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113話

 夕暮れも近くなったころ、拗ねていたラインハルトを何とかなだめて、5属性の魔法に取り掛かっていた。

「いよいよ神殺しの魔法になるんだな」

「そうだね、ラインハルトの見たものが間違いでないのなら」

ラインハルトの話では、5属性を使った時、魔神は致命傷は見当たらなかったが全身を満遍なく傷に覆われていたと言う。


 なら、5属性の魔法が神に弓引く魔法であることに間違いはないだろう。

まぁ、魔神が何かのたくらみで自分に傷をつけた可能性は否定しきれないが、そんな事をする意味がないと思う。

 5属性、前回使ったときはよく覚えていない所もあるけど、警告が今までの比では無かったように思う。

・・・・・・よく無事だったな俺。

今回は、警告、って言うか。副作用にも気を配らばいとな。


 開発するのに危険はつきものだとは思うけど、ここで無理をして俺達2人に何か有ったらそれこそ世界がヤバイ。なんてことになりかねない。

今まで以上に、警告には慎重にならないと。


 呼吸を整え、意を決すると俺は、5属性に変換した魔力を自分の前に浮かべる。

火を頂点に円を書くように、それぞれの属性を配置させる。

よし、行こうか。

火から風・水・木・土とそれぞれを順に合成していく。

今の処警告らしい感覚は無い。


 多少の魔力の反発は感じるが、合成で生じるごく当たり前の反発だ。

合成した魔力が、周囲の魔素を吸収し膨れ上がるイメージが生じる。

まだ、大丈夫。

闘気法を強め、魔力の膨張を抑え込む。

周囲の魔力と俺の魔力が、混じり合い一瞬の収縮を経て安定した魔力の塊に落ち着く。


 注意深く魔力に集中するが、警告はないようだ。

目まぐるしく色を変えながら光り輝く魔力が、俺の手の中に納まっている。

これが、神殺しの魔法・・・・・・なんだよな?

今までの魔法とは受ける印象が少し違っている。

予想される効果の割に、非常に穏やかな印象だ。


 よし! ここまで来たら魔法の使用方法だ。

通常、撃ちだして効果のある魔法は、自分の手を近づけると警告のような違和感が生じる。

その逆が、自分に掛けることのできる魔法になる。

だが、この魔法は近づけても離しても違和感が無い。


 どう言うことだろう?

俺以外にも効果を与えることが出来ると言うことでいいのだろうか?

だとしたら、ラインハルトがこれ以上拗ねなくて済むな。

取りあえず、俺自身に魔法を掛けてみよう。


 俺が手を魔力に近づけると、俺の体に浸透していくように魔力が侵入してくる。

魔力が全て体に入る。

「これが・・・・・・神殺し」

魔法による違和感は感じない。

だけど、確実に効果は発揮されているはず。


 手を振るってみる。

・・・・・・ん? 何も起きないな。

何度か手を握ってみるが、特別何も変化が見られない。

「ラインハルト、俺の体に何か変わった所ない?」

「特には・・・・・・あ!」

「どうした! なにかあった?」


 ラインハルトは無言で、俺を指さしてくる。

なんだ? ん? 何か有るか?

全身を良く観察しようと、後ろを向いたり、足を上げてみるが特別変わったことところが分からない。

「何? 何か有るの? ラインハルト!」

「手・・・・・・手だ」

手? 何も変わらないと思うんだけど?


 そう思い両手を見比べると、ああ、左手だけうっすらと光を帯びていたんだ。

日が落ち始めて、周囲の木々が影を伸ばしてきて初めて分かるぐらいの本当に淡い光が俺の左手にまとわりついていた。

よし! 効果範囲は分かった。

次は、肝心の効果そのものだな。


 左手を重点的に動かしていく。

振っても払っても、まったく何も起きる気配が無い。


「どうだ?」

「駄目だ。何が起きてるのかさえ分からない」

懸念していた通り、対象がいないと効果は目に見えて来ない。


「ラインハルトも確かめてみて」

そう伝えて、魔法を掛ける。

怪訝そうな表情だったが、実害がない事に安心したようだ。

「どう?」

「アドルフ、お前の言ったとおりだな。何も変化が無いように思える」


 やっぱりか、何か神位を有しているものがあれば良かったんだけど。

短剣はフランツ様の身体と共にどこかに消失している。

手加減できる相手ではなかったけど、場所を選択するべきだったな。

翌々考えれば、遺体も遺髪も手元にない。


 国王陛下にも、申し訳ない事をしたな。

自分の息子が死んでしまったこともそうだけど、その証拠となる物何もなくなく証言だけを聞かされるなんて。

報告者がラインハルトでなければ、疑われて何かあらぬ嫌疑をかけられるかもしれないな。

後で、そのことをよく話して置こう。


 何か、神様に近い物とか、人って居ないものかな?

「アドルフ。考えたんだが、木竜のところに行ってみないか?」

「木竜? なんで?」

「木竜自身はどうでも良いんだが、神木ってあったろ?」

「あったね」


 神木。木竜が護っている本当の最初の使徒。

「それが?」

「あれなら、神格とやらもあるかもしれない」

・・・・・・なるほど。

可能性としては、悪くないかも。


 確かに、あれだけは父神が直接手掛けた可能性もある。

なら、そこに神格があり、神威を有している可能性がある。

何せ、世界を見通すことを許されたなんて言われるくらいだし。


「じゃぁ、取りあえず伯爵に挨拶して帰らないとね」

「ああ、あ! この魔法のことは教えるのか?」

「ああ、どうしよう。一旦はぐらかしてみる?」

伝承を信じれば、魔族も俺達と同じ神を信じている。

その神が創りだしたものに、もしかしたら危害を加えることになるかもしれない。


 本当のことを話したら、もしかして止められるかもしれないし。

信仰の程度によっては、俺達と敵対することも考えられる。

そう考えると、出来れば上手く情報を隠しておきたい気がする。


「じゃぁ、上手く口裏を合わせて話そうか」

「そうだな」

現状、伯爵と俺たちとは関係は良好だと言える。

しかし、集落の多くの魔族には、未だに俺は勇者にぶら下がっているお荷物と言う認識だし。

下手なことを言ったら、俺に無用な火の粉が掛かる気がする。


 何とか穏便にこの集落から離れらるように、祈る必要があるかもしれない。

・・・・・・ん? 俺は、何に祈ろうって言うんだ? 神様? アイツか?

冗談じゃないな!

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