15話
国家の最大の義務。
それは、国民の安全を保障すること。
これは、異世界でも変わりはない。
・・・・・・いや、異世界だからこそ、より安全には考慮が必要だ。
セロフィー国王城に、またも懸案事項があげられる。
虎、獅子、野牛の魔物が国内で発見される報告が、年間数百件は上がってくる。
発見後、捜索し早急な対応が要らないため、軍事演習に回される案件。早急の対応が必要なら冒険者ギルドに依頼、規模が大きいなら、王国軍を出動。
規模が大きすぎるものは、議会を招集と国王が見聞きする報告は意外と多い。
その中でも、ネズミの魔物は意外と厄介だ。
雑食性で、森の掃除に一役買っている側面があるが、都市部では駆除対象に挙げられる。
増えすぎず減りすぎずと、管理できれば問題ないが、ネズミ算と揶揄されるように、繁殖が早く冒険者ギルドでも、常時討伐の依頼があり、尻尾を持っていくと換金してくれる。
話が逸れたが、近年軍の出動案件が増えている。
殆どが小隊規模で、大規模なものは年一回あるかくらいなのは変らない。
魔属の森周辺地域での、出動が多いのも例年通りだ。
北の山脈での出動が増えている。
山村や砦近くに、小型から中型の魔物が多く発見されている。
冒険者ギルドにも、要請して人員を増やすよう打診されている。
専業の冒険者にとっては、思わぬ特需である。
山深くに入らずとも獲物が取れる。
周辺の町でも、多くの魔物の肉や素材が行きかっている。
税収の上がった領主なども大いに喜んでいる。
国王や宰相は別だ
軍の出動や冒険者の人員確保する事態を懸念材料としている。
何か原因があるのではないか?
だが、原因となる事象は今の処発見されていない。
◇ ◇ ◇
最近、国王陛下たちは忙しいようで、会議は延期なることが多い。
ラインハルトも暇なようで、よく俺の家に来ては手合わせや魔法の研究に付き合ってくれる。
こいつ、本当に成人の儀逃げ切るつもりなんだな・・・・・・。
ラインハルトは、未だ他者に魔法の使用法を上手く伝えることが出来ない、伝える気もないみたいだが・・・・・・。
こと防御魔法については、面白い発想の持主だ。
先ず、ただ風を起こして身を護るのではなく、角度を付けて受け流す、風の向きを変えて攻撃を撃ち落とすなど、色々な工夫をしているようだ。
「ラインハルトは、どんなイメージで風を起こしてるんだ?」
王子を呼び捨てなんて、不敬極まりないが、以前殿下と呼んだら
決闘を申し込まれ負けてしまい、それ以降呼び捨てを義務付けられた。
「簡単さ、盾の使い方を参考にしてるんだ」
そこからは表現が、独特すぎて分からなかったが、図解してもらうことで何となく分かってきた。
盾のいなす使い方が参考のようだ。
攻撃の場所や速度に合わせて、角度を調整し自分に届かないようにする。
また、風を出すだけではなく、その場に留めるのは
「盾を投げる奴は居ないだろ?」
と、ラインハルトの中では、魔法=盾と言う方程式が出来上がっているようだ。
盾を使う流派の先入観と言うべきか。
イメージの形状としては、ドーム型だったり壁であったり、それこそ円形盾のように、細かくイメージを変えているようだ。
しかし、戦闘スタイルによる、イメージの違いと言う観点は意外と面白い。
剣や槍を使う人は、どんなイメージで魔法を使うのだろうか?
普及した時が楽しみだ。
と、他人に教えることばかり考えてはいられない。
先ずは、自分である程度使用できなければ。今の火属性は威力が安定してきているが、広範囲に使用できていないし、風はラインハルトの魔法だけだ。
最低でも水と土、回復系の魔法は欲しい。
中でも回復系は急務だ。主に俺の安全のために。
まぁ、回復系は目星が付いている。
身体魔法だ。
身体魔法の内、0.5と8段階は回復機能を有していることが、分かっている。
ならば、それをベースに改良していけば、回復魔法に行きつくのではないだろうか?
8段階は、まだまだ使用できないので0.5で試してみる。
先ず指に小さな傷を創る。
怖ぇぇぇ!!
やっぱり、自分の体に小さくても傷を創るのは勇気がいるな。
んー、えい!
はぁ~、気分のいいものではないけど傷が出来た。
0.5を使用する・・・・・・。
治った・・・・・・。
・・・・・・そうだ、0.5は小さな傷なら治るんだった。
意味ないじゃん!!
どうすんだこれ?
治んないくらい深くいくか? いやいや、失敗したらどうすんの?
えー、他人に協力してもらうしかないのか?
悪いし、最初の人体実験は自分じゃないと、いきなり他人て本当の人体実験になっちゃうじゃん!
・・・・・・実験方法考えるのに時間が掛かるな。
しょうがない。
水に行くか・・・・・・。
隣で見ているラインハルトは、不思議そうな目で俺を見ている。
いきなり自傷行為したと思ったら、傷を治して落胆している。
変な人確定な行為だ。
気を取り直して、ラインハルトに水を出すことを伝える。
言っておくことで、何を使用としているのか分かる。
伝達って大事だな。
先ずは、イメージだ、目を閉じイメージを膨らます。
水が出るイメージ・・・・・・湧き水じゃない・・・・・・。
そう、水滴が落ちる時って球体だったけ?
