱す山猫。

そこへ真下から岩の塊が落ちだされる。

魔力によって、押し固められた地面を山猫の腹目掛け、全力で撃ちだす。

意識していない、腹部への攻撃に仰天したのだろう。

防御体制の取れていない山猫に、ラインハルト、カチヤの剣が振るわれる。

ラインハルトが、首をカチヤが腹を切り裂き山猫を葬った。


ふぅ、優秀な人材が3人もいると楽出来ていいわぁ~~。

これなら、虎レベルでも何とか対応できるかな?


吹き飛ばされたラインハルトも、大きな怪我はないようだ。

飛ばされた先に、風でクッションを作って受け身を取ったのだとか。

ラインハルトは応用が効いていいなぁ。

俺も自分の武芸に、魔法が組み込めればもっと楽に戦えると思うんだけど・・・・・・。


まぁ、課題があったほうが張り合いがあっていいな。

さて、この山での目的は達成された。

長居は無用だ、早く抜けないとな。


皆に声をかけ、先を急ぐことにする。

山猫や猫の討伐部位を剥ぎ山を下っていく。

こうして最初の難関を後にするのだった。


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