117話
夜に自室に籠って、新たな発見に関して記録を始める。
いや~、昨日は面白い発見が出来た。
他者との魔法の合成。これなら時間はかかるけど、一人ひとりの負担は少なくできる。
3属性なら最低二人でできて、負担も少なくて済む。
俺がやって来たことに比べれば、安全かつ確実性の高い使用方法と言えるだろう。
ふと、ある言葉を思い出す。
『別のやり方を見つけなくては、命が危ない』
神様、いや魔神が齎した情報。
なるほど。複数人の魔法合成なら、この言葉の示す別の方法に該当するだろう。
俺のやり方は、結局の所力押しに他ならないのだから。
もしこれが、魔神の指し示した意図だとするならどんな意味があるのだろう?
自分に向けられる刃の数を増やしたいのか? だとすると何故?
確実性を高めたい? なんの確実性? 自分の死? それとも別の何か?
分からない。奴の意図が読めない。
奴の意図が読めないくらいの重大な問題もある。
それはこっちの情報が奴に常時知られている可能性。
3属性で初めて大きな副作用に直面した時に、別の相手ではあるが神託をと言う形で情報を持ってきた。
あの時俺は、神様と魔神が同一だと言う事には気が付いてはいない。
それでも俺と直接話すことを避けてきた。
実際に合うと何かに気が付かれる可能性があるのか?
しかし、エルと初めてあったときは普通に出てきたし・・・・・・。
相手の意図することが分からない状況が、ここまで不安を掻き立てるなんて思いもしなかったな。
「アディ、大丈夫?」
「ああ、カチヤか。なにが?」
「難しい顔してる」
「ん? そうか?」
「うん。辛そう」
背中にカチヤの温もりを感じながら、もう一つの疑問に想いを馳せる。
何故あの神様は、原初の残した神殺しを早々に潰したのか?
仕掛けが動いたことは分かると言っていた。
あれは、最後の神殿だけだろうか?
きっと、別のところでも仕掛けが動いたことを知っているはず。
いや、俺の情報が常に奴の知るところなら、最初から知っていたはず。
何故あのタイミングで、現れたんだろう?
最初から使わせる気が無いなら、もっと早くに現れてもいいはず。
なんで最後だけ? それとも俺達が使わなかったから? いや俺が使わなかったからか?
だとすると、奴は俺に何を期待している?
いや、そもそも使わせるつもりがあったのか?
原初の世界での魔法の最高峰。
神殺しの魔法。それは魔法の力で神の力を奪い自分が神になる魔法。
・・・・・・俺に、神になってほしくない?
奪われたくない力があるのか? それならあそこで神殿内で戦闘を仕掛ける理由にもなる。
あの戦闘の後日に確認した所、神殿の地下の仕掛けが完全に破壊されていた。
爆発では通常、爆心地から上の被害の方が大きいはず。
なら、俺の魔法で壊れたとは考えずらい。
恐らく、神様自身が壊したのだろう。
そうまでして使わせたくない魔法を、俺自身に開発させる必要がどこにあるのだろう?
本当に戦争を起こすことだけが、奴の望みなのか?
それなら10年の猶予は説明できない。
神様の行動に、一貫性が感じられない。
言ってることと、やってることに整合性が感じられない。
考えれば考えるほど、なにを望んでいるのか気になってしょうがない。
「アディ、何考えてるの?」
「ん? ああ、魔神のこれまで言っていた言葉と行動がかみ合ってない気がしてね。そのことをちょっとね」
「アディは優しいね。倒す相手のことを考えるなんて」
「そうか? ・・・・・・いや、そうじゃないよ。多分逆さ」
「逆?」
「ああ」
これから戦う相手の意図をくみ取ろうなんて、俺はおかしいのだろうか?
カチヤの言う通り優しいのか? ・・・・・・多分そうじゃない。
相手の意図に反したやり方で、勝ちたいんだ。
だから、相手の思考を読みたくなる。
だから、相手の掌から抜け出したいと感じてしまう。
まぁ、小心者と言うか、わがままなんだろうな。
そのせいで、こうして神様の心理的風下に立っているんだけどね。
「今日も面白かったね」
「どうした? いきなり?」
「アディは楽しくなかった?」
「いや、楽しかったけどさ」
今日やったことは、魔法を魔法以外で防げるのかと言うこと。
まぁ、結果として普通の盾や剣では防げないことが分かったけど。
最終的には4人で水かけ遊びになってしまった。
いや~、闘気法を使っても防げないとは思っていなかったな。
意外と万能だと思っていた闘気法も、魔法を防ぎきることは出来なかった。
威力を減少する程度は出来たと思うけど、それよりも遊びの面が強くなってかなりずぶ濡れになったな。
・・・・・・俺としてはそのあとのことの方が、有意義だと思ったけど。
「二人で入るお風呂も楽しかったね」
あんまりにも濡れてしまったため、遊んでいた王都近くの草原で建築魔法を使い風呂を2つ造り、それぞれ夫婦同士で入浴して帰ってきた。
まぁ、色々あるよね。
夫婦同士だし。
まぁ、あっちもあっちで楽しんだみたいだし、お互い深くは追及しなかったけど。
それに伴いある事実に行きついた。
建築魔法も2人で行うと細部まで調節できると言うこと。
俺一人で作った風呂よりも、ラインハルト夫妻の共同作業の方が精密に作ってあったな。
外壁やタイルも一回しか使わない風呂にしては、やけに意匠のこった感じでできてたし。
わざわざ風呂を猫足の風呂にする必要性が、俺には分からなかったけど。
「顔が嫌らしくなってるよ?」
「いや?」
「ううん」
「カチヤ」
「アディ」
「ふぇっ、うぁーん」
・・・・・・。
子供の泣き声が家の中に響き渡る。
「ヘルムート泣いてるね」
「そうだね」
息子よ、もう少し我慢は出来なかったのか?
・・・・・・まぁ、仕方がない。
子供と言うか、赤ちゃんだしな。
きっと、俺が説教されていた時に笑っていのも今回も偶然さ。
そう、話しかけてもうんともすんとも言ってくれないのは、長い間留守にしていたからさ。
実の子供に嫌われるなんてこと・・・・・・ナイナイ!
大丈夫。きっと大丈夫。多分、大丈夫・・・・・・だよね?
あと数日たったら、また旅に出なくてはならない。
今回は女性陣もついてくるらしい。
子供は実家に預けて同行すると聞かなかった。
帰ってきたらまた、ヘルムートに忘れられてるのかなぁ~。
子連れで魔神と戦う訳にもいかないからしょうがないけど。
よし! 今回で絶対に終わらせるぞ!
息子との良好な関係を築くためにも!!




