114話
魔法による神殺し? を手に入れた俺達は、魔族の集落に別れを告げた。
目指すは、我が故郷。王都フェニルニン。
出立してから、実に3か月。あまりにも早い帰郷となった。
「そんなに思いつめても仕方がないって」
「お前はそう言うけどな、クラウディア何と言えばいいのか・・・・・・」
「まぁね、クラウディアは意外と怖いよね。うちのカチヤは暖かく迎えてくれると思うけど」
「そうかな?」
「そうだよ! ・・・・・・多分」
「ほら見ろ! やっぱりそのまま竜の聖地に行こう! な? な?」
「ダメダメ、陛下に伝えないといけないこともあるでしょ」
「あ、ああ。そうだったな・・・・・・」
色々と考えた結果、俺達は一度王都に帰り、フランツ様のことを説明する必要があると言う結論に落ち着いた。
本来、失われなくていい人の命が失われた。
明るく振る舞っているラインハルトも、身内の死には思うところもあるだろう。
俺も肝に銘じておかなければ、フランツ様は俺達が殺したんだと。
俺達の甘さが、人一人の命を奪ったんだと。
そして、俺は忘れない。友を失わずに済んだと仄暗い喜びを感じてしまったことを。
この時代、人が空を飛んでいると言う事実を誰がどれくらい認識できているのだろう?
人の認識は、意外と上には向いて居ないようだ。
道中は、誰に気が付かれる様子も無く、俺達は王都に帰還した。
現在、王都の上空でどこに降りるかを検討している。
それと言うのも、ラインハルトがあまりにカッコイイ演説をしてくれたことが原因だ。
多少は、次期国王としての自覚が出てきては居るのか、領民にあそこまでの啖呵を切った手前正面からは入りずらいと言いだした。
まぁ、それだけが大事だとは言わないが、面子を気にすることはセロフィー王家としては喜ばしいことではあるんだろう。
「で? どこに降りるの? ずっとこのままってわけにはいかないよ?」
「分かってる! しかしなぁ・・・・・・城に直接行ったらそれはそれで貴族に不信が出るだろうし」
「じゃぁ、俺の家は?」
「それしかないかなぁ? ああでも、国王が一貴族の家に来るのはおかしくないか?」
「それを言ったら、お前しか継承権が無いこの国の有り様がすでにおかしいよ? 一般的にはだけど」
「バカ! そんな国だからこそ国王が城の外に出てくるのが、目立つだろうが」
ああ、ラインハルトの中では国王って籠の鳥なんだな。
うん、ラインハルトに合わせていたら墜落してしまう。
引き留めるラインハルトをよそに、俺は自宅の庭に降り立った。
「私は帰ってきたぞー!」
「何小声で、叫んでるんだ?」
「いや、言っておかないといけない気がして」
「? そうか? まぁ、速く中に入ろう。誰かに見つかる」
久方ぶりの我が家、一年も生活していないが俺の城だ。
とは言っても、実家からさほどはなれていないし、カチヤの実家にも近い。
同じ王都にいるんだ、当たり前だな。
「誰?」
この家に使用人はまだいない。
声の主は、俺の嫁・・・・・・カチヤだ。
「あ、ただいま。カチヤどこ?」
声を掛けると同時に、俺の足元に短刀が刺さる。
「え? アディ?」
「あ、ああ、戻ったよ」
カチヤと暮らすんだ。短刀の一本や二本で驚いていてはカチヤの夫は務まらない。
まぁ、動揺はするんですがね。
「どうして? あ、倒せた?」
「いや、まだだ」
「そう。? なんで?」
倒せていないのに戻ってきたことが疑問なんだろう。
ラインハルトは、一連のやり取りに唖然となっている。
なんでだ?
とにかく、カチヤに事の経緯を説明していく。
原初の神殺しを手にしたこと、魔神に会い負けた上に神殺しの法を失ったこと。
フランツ様が亡くなったこと、魔族の集落で暮らしていたこと。
そして、新しい神殺しを手に入れ、効果を試すために竜の聖地に行こうとしていること。
話すことは、たくさんあった。
ラインハルトは、俺達の語らいに居場所がなさそうにしていた。
「ちょっとまってて」
何かを察したのか、カチヤが部屋を出て行く。
ああ、やっぱり我が家っていいな。
部屋にはやっと1歳になろうかと言う幼子もいる。
俺の可愛い息子、ヘルムートが眠っている。
俺が帰ってきても一切起きもしない。
・・・・・・それはそれで、悲しいな。
指をヘルムートの掌に近づけると、力一杯に俺の指を握りしめる。
ああ、俺はこの子を護るために戦っているんだな。
「アドルフ? 息子との語らいを邪魔して申し訳ないが」
「なに?」
「お前とカチヤは、いつもああしていたのか?」
「何言ってるの?」
「いや、さっきみたいにお前の膝に乗って話しているのか? と思って」
・・・・・・あ!
「い、いや、たまたまじゃないかな? 久しぶりでかな? そう言うことってあるじゃん」
「ああ、そう・・・・・・だよな」
しまった、こいつの存在を一瞬忘れていた。
は、恥ずかしい! 滅多に甘えてこないカチヤに寂しくなって、膝に乗せて話すことが癖になってた事を忘れるなんて!!
駄目だ、久しぶりに帰ってきたんで周囲への緊張が保てない。
いかんいかん。
まだ何も終わっていないんだ。
なんて言ったっけ? 常? 在? なんとかって言いうしね。
一部は、気を引き締めるように努力は必要だ。
「アドルフ、きりっとしている所悪いがな? 袖噛まれてるぞ?」
「ああ、ばっちいから駄目でしゅよぉ~」
「駄目だ、こいつ」
「何か言った?」
「いや、何も」
下の階で、けたたましく扉の開く音がする。
今度は、ラインハルトが気を抜く番かな?
大きな足音が近づいてくる。
まぁ、恐らくクラウディアなんだろうけど。
再び大きな音がして、扉が開かれる。
ヘルムートは一向になく気配が無い。我が子ながら図太いのか、鈍感なのか。
「ライニー! アドルフさん!! そこに直りなさい!!」
え? ・・・・・・なんで激昂してるの?
予想通り現れたクラウディアは、予想に反した感情をあらわにして登場した。