そんなイメージで・・・・・・。
指先に血が集まる感覚。
血液のように動脈が拍動する、魔力が右の人差し指に集まってくる感覚。
0.5の表面を滑って水が指先に集まるイメージ・・・・・・。
目を開けると水の球体が出来ている
成功か・・・・・・次はこれを飛ばす。
飛ばすイメージは火魔法でさんざんやっている。
水を圧縮する、弾速を設定、照準はいつも剣の訓練で使っている金属鎧を付けた的だ。
鎧の胸のあたりに向け撃ちだす。
短い風切り音がして的が揺れる。
命中したようだ・・・・・・。
確認しに行くと丸い穴をあけていた
成功かな?
元々水って、水圧上げると威力出るから最終的にはウォーターカッターみたいな、使い方が出来るようになれば一段落かな?
んー、これも単体攻撃みたいになってるし。
あー、雨の水圧が上がったイメージなら範囲的に使えるかも
「アドルフって意外と攻撃的なんだな」
ラインハルトは引き気味で声を掛けてきた
「おいおい、先ずは水が出来たことを喜んでくれよ」
全く・・・・・・簡単にやってみたけど
これはこれで結構危険だったんだぞ・・・・・・。
右手に視線を移す
人差し指だけ・・・・・・太くなってる・・・・・・。
人差し指を押してみると
跡がくっきりと残る・・・・・・浮腫んでいる。
何故だろう・・・・・・。
ラインハルトも水を出してみた。
円形の水の盾が浮かんでいる。
波紋が見える・・・・・・対流でもさせているのか?
ラインハルトは、水を丸めたり伸ばしたり色々な形状に変えていく
一通りやり終えると水の盾を地面に落とす。
水が大地に吸い込まれ消えていく。
浮腫んでいるところがないか確認させる
「いや、どこも腫れてないぞ?」
「でも、俺はほら」
右手を見せる
「え? あんな一瞬だったのにこれ?」
ラインハルトは顔を青くさせ驚いている
手などを確認させてもらったが、ラインハルトは浮腫みはなさそうだった。
・・・・・・これはあれか?
得意属性と不得意属性がある感じか?
俺は今もって風を出せたことはない。
水は出せるが浮腫みが出る。
ラインハルトは火は出せない。
・・・・・・もう一つくらい出せれば相関関係のヒントになるだろうけど。もし、一番相性が悪いと最悪・・・・・・。
んー、魔法使いの人数増やさないと分かんないよなぁ~。
けど、得意属性がかぶっていたら検証にならないし・・・・・・。
水に魔力流したら判別できないかな?
いやいやいや、水〇式で分かるものか?
・・・・・・一応・・・・・・やってみるか。
ラインハルトの魔法で桶に水を貯めてもらう
手をかざし魔力を流す・・・・・・。
変化がない、味も・・・・・・変わらないな。
はぁ~、何かないかなぁ~。
得意属性の判別が出来たら、副作用の危険を大きく排除できる。
地面に横になり空を見上げる。
そもそも、魔法が使える人間と使えない人間がいるのか?
この世界の人間は、農夫でも身体魔法の素養を持っている。
要するに戦う必要がない人間もある程度の魔法は使えるんだ。
何で使えるんだろう? 前世の漫画やラノベなら素養の有無があった。
寧ろ、素養の有無に関係なく使える方が違和感がないか?
ラインハルトはおもむろに聞いてくる
「なー、何で水を出して腫れたんだ? 折れたのか?」
?
「これは腫れたんじゃなくて浮腫んだの。体に水がたまると浮腫むんだよ」
「?何で水が溜まるんだ? 水は体にないじゃないか」
何を言ってるんだ?
「水ならあるだろう?血液なんて液体じゃないか。傷が治るときだって水が出るじゃないか」
「そうか?そんな事あるのか?」
もう~
指にあるささくれを剥き血液を出す。
ある程度絞ると浸出液が出てくる。
「ほら、これも水だろ?」
「へー、これがそうなのか?」
イッタ!!
コラ触んな! 汚いし体液を触るなんて非常識な!
非・・・・・常識・・・・・・?
「ラインハルト! 誰にも習ったことないのか?」
「あぁ、知らなかったな」
起き上がり駆け出す。
この時間母様は・・・・・・いた!
「母様!」
びえぇぇとヘルガが泣き出す。
「こら、アドルフ!ヘルガをびっくりさせないの! ほら、よしよーし、悪いお兄ちゃんでしゅねーー?」
ごめんなヘルガ。
ヘルガは俺が謝ると泣き止む。
ヘルガが泣き止んだところで母様に質問する
「母様、これ見てください」
さっき剥いたささくれの所を見せる
「あらあら、痛くしたの?」
そうじゃなくて!
「傷が治る過程で水が出るのを知っていましたか?」
「いいえ、知らないわね」
そうか・・・・・・そうなんだ!
よし! とこぶしを握る俺。
後を追ってきたラインハルトと母様は指に傷を作ったことを喜んでいる俺をさぞ奇妙に見ていただろう。
だがついに見つけた。
副作用が大幅に抑えられる糸口を。
これならどんな属性も使うことが出来るかもしれない。
もっと情報を集めないと・・・・・・。
どんなきっかけを掴んだんでしょうか?
次回に続きます




