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14話

 ある程度の仮説と、それに伴う実験を繰り返すと、日が傾いてくる。

急ぎ王都に戻る。

カチヤは、もう俺の行動には慣れているし、先生もほとんど諦めたような表情だ。

ラインハルトには申し訳ないが、涙を飲んでもらおう。


 元々一週間の行軍予定が、2日目で帰還である。

ラインハルトも王族だ。外の世界にしか興味を持たない者が、初めての遠出だ。

楽しくないわけがない。

若干不満顔で、渋々帰還に了承してくれた。


魔法の基礎理論のひな型が、出来掛かっているのだ。

熱いうちに文書に起こさないと、概要は変わらないが詳細が変化してしまう可能性がある。

俺は、記憶に関して自信がない。

そのため、大変な我儘であるのを承知でのお願いなのだ。


街に帰ると、短い詫びをメンバーに告げ、自宅に向かう。

時間的には夕飯も終わり、後は寝るだけ。

街は、ほとんど寝静まっている時間帯だ。


家につくと勢いよく戸を開ける。

帰宅のあいさつも、そこそこに自室に籠る。

何事が起きたのかと両親が見に来る。


「アドルフ!静にせんか、弟たちが起きてしまうだろう」

「そうよ、ヘルガちゃん起きちゃったわよ?」

母様の胸でぐずっている女の子2歳になる俺の妹だ。

母親似に、育ってほしい可愛い妹。

年齢は数え年なので、やっと新生児期を脱して、もうすぐ離乳期に入るのか?


詳しくは忘れたが、そんなところだろう。

それよりも、

「すいません、基礎理論の概要が分かってきたんです。ヘルガもごめんな」

両親と妹に謝り、大体の説明を行う。

母様はヘルガをあやしながら聞いていたが、次第に興味を失ったのかヘルガとともに退室した。


会議のメンバーである父上は、興味深そうに話を聞いている。

書き物をしながらの説明になったが、よく聞いてくれていたと思う。

父上がいなかったら、盛大な独り言をしゃべっている少年と言う、何とも物悲しい図が出来てしまっていただろう。


着想を得た、設置型の魔法も披露した。

一段落した書き物を終え、実演にも付き合ってくれる。

優しい父親だ。


 先ずは移動、イメージ、着火と繰り返し行う。

「ふむ・・・」

父上が思案顔でうなっている。

「どうしました?」

「いやな、アドルフお前、中伝技いつ使えるようになった?」

「?」

いやいや、見てもいない技、それも縮地みたいな、ザ・達人みたいな技使えるわけがない。


「父上、習っていないので使えるはずないですよ」

「もう一度移動とやらをやってみろ」

言われるまま移動だけを行う。

まぁ、家の訓練場はそんなに広くない、父上の全力のアルムブラストの範囲より狭い、20メートル四方程度の大きさだ。


 一般の家から考えれば、大きいがカチヤの家のように、門弟を集めて指導する家に比べれば狭い方だ。

あまり魔力を込めると、壁に当たってしまう。

程よく魔力を込め移動、5メートルを一跳び。

結構疲れるため、あまり長距離の移動などには使えないが、緊急的に回避する分には使いやすい技だ。


父上の元に戻ると、

「うむ、間違いなく中伝の歩法ヴァンデルンだな」

「これがそうなんですか?」

これなら正直、魔力の運用が上手い人なら誰でもできるんじゃ・・・・・・。

と、かなり失礼な事を考えていると、

「ヒントから、着想に至るかが中伝の試験だからな」

・・・・・・日々が試験なんて思うわけないでしょ!


「これで名を贈ることができる。フラメボーゲン。そう名乗るがいい」

とうとう、ミドルネームをもらうことが出来た・・・・・・。


「どんな意味なんですか?」

「炎の弓だ」

・・・・・・なんで矢じゃないんだろう?

「他家になるが成人しても家族だからな!」

だそうだ。


 この人の息子になれてよかった。

そう、素直に思った。


 そうしたやり取りの翌日、直ぐに登城しようかとも考えたが、相手は王様だ、RPGのように簡単には会えない。

なので家で、執筆作業の詰めを行う。


 あまりに熱中していたため気づかなかったが、いつの間にかカチヤが来ていたらしい。

カチヤは、弟のクリストフと遊んでいてくれていたのだろう。

俺の部屋の隅で、一塊になって眠っていた。

・・・・・・弟よ。兄の婚約者と兄より先に同衾するなんて、年が近ければ殴ってでも起こすところだが、3才なら急な電池切れも仕方がないか・・・・・・。


「カチヤ風邪ひくぞ、クリスも夜寝れなくなるぞ」

2人を優しく起こす。

「アディ、こっちおいで」

「あ、おい! カチヤ!!」

床に引きずり込まれ、クリスを挟んで川の字になる。


 カチヤの顔が、真正面にある。

・・・・・・まつ毛長いなぁ~、いや、そうじゃなくて、いい匂いするし、いやいや、やばいって!


 起きようとするが、肩をガッチリと抑えられて起き上がれない。

・・・・・・起き・・・・・・上がれない? ・・・・・・うん、無理だな。

努力を早々に投げ出し、元の位置へ体を戻す。


 たまに表情が読めないこともあるが、カチヤは可愛い。日に当たって輝いて見える金髪もきれいだ。

なのに俺の婚約者だ。

何が気に入って、俺の許にいてくれているんだろう?


 クリスも両親も、カチヤを気に入っている。

俺だって好意がないと言えば、嘘になるだろう。

だからこそ、不安になる。

カチヤから見ている俺が、等身大の俺になってしまう日を。


 ・・・・・・シリアスに考え事してるのに、3歳児体温たけぇぇ。

クリスが、生まれてくれたことで、いよいよ新興貴族の可能性が濃厚になってきたが、この家を存続させる目途も立ったと言ったところだろう。


 何時か一緒に冒険に行ったりするんだろうか・・・・・。

兄弟が・・・・・・肩を並べて・・・・・・。

・・・zzzzzzz。

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